第二十話☆ 兆候
◇◇◇◇◇
「……あ、始まった? 始まってるわ。んじゃあいつも通り敵をことごとく殺していこう。はい手っ取り早く恒例、今日の助っ人を呼ぼうか。お呼びしてますアンドロイドの安藤ロイド! お前ら刮目しろよ。今日が伝説の始まりだぜ」
「お呼ばれされましたロイドです。FPS未経験ですが頑張ります」
〜コメント〜
頑張ります(死刑宣告)
どっちかっつーとバトルロワイヤル要素強めだが
正直素人プレイを期待している
プロとニュービー 人間とアンドロイド
果たして人間は勝てるのか
構図がまんまプロvsチーターなんだよなぁ
《小説になろう》これは軍事用AIの最終負荷試験
「やっぱしお前に対して期待値高めだぜ。俺もだけど。じゃあ早速行くか。本番」
「え、私なんにも、ボタンの配置も分からないんですけど」
「俺も最近はパソコンでやってたからこっちは久しぶりだよ。同じだ同じ」
「死んでも怒らないでくださいね」
「いけるいける」
「あ、なんかチュートリアルが始まりました」
「そっからか! あーそういえばそんなのあったな。5分くらいで終わるから気にすんな」
〜コメント〜
先行き不安
流石にランクマは無理だろ
あれってランク高い奴に引っ張られるんだろ?
ランク上げないとランクマ行けないぞっ
ニュービーロイドかわいい
明らかにゲーム慣れしてない手つき それがいい
初めて音を知った子供みたいな反応
この頃に戻りたい
数多のゲームを記憶消してやり直したいよ
「そうだった、まだランクマは無理か。それじゃあ適当にチャンピオン取ってランクあげよーぜ」
「どのキャラを選べばいいのかも分からない。不安しかないですよ……三人でやるんですね。この方はお知り合いですか?」
「あー、なんかいつの間にかフレンドになってた奴。ボイチャしないでチャットでしか話さないからチャップリンって呼んでる。お前の大ファンらしいから仲良くしてやってくれ」
「えー! 嬉しいですね。大ファンとは、照れますよ」
「俺よりファンってよ。ムカついたから1on1でボコボコにしてやった」
「私の大ファンが! ん? あれ、このジャンプマスターってもしかして私ですか? ……えいっ」
「秒で譲渡してんじゃねえよ! 飲み込み早いっつーか察しが良いつーか。まあ初めてだし今のタイミングなら全然大丈夫だけどよ。んじゃあここ行くか。こうやってピン挿せば意思表示出来るから」
「ほーほー」
〜コメント〜
激戦区降りる鬼畜
あーいるねー三部隊
お! 武器取れたじゃん
頑張ロイド
↑世界の破壊者みたいな語呂
その武器素手とどっこいどっこいのヤツゥー!!
ガンバー
あー!!
初デスですね←劇寒
冷静に死ぬな
流石にダメか
クロス組まれちゃったねぇ
「ハハッ、死んでる死んでる。いいねぇ楽しくなってきたねぇ!」
「うーん、チュートリアルで使った銃と動き方が違いました」
「そりゃあ一つ一つの銃の反動には決まったクセがあるぞ。まあ任せなって。このゲーム死んでもまだ救えるから」
「試し撃ちとか出来ないんですか?」
「あるある。まあ焦らなくても徐々に慣れていけば」
「試したいですね一通り」
「……んー、まあでも、こういった最初の経験も楽しいっていうか、オススメの武器は俺も道中教えていけるけど」
「……」
「あれ、もしかして少し落ち込んでる? 意外にも負けず嫌いだったり?」
「よく分からないですけど、負けた時ちょっとイラッとしたかもですね」
「お、おう……次訓練場行くか」
〜コメント〜
貴重な感情
人の心に近付いてるじゃん
なんか新しい一面
悔しがるお前を見ていたい
泣かないでロイドちゃん!
