5、旦那様の買い物について
リリアは、翌日から街のあらゆる商店に行き、テオの買い物のリストを見せて貰う事にしました。
テオが何を幾らで買ったのか、全て調べあげる覚悟でした。
そんな中、リリアがとある商店に寄ってみたところ、店長がリリアに揉み手をしながら満面の笑顔で近寄り話しかけてきました。
「‥公爵夫人ですよね。いつもご贔屓にありがとうございます。‥先日公爵様が奥様にプレゼントするために購入された装飾品は、いかがでしたか?お気に召しましたか?」
「‥‥私、何も貰ってないわ。」
「‥えっ、‥えーっと‥では、まだ奥様にお渡しせずに隠しているのかもしれませんね。」
店長は顔を引きつらせながら、リリアにそう言いました。
「‥店長、旦那様が購入した商品のリストはあるかしら?見せて頂ける?」
リリアがそう言った途端、店長の顔が青ざめました。‥何か後ろめたい事があるのでしょう。リリアは店員に命じて、顧客帳や買い物の金額の分かる物や商品のカタログを持って来させました。
そして、店の奥の一角を陣取り、メモを取ったり、店員を質問責めにしました。
「‥ちょっと公爵夫人、やめてください!営業妨害です。」
店長の言う事も無視して、作業に集中する事二時間、リリアは店長に不審な点があるから説明をするように詰め寄りました。
「‥この店が、旦那様に対して、明らかに商品を不当に高額な値段で売りつけている事が分かりました。‥何か申し開きがあればどうぞ!」
店長は、しらばっくれようと思いましたが‥相手は公爵夫人です。しかも、公爵家は王室にも繋がりがあるので、それは無理な事だと諦めました。
そしてとうとう‥‥
「‥奥様、参りました。‥どうか寛大な御心遣いを‥。」
店長はリリアに、商品を不正に高額で売っていた事を認めて謝罪しました。
リリアは、店長を責めたり告訴する事はない事を告げました。すると、店長はほっとした様子でリリアに感謝の言葉を述べました。
リリアは、そんな店長にあるお願いをしました。
「‥店長、恥ずかしながら旦那様は少々金銭感覚に疎いのです。ですから、今後旦那様がこちらで買い物をする際は、必ず正規の値段で‥いえ、少し割引いた金額で売ってあげて下さい。‥それと必ず私に旦那様が買った物を報告して下さいね。」
リリアは店長にそう言うと、さっさとお店を出て行きました。‥まだ回らなきゃならないお店はいっぱいありましたから‥。
こうして、リリアは沢山のお店から不当に高額で売り付けた商品の差額を返金してもらいました。そして、先程のお店の店長にしたようなお願いを、各店の店長達ともしました。
「さあて、次はあらたな収入源を見つけなきゃね。」
リリアは公爵邸へ戻ると、お店から回収したお金を執事に渡し、屋敷の従業員達への賞与に当ててもらいました。
そして‥‥部屋に戻ると、花の妖精のチッチとディーラと、とある相談をし始めました。
「‥あなた達に協力して欲しい事があるの。私、お花で商売をしたいの。何か良い案はある?」
チッチとディーラは、他の花の妖精にも聞いてみる、と言ってリリアの部屋の窓から外へ飛んで行きました。
「チッチ、ディーラ、頼むわね。」
リリアの部屋の窓際には、チッチとディーラの魂の宿っていない食肉植物と薔薇の鉢植えだけが残りました。