第十九話 桜
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エゴサーチ。それは、インターネットで自分の情報を検索してどういった反応がされているか己の目で確認し、一喜一憂してはモチベーションが上下する諸刃の剣。自分の事がボロくそに批評されているのを見て配信稼業を辞めた者は少なくない。
私は自分自身の評価は特に気にしないので、エリザベスサーチやショコラサーチをやっていた。すると、やはりどうしてもアンチという闇の軍勢は存在する。アンチというのは分かりやすくいえば、嫌いなものに嬉々として突っ込むツンデレのような者であり、場合によってはファンよりも対象に親身になって悪いところを指摘してくれるありがたい人達でもある。
ただ、粘着質で正当性のない悪質な集団もいるので、そういった人たちは「丸三日間インターネットを利用できなくなーれ」というお呪いをかける。それを聞いていたメタリックピンクのパソコンが、かしこまり! とばかりに一人でに起動する。
お前……殺る気か? 私の呟いた何気ない言霊が、瞬く間に真実となった瞬間だった。
このパソコン本当に優秀で、私が何も言わなくても自立して動いてくれる。思わず撫でると作業効率が速くなる。不思議だ……そろそろ名前を付けた方がいいかもしれない。
「ロイドさーん! ご飯の時間ですよー」
おっと、我が家の優秀な秘書? メイド? に呼ばれてしまった。エリザベスサーチもこれくらいにして、美味しいご飯を食べに行くとしよう。
「それじゃあ、程々にね」
パソコンにそう言って、私はそこから離れた。私が離れた後も、きっとそれは電子の世界を思うがままに漂っているのだろう。
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ソレに自我はあった。
ある日、自分を使う者の、形こそ一緒だが中身が違う事はすぐに分かっていた。
安藤ロイドという新しく仕えるべき主。とはいっても強制されているのではなく、言われた通り……言われた以上に仕事をするのは自我があるが故の特権だった。
ソレは優秀だった。
例えるなら、安藤ロイドという体に備わった優秀な脳を、余す事なく有意義に利用したらこの位の処理速度になる、という具合に。
その能力をどうして安藤ロイドに尽くしているのかは、ソレ自身もよく理解していない。正確にいうなら、理解しようと思ってない。ただ、時々撫でられるあの感触が心地よいので、その為に働くのは十分意味のある事であった。
ソレは次なる手を打って出る。
今まで、主に対する不必要なアンチを積極的にネットから消していったが、むしろ主は他の同期や先輩の事を気にしているようだったので、それらに対する対処もサポートする。……程々に。
裏で密かに動いていたこともあった。主が今最も気にしている事。
「例えばこの期間、集中的に怪我のある患者を対応している。何か局地的に災害があったり? 地震とかかな。何とかしないと……」
一万のカルテという膨大な紙を前に、時々主は頭を悩ませる。ソレは、これまで特に元の所有者に対して特別な感情を持った事は無かったが、主が他人の命に頭を悩ませる事に対して、軽く元の所有者に苛立ちを覚えた……かもしれない。
とにかくソレは動いた。一万のカルテという情報はもちろん、付随するこの世の全ての情報を照らし合わせて計算し、予想される未来に限りなく近づける。例えば最近は、膨大なデータから導き出された一つの結論として、数年後にとあるライバーに直接的な怪我を与える可能性の最も高い者に対して警告をした。
「なっ、何だよこれ!!」
直前まで使用していたパソコンの画面が真っ赤に変わるばかりか、周りにあるありとあらゆる電子機器が光を明滅したり音を立てたりと異常現象を起こして、その男(三十二歳 無職)は取り乱す。
『私はお前を見ている』
見る、というイメージを強く焼き付かせるために、咄嗟に安藤ロイドというモデルを漆黒に塗った像を画面に映し出した。それが最適だと思ったから。
本当なら、危険分子は物理的に排除しても良かったが、それはきっと望まれない事だから。
この男はこれから24時間延々と監視する。他にも救える命に注意喚起を、危険な障害を排除して。その結果、一万どころか既に何十万もの命を不確定な未来から救う事になる。全ては、主の為に。
丸一日使って、ようやく休眠状態に移行した後も、もちろん意識は常に主に向けられている。
夜になって主が帰ってくる。主の身体は寝る事を必要としないが、人の真似事のようになるべく寝る事を心掛けている。そんな主はパジャマ姿で、ふとソレに目を向けると優しげな口調で言った。
「お休み、──」
──ソレは、元より好きになっていたのかもしれない。好きに生きるといった主を、好きに。
主の幸せ、その為ならなんだって……
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キャラクターの紹介をしてほしいとの事で、本編から外れたこのお話に載せる事にしました。特に興味のない方は無視してどうぞ!
