第十話☆ 好きな事して生きていく
◇◇◇◇◇
「ひれ伏せぃ! という訳でロイドちゃんとの初コラボ始めるよー」
「ここに来るまでに色々な人から応援の言葉を頂きました。人の優しさが伝わりました。ロイドです。今日の配信の流れは全部先輩に考えてもらっています。ロイドです」
〜コメント〜
キターw
何気初第一期生第三期世共演
伝説と伝説のぶつかり合い
七十二時間越えられるか?
やめたれ片方人間なんだから
焼肉行ったのー?
〈モノクロエッグ〉名前を見て、ドラマ『安堂ロイド』を思い出したの私だけだろうか?
俺たちのエクレール税増やされるってマ?
「へいへい、聞きたい事いっぱいありそうだから、まずは安定と安心のマカロンからしていくねー」
「んー、食べるやつ、ではないですよね?」
「あ、マカロンっていうのは、匿名質問アプリだよ。そういえばロイドちゃんがマカロンしてるの見た事なかったよ。知らなかったのか。私と初マカロンだぜやったね」
「あー……そういえばコメントでもアジの開きさんやシマチョウさんが言ってましたね」
「コメント全部覚えてるって本当だったのか……それじゃあ記念すべき初マカロン、わっチョンさんから。『Towitterを見ましたが、焼肉屋潰しに行ったって本当ですか?』。さっきもコメントであったけど、焼肉には行ったようちらのマネージャーさんと一緒に三人でね」
「いや、待ってください。質問がおかしかったですよ。潰しにって何ですか。食べに行ったんですよ。物騒な事言わないでください」
「だって食べ放題だもんね。分かるよみんなの気持ち。実際、店員さんに止められたもん。食べ放題って本当に元取れるんだね。都市伝説かと思ったよ」
〜コメント〜
恐れていた事が起きた
やはりな
想像がた易い
デブw
↑ライン超えたなぁ!?
仲良いなスクエア
お、てぇてぇか?
食べ放題で元取るってすげー事なんだぜと、元飲食業経営者の俺より
「最初にお肉が届いた時にロイドちゃんがね、赤字になりそうだったら教えて下さいって言ったの。まあその時は店員さんも怪訝な顔して何言ってんだって思ってただろうけど、最後くらいに店長さんが来てすっごい低姿勢でお願いされたもんね。なんか強制的に止めたりとかは出来ないらしくて、本当にただのお願いだったんだけど」
「もちろん私は止めましたよ。常識あるので」
「ロイドちゃんが『やっぱりお腹いっぱいにはなれないんですね』って小さく呟いたのを、店長さん真っ青な顔して聞いてたけどね」
「うっ」
「でも楽しかったねー。頼み過ぎた分はロイドちゃんが吸い込んでくれるし。私と橘さんは、あマネージャーさんの事ね。橘さんと一緒に色んな種類を食べたよ」
「人をそんなダイソンみたいに」
「他にもねー、なんか家族で来てる1組のお客さんがね、お通夜みたいに暗いテンションで焼肉食べててね、どうしたんだろーって私と橘さんが心配してたら、サラダバーから帰ってきたロイドちゃんがその席に混じって『野菜も食べないと』とか言ってサラダ分けてるの! あーもう過去一笑ったね。そこのお客さんキョトンとしてるし、ロイドちゃんしれっとしてるし」
「あ、あれは本当に無意識というか、気付いたら体が動いてて……ついやっちやいました」
「笑い死ぬかと思った」
〜コメント〜
どういう事だってばよ
常識あるので(十秒前のセリフ)
やっちやいましたか
謎すぎてサラダ生える
ベジタリアンドロイド
ママ味感じるな
ロイドちゃんに野菜手渡しされるとかどんなご褒美
徳兄貴積んでるかー?