相手ランク深淵だったよ
ソロ最強ランクがランクマ以外でくる恐怖
逆にラッキー
↑つまりアンラッキー?
訓練場で鬱憤を晴らすアンドロイドが見れると聞いて
「銃もいっぱいあるんですね。なんか種類別に分けられてませんか?」
「ピストル、サブマシンガン、アサルトライフル、ショットガン、スナイパーだな。このゲーム初心者にはアサルトライフルAK-47が扱いやすいぞ」
「撃ってみてもいいですか?」
「いいぞ。リコイル制御は最初は下向きに、途中若干の左に寄って……」
「覚えました。次行きます」
「ん? あ、ああ、それはMP7。サブマシンガンだからレートは早いがリコイルは……」
「覚えました。次はこれで」
〜コメント〜
!?
覚えましたとは
嫌な予感しかしない
1マガジンで把握する化け物
《カロン》なろうだな……(白目)
覚えてどうにかなるもんじゃねーから!!
震えて待て
「……アタッチメントとスコープというのもあってだな」
「全部一度試しましょう」
「……ちょっと今持ってる銃で俺撃ってみ。ダメージは入らないが当たる感覚はあるから」
「はい? はい」
〜コメント〜
バリバリバリィィィンッッwww
全部ヘッショはえぐい
はぁ? 知ってた
サブマシンガンで二百メートル……
プロならまだしも今日始めた奴が
理解したわ。プロになれる奴と俺との違い
記憶力の問題じゃねーと思うんですが
指の動きに繋げられるって、慣れてようやく出来るもんじゃないのー??
もう俺より上手いじゃん
「すぅー……感度というのもあってだな。多分お前は、高感度向きだ。設定から変えてみろ。ちなみにどんな風にリコイル制御してる?」
「え、一発一発動きが微妙に違うので、その度にクイックイッと真ん中に合わせています」
「……何言ってるか俺の頭が理解するのを躊躇ったわ。あれか、俺達は普通流れるような手つきで反動を抑えているのに対して、お前は一発ごとの動きを覚えて一回一回微調整して確実に合わせてんのか。なるほどな。納得したわ。なわけねーだろ!」
〜コメント〜
そんな理論上の事を語られても
よう分からんかった
アンドロイドショック
正に機械的
イミフ
それって手の動きやばない??
エイムがチーターのそれにしか見えない
幾ら銃の反動を覚えても、毎回誤差無く正確に指を動かすのは人間じゃ無理
実際出来てるしな……
↑人間じゃない QED
「スナイパーはどれがオススメですか?」
「一番ダメージが大きいのはヘカートだな。その分重いが、ヘルメットがない頭に当てたら一発で倒せる」
「ふむふむ……おや、遠いところだと弾は落ちるんですね。当たり前と言えば当たり前ですが」
「そりゃあな。動いてる敵にも偏差撃ちだぞ。弾の着弾には若干のラグがあるから、動いてるやつの少し前に撃ったりとかだ」
「あー……そればっかりは経験積まないとダメそうですね。今はとりあえず落ちる弾の動きを覚えます」
「好きにしろ」
〜コメント〜
化け物みたいなスピードで銃が支配されていく
普通の人は全部経験積まないとダメなんだよ?
安藤ロイド 脳の思考速度も尋常じゃない事が発覚 尚その兆候は既にあった模様
弾が落ちないビーム系のライフルもあってですね
↑はい戦犯
「え、ビーム系のライフルって何ですか?」
「誰だこいつに害悪武器教えたの!!」
「悪なんです?」
「あー、スナイパーとしては破格の性能だな。馬鹿でも当たる。弱体化こそされたが、今でもうざったい時はある。全部頭に当たればそれこそキツい」
「とりあえず試しましょう」
「そうなるよなー!」
〜コメント〜
何らかのツールアシストを使ってるといっても過言
こんなのもうTASよ!
ロイドちゃんは金髪幼女だった……?