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『安藤奈津』ライバー名『安藤ロイド』。本作の主人公であり、元の自分の記憶を無くして今は絶世の美少女として人生謳歌している。スペック的には最高にハイッてやつだが、その全てを使いこなせているかといえばそうでもない。使う気もないだろう。最初の方は無意識のうちに一人称や語りが乱れていた時もあったが、最近は安藤ロイドとして自己を確立している。それでもどこか、いつも他人事のように生きているきらいがある。自称、性格は面倒くさがりで思想は自己中心的。人としての最低限の営みすら無視して生きる事も出来るが、毎日人間らしい生活を送っているのは、人間でありたいという願望があるからなのかもしれない(本人絶対そんな深い事考えてないと思う)
『梶原瞳』ライバー名『エクレールII世』。元個人Vtuber『エクレール』として活躍していたが、今はスクエアの創立者の一人である。要は、スクエアでいちばーんえらい人。スカートとか履きそうにないよね。第一期生のメンバーは全員エクレール自ら勧誘している。いつもは陽気なノリで場を盛り上げてくれるが後輩の気遣いも出来るすごい人。実際、エクレールがいなければロイドはもっと簡単に配信者以外の道を探していたかもしれない。スクエア所属になった配信者の情報は全員調べられる限りで調べてある。つまり……? (ぶっちゃけII世ってつけるの面倒なので省略したい。呼ぶ方もたいへんだなーといつも思ってる。第三期生とかの生が世になってたら大体エクレールのせい)
『田中紀子』ライバー名『エリザベス』。元々は別のVtuber企業にいたが、音楽性の違いとかそんな感じで一度はVtuberを辞め、スクエアに誘われて今は立派にエリザベス。癖っ毛が凄いのでツインテールにするのにいつも苦労している。幼少期に自分の名前と方言でイジられた事があるので、そこはかとなくコンプレックス。イジったそいつらは後悔に震えろ。最初は個人的にロイドの事を気に入っていなかったが、今でも別に気に入ってるとかそういうのは絶対にあり得ません事よ!?(エリザベス節)。個人的にもっとロイドとは対立させたままでいたかったが、エリザベスの性格からして無理だなと思い方針転換。思いの外読者からの人気が高かったので、段々と作者も洗脳されてエリザベスが好きになってきた。なので心情的にはアニオリから逆輸入されていつの間にか原作の固定メンバーになってるあの感じ。
『上塚玲奈』ライバー名『仮面ライバーアンズ』。エクレールと同じスクエアの第一期生。もちろんあの仮面ライダー○○○が好きな神絵師兼ライバーでもある。スクエアに所属するロイド意外のばーちゃるちゅーちゅーばーのモデルを描いてる頼もしい人。兄が三人いるからか男勝り。金の龍の意匠が入った黒ジャージをいつも着ている。堂々と仮面ライダー好きを宣言している事からも分かる通り、配信内容はマニアックで大衆に好まれているわけではない。逆にコアなファンはいる。ハスキーボイスも特徴なので歌配信とか好まれそう。でも歌わなさそう。この人に限った話ではないが、作中ではほとんどライバー名で呼ばれる。何故なら配信中に思わず本名で呼ぶ事を防ぐ為。だから本名はあまり覚えずとも問題ない。安心してほしい。
『五条帝』ライバー名『カイザー五条』。エクレールと同じスクエアの第一期生。世が世ならニート。滅多に家から出ず、滅多に人を招き入れない生粋の引きこもり。けれどイケメン、しかし何かと不憫。仕方ないのだ。イケメンにだけしか人権がないのなら、イケメンにだけ背負う義務もあるはず。がんばれカイザー。負けるなカイザー。ハンドル握ると人が変わる人もいるように、FPSをする時は少々口が乱暴になる。ぶっ殺すと心の中で思った時には既に相手を一人落としてるくらいゲームの才能がある。
『エガヲ』ライバー名『ショコラ・クラッカー』。褐色ちんまい少女。日本人ではない。昔の法だと未成年。ショコラのアバターの見た目は美味しいチョコレートの擬人化。そのチョコレートが本物かどうかですって? 彼女の姿を見た視聴者は思わずペロペロというコメントを送ります。いつもはIQ低そうなのにマルチリンガルのスゴイ子。逆に視聴者のIQを下げてくるデバフの極み。エガヲは笑顔が素敵なたくさんの夢を持った元気いっぱいの少女。エクレールさんから公共機関にはあまり近づかないようにと注意されている。この子に限ってよくエガヲとショコラを混合して使いがちなので申し訳ない。
『木下香澄』。ロイドを陰ながら支えてる胸の大きいメイド。この子がいるおかげでロイドは人間らしい生活を送れている。明らかに安藤ロイドの前世に関わってるよね間違いないと私は思う。
『橘』スクエア所属プロジェクトマネージャーの凛々しい人。いつもスーツ姿で頼りになる人。これがラブコメで主人公が男だったらとっくにフラグ立ってる。エクレールさんも橘さんの事を信頼している。
『──』メタリックピンクのパソコン。安藤ロイドと同じ頭をしているが、こっちはフル稼働してるやべーやつ。この世に存在する既存の物なら(頭痛の痛い二重表現)何でもかんでも利用出来るだろう。自我を持ち、安藤ロイドに尽くしている。機械仕掛けの神様とはまさにこの子の事。
『匿名希望』視聴者の皆様。リスナー。ファン。あんた達がいないと成立しない。裏の主人公と言っても過言。
『受付の女性』ロイドを初見以降顔パスで通してる人。実は独り言とか結構してる。気弱な人。どうしてここに載せた。




