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かわいそうな旦那様‥  作者: みるみる
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14、旦那様とベラ様


ベラはラスター侯爵が夫人とダンスを踊っている間、一人寂しくバルコニーにいました。


バルコニーの夜風にあたりながら、ラスター侯爵の事を考えていたのです。


「‥ラスターの奥様は随分と地味ね、それに美しさの欠片もないわ。‥可哀想な奥様、ラスターはあなたよりも私を愛しているの。‥‥同情しちゃうわ。」


ベラの頭の中には常にラスター侯爵がいたのです。そして夫人の事は、嫉妬する価値もないと見下していました。ベラはそれほどにラスター侯爵に愛されている自信があったのです。


ベラは自身の美しさには相当自信がありましたし、夜遊びも夜の営みについても夫人よりも自分の方が、ラスター侯爵を楽しませてあげられているのだ、と自負していましたから‥‥。


「‥ラスター、本当はあなたの奥さんになりたかった‥‥。もっと早くあなたに出会えていたら‥‥。」


ベラは、ラスター侯爵と夫人が踊っている姿をこれ以上見たくない為、会場の下の庭の方を向いてバルコニーにもたれかかっていました。


「‥ベラ!そんなに悲しそうにして‥僕が恋しかったのかい?可哀想に‥‥。」


「‥‥。」


ベラは聞き覚えのある声の方を、振り向きました。そして、テオが立っている姿を見て、ようやく自分がテオをバルコニーに呼び出していた事を思い出しました。


ベラはテオを見てるうちに、段々とテオとその奥様に対する怒りがこみ上げてくるのを感じていました。


「ベラ、今まで君のもとへ行けなくてごめん。‥僕はどうかしていたんだ。君への愛を忘れてしまっていたなんて‥。」


「‥忘れていたと言うの!?テオ、あなた‥あれほど私を愛してると言っておきながら‥!」


「許してくれ!君を愛してる!」


「‥嘘よ!‥なら何故私の家にずっと来なかったの?それに、私にはプレゼントをずっとくれていなかったのに、奥様にはあんなにも素敵なネックレスをあげていたなんて!‥許せない!」


「‥まって、ネックレス?僕は妻にプレゼントは一切あげていない。‥‥ネックレスなんて知らないよ。」


「‥嘘!もうあなたを信じない!」


「‥本当だよ。どうすれば信じてくれる?」


「‥なら、今晩うちに来て。すぐに来て。」


「‥ああ、ベラ。なんて可愛いんだ。そんなにも僕が恋しかったというんだね。‥分かった。すぐに会場を出て、君の家に向かうよ。」


「‥あなたの馬車で一緒に帰りたいわ。」


「ベラ、勿論だ。さあ、今すぐ会場を出よう!」


「‥その前に‥ちょっとだけ待っててくださる?」


ベラはテオを待たせたまま、自分の取り巻きの男を会場で見つけると、何やらヒソヒソ話をしました。


すると、その取り巻きの男はいやらしい笑顔を浮かべて頷いていました。


「‥テオ様、お待たせしました。さぁ、参りましょう。」


「ああ。」


愚かなテオは、ベラへの熱い思いをなかった事にはできなかったようです。


こうして再びベラの虜になってしまったテオは、もうリリアには二度と目もくれなくなってしまいました。



その頃、会場で一人取り残されたリリアは、テオを一生懸命に探していました。


すると、見知らぬ男性が近づいて来てリリアに話しかけました。


「‥奥様、はじめまして。僕はテオ様の部下のモーブと申します。‥‥テオ様が外でお待ちです。どうぞ僕についてきて下さい。」


リリアは、突然話しかけてきたこのモーブという男を一瞬警戒しましたが、気が動転していたせいか、うっかり男の言う事を信じてしまい、男について行ってしまいました。


リリアは男について歩いて行くうちに、段々と冷静さを取り戻しました。


そしてお城を出て、人気のない方へ歩いて行く目の前のモーブという男を不審に思うようになりました。‥が、時すでに遅く、リリアはモーブという男に突然口元を押さえられ、強引に怪しい馬車の中へ押し込められてしまいました。


馬車はリリアが乗った途端に、凄いスピードで進んで行きました。


やがて街を抜けて岩山を登り始めると、馬車は洞窟の前で止まり、リリアを乱暴におろしました。


「ここは‥どこなの?」


そんなリリアの問いに答える者は、誰もいませんでした。なぜなら、リリアをここまで乗せてきた馬車は、既に王都の方へ戻ってしまったからです。


途方に暮れるリリアの足もとに、何か植物の葉のような物があたりました。


「‥まさか、ゴラちゃん!?」


リリアは、足もとを見て驚きましま。マンドラゴラのゴラちゃんがそこにいたからです。


「‥‥キュキュ。」


「‥私が心配だから、お城への行きの馬車にこっそり乗って来てくれたのね。」


「キューキュキュ。」


「‥えっ、夜会の最中もずっとお城の庭で、土に埋まりながら私を見守ってくれてたの?」


「キュー。」


「‥それで、この馬車にも隠れて乗って来てくれたのね。‥‥本当に迂闊だったわ。ゴラちゃんいなかったら、一人ぼっちだったわ。」


「キュー!キュー!」


「ゴラちゃん、何?うしろ?」


リリアがゴラちゃんに言われて後ろを振り返ると、岩山の洞窟の入り口に二体のゴブリンが立っていました。


‥‥ゴブリン達は、リリアを見て興奮して涎を垂らしていました。


リリアはこの時になって、やっとここがゴブリンの巣穴だと分かったのでした。


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