金髪幼女が成長したらこうなる
ロイドちゃんの幼女姿? TASかる
「キャラコンはまだ俺の方が確実に上手いが、単純なエイム精度なら既に負けてるぞ……」
「このサブマシンガン8倍スコープ付けられないんですか? 悲しいですね」
「いやそんな発想お前だけだから!!」
「Rスターっていうエネルギー銃面白いですね」
「いや微妙だろ。近距離はともかくとして中距離は弾のばらつきが激しくて使い物にならんネタ武器だ」
「でも四発目以降は8種の動きのパターンのどれかが確定されて出るか決まってるみたいなので、画面をあちゃこちゃ動かして遠距離の的に当てるの面白いですよ」
「……初耳だよ!! やべえお前マジなんなんだ。てかそろそろ行こうぜ。これ以上自由にお前に撃たせてたらどうにかなるぞ。チャップリンなんて隣でスクワットしかしてねえ。キャラはゴースト使っとけば? 一番ヒットボックスが小さい」
〜コメント〜
遂に解き放たれる
人間に機械をぶつけるのは卑怯
ピストル縛りでイーブン
さっきの試合ノーカンな
これからが本番
そしてまた激戦区w
草ァ!
そしてまたクロス組まれてるw
相手サブマシンガンじゃん。負けたわ(10秒前の俺)
しかし勝つ
そのピストル近距離に強いとはいえ
当たり前のように全てヘッショは笑
相手が棒立ちだったってのもあるな。エイム合わせるだけで勝てる
観戦ついてるの笑う そりゃあ疑うわ
まず常に冷静なの凄い
メンタルが既にプロ級 お化け屋敷強そう
そのシールド拾って!
「いいねぇ燃えてきたねぇ! 敵! 発見! 殺されたくない? 知らねーなー靴下裏返しにはいてろ! 時間稼ぎくらいにはなるぜ」
《oh cool》
「え、チャップリンさんって外国の方なんです?」
「バリバリの関西人だ騙されるな」
「あ、2キルしたみたいです。やりました。さっきよりは戦えそうです」
「桁違いにな。そうだ、キル数で勝負するか。何か賭けようぜ、負けた方が焼きそばパン買いに行くとか……プロ失格? うるせー! こいつを初心者だとはもう思えねえよ! どうだ?」
「いいですけど、何を賭けます? 例えば私が勝ったら何をしてくれるんですか?」
「ああ、何でもするよ」
『ああ、何でもするよ』
「……なんでいま俺の声を録音したんだ?」
「よし! 頑張りましょう!」
〜コメント〜
チャップリン【悲報】関西人
今何でもするって??
今日いちセンシティブ
キル数ならワンチャン
ワンチャンあるだけでおかしい
これでも元有名なプロゲーマーなんだぞ……
スナイパーライフルを持たせてはいけない
↑既に持ってるんですがそれは
エイムだけ良いってそれもうチーター
何が起こるんです?
大惨事だ
「前方に二名、やるぞ。動きが素人くさいな。完膚なきまでに容赦してやる」
「一人やりました! 相手逃げてます! 頭当てました! あと一発くらい?」
「はい終わり。あーいいねぇ負け犬の遠吠えはいつだって常人には真似できない。俺に特別なインスピレーションを働かせてくれる。ありがとうお前ら。俺の為に死ね。おっ、ここ見てみろ、ここ。いいポジだろ? バレないんだよ中々」
「ここですか? 本当にバレないんです?」
「大丈夫だって。ここはプレイヤーが最も気付かなかった場所で有名だからな」
「……それってすでに多くの人に周知されているってことでは?」
「でも気付かなかったランキング二回連続で1位に選ばれたんだぞ?」
「何ですかその矛盾を内包した世界は。あ、敵遠いですけどいました。偏差撃ちの練習します」
「…………おー、三発目で当てたか? って、四発目で倒すか普通。相手も驚いてるぞ。俺のリスナーもな。……常識外れだってよ。常識? 当たり前だ常識はてめーの味方じゃねぇよ! ほらいくぞロイド最難関バッジ取るぜ!」
「はい!」
〜コメント〜
うめーw
敵弱くね
お前の前世はシモヘイヘ
テンションおかしくない?