「焼肉での話はもっとあるんだけどね、それはまた今度で次のマカロンいくよー。田中二郎さんから。『お互いの第一印象を教えてください』。これはね……可愛いに尽きるね。冗談抜きでこれまであったどんな人間よりも美しかった」
「そんな事言ったら、先輩もすっごく綺麗でしたよ。理想の女性って感じでした」
「でもロイドちゃんの方が可愛いでしょ?」
「それはそうですけど。その言い方はズルイです」
〜コメント〜
!?
清楚らしからぬセリフが
聞き間違いか俺疲れてんだ
自己評価出来て偉い
なんか当然のようなニュアンスだったな
「ま、まるで私がナルシストみたいに」
「うーん……確かにナルシストとはまた違うかもね? 客観視の極み的な」
「やめましょうこの話。次です次! これ、ですよね? はい、スタンドアップフラワーさんからです。『お二人の次のコラボはいつですか?』ですね。えーっと」
「いつにしようか?」
「そうですね……私の場合橘さんとよく話し合って決めなくてはならないので」
「橘さんからは許可もらってるよ。じゃんじゃん誘って欲しいって」
「えーっと、来月とか」
「うーん」
「‥…再来週とか」
「再来週ね。いや、いいんだけどね。いいんだよ。ロイドちゃんがそれでいいなら」
「……来週?」
「同じ事思ってたよー! 気が合うな私達!」
「ですね」
〜コメント〜
ひどい茶番を見た
仲良しだなー←
先輩からのお誘い(強制)
誘導尋問
顔が笑ってなさそう
いつもの王権発動ですねこりは
「嫌なら嫌って言わないとだよ?」
「言わせないでくださいよ。私、もう決めたんですから。好きな事しかしないって」
「……そっか」
〜コメント〜
??
なんかDTっぽい発言だった
あっ、おーい! 誰かのせいでそっちの意味にしか聞こえなくなったぞ責任取れ
ばーちゃるファンの私によると、これはてぇてぇですね
よく分からんけど半分告白みたいなもん
「もう次。次行きますね。稲妻さんから。『ロイドちゃんへ、エクレールII世の事どう思ってますか? 好きですか? 大好きですか?』。え、私単体への質問ですか。どう思ってるかだなんて、そりゃあ尊敬していますし、頼れる先輩ですし、綺麗な方ですし褒めるべき点はいっぱいありますけど……って、待ってください。さっきからなに変に笑ってるんですか先輩! ん? あ、あ! これってもしかして、自演ですか!? 名前! やりましたね先輩!」
「気付くの早すぎてお腹よじれる。テヘッ」
「テヘッじゃないですよ! 匿名で特定されてどうするんです!」
◇◇◇◇◇
ばーちゃるちゅーちゅーばーには、ファンがいれば、その反対もいる。楽しい時はいっぱいあるけれど、時々悲しくなる。それでも笑わなければいけない。笑顔の裏には、幾つもの悩みを隠している。そんな時、あなたの一声で救われる事もある。あなたがいつもよりもう少し優しくなれば、私たちの笑顔は本物になる。ちゅーちゅーぶと違って、ばーちゃるちゅーちゅーばーは、一人で動画は作れない。貴方のコメントがあって初めて完成する。素晴らしい動画には、最高のばーちゃるちゅーちゅーばーと、素敵なコメントがあるものだから……
──ばーちゃるちゅーちゅーばーには、優しい先輩もいれば、厳しい先輩もいる。
「なんて羨ま……度し難いですわ。安藤ロイドさん。私は貴女を、認めませんわ」
癖っ毛を器用にツインテールへ収めたその女性は、画面に映るロイドを見て不機嫌な顔を隠せなかった。握った拳に思わず力が入る。
スクエア所属 第二期生 公爵令嬢のエリザベス。
通称──ツンデレディー
とっても良い子である。
◇◇◇◇◇
応援ありがとうございました。これにて一章『美少女に生まれ変わったらやりたい事』完結です。第二章の次話は来週の土曜日10/3の12時から再び投稿します。果たして安藤ロイドのプレイするFPSは常識の範疇で収まるのか……?
それじゃあ人間の皆さん、その時までさようなら。