閣下が興奮しておられる
キャラコンはやっぱカイザー様うめぇな。余裕の動きだ。場数が違いますよ
ロイドちゃんは一発撃つごとに成長する。すごい早さで。戦いの中で!!
目指すはバーチャル大会優勝か
がんばれロイドちゃん!
大会出禁にされそう
◇◇◇◇◇
五条さんは72時間を超える配信を目指していたらしいが、途中でダウンして結局18時間という私の中でも二番目に長い配信を終えて幕を閉じた。
キル数では同率だったし、1on1では勝ち越せなかった事が悔しい。こちらが先に五条さんを見つけたら大抵やれるんですが、変則的な動きにエイムは追いついてもグレネードとのコンビで負ける事が多かった。それにショットガン、あれは中々厄介です。今度は当てる事ではなく避ける練習もしないと。
頭の中でシミュレーションしながらリベンジを思い浮かべる。リビングに着くと、みかん大福ちゃんことメイドの香澄ちゃんが夕食を作ってくれていた。
私が配信を終わるのと同時にご飯を作っておく高等技術。流石私専属のレディースメイド。感謝しかない。
「今日も美味しそうなハンバーグ定食ありがとうね。これは本当の話、外食のハンバーグより香澄ちゃんの方が美味しいもん」
「えへへ、母直伝ですから! お母さんの作るデミグラスソースが無いとハンバーグ食べたくないって子供の頃の私ワガママで、自然と作り方も教わったんです」
「そのお陰でこれがあるんだね。もう最高だよ」
香澄ちゃんの玉ねぎたっぷり柔らかハンバーグを食べると、他所の牛100%ハンバーグを食べてても、これなら香澄ちゃんの方がいいなって思えるんだよね。香澄ちゃんママにも感謝感謝。
「明日は朝の9時からショコラさんと配信ですよね? 朝ごはんはどうしますか?」
「あー軽く頂こうかな。そっか、明日もうエガヲさんと配信か。今週忙しい! エガヲさんとの配信楽しみではあるけど」
「……最近、コラボ多いですね」
「まったくだよ。むしろソロ配信の方が少ないくらいだし。私時間にルーズだから、あんましコラボコラボってなると気を張るんだけどねー」
「でも楽しそうですよ……ずるい」
「え?」
「あ、凄いって言ったんです! 色んな人と配信をするのは良い事ですよね! 私も楽しみです!」
「そう? ……頑張るよ」
最後にボソッと香澄ちゃんが言った言葉、小さ過ぎて聞き取れなかったけれど、口の動きを記憶に照らし合わせて強引に読唇術を行うと、すぐに三文字の言葉が浮かび上がる。
その言葉の意味は香澄ちゃんにしか分からないが、あんまり良い兆候ではないはずだ。今の香澄ちゃんの笑顔は、少しぎこちない。
今度気分転換に、二人だけでどこか出掛けようかなと思った。それに、今までなあなあにしてきた事を、二人っきりで話す機会も必要だしね。
とりあえずこのハンバーグは超美味しい。こんなに美味しいんだから、きっと全部上手くいく。そう思えた。
何のゲームやってるか想像はつくと思いますが、敢えて所々変えています。全く同じわけではありませんのでご了承ください。
そしてご愛読ありがとうございました。第二章「至高の四人」完結です。あたたかい声援もあり、第三章もなるべく早く投稿出来たら良いなと思っています。
ところで気付いてる人はいると思うんですが、一部の感想を作中のコメント欄に使わせてもらっている事があります。やめた方がいいですかね? web小説ならではで個人的に気に入っていたのですが、否定的な意見が多ければやめたいと思います。すみません!m(_ _)m




