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かわいそうな旦那様‥  作者: みるみる
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10、それぞれの思惑


リリアがお城から公爵邸へ帰ると、すでにテオのご両親が到着していました。


「遅れてしまい、申し訳ありません。」


「いいのよリリアちゃん。‥苦労をかけるわね。」


「‥え?」


「いいのよ。執事から色々聞きました。‥もう隠さなくても良いのよ。」


お義母様はそう言うと、リリアを抱きしめてくれました。


リリアとテオのご両親は、サロンでお茶を飲みながら、テオの事について話し合いました。


リリアが話すよりも前に、執事がある程度の事をご両親に話しておいてくれたおかげで、話はスムーズに進みました。


リリアは、これまでの事や今日の事も含めて、全てを打ち明けました。


それを聞いたご両親は、リリアに対して心から謝罪をしてくれました。



「リリアちゃん、万が一テオがベラさんに熱を上げたまま、財産を食い尽くしてしまったら、外国へ留学している次男を呼び戻して跡継ぎにする事も考えているの。


だからね、あなたが我慢できなくなったらテオと離縁しても良いのよ。だから、領地経営の事もあなたが心配しなくても良いのよ。‥‥それにね、私達には隠し財産もあるのよ。王室も上回るほどのね‥テオには死んでも言わないけどね。」


「‥私も誰にも言いません。」


「ええ、信じてるわ。だから打ち明けたのよ。」


「‥‥。」


「リリアちゃん、いつでもテオと離縁出来る様にしてあげるわ。もう、あなたを解放してあげる。‥私達、あなたに頼りっきりで何もしてあげられなかったから‥これくらいはさせてね。」



「リリアさん、すまない。テオが君と結婚したら、すぐにベラさんと別れて落ち着くと思い込んでいたんだ。‥あいつはもうどうしようもないところまで堕ちてしまったようだ。‥可哀想だが、そろそろ目を覚まして貰わないとな。‥もうこれ以上、あいつのせいでリリアさんや領民達を苦しめたくない。」



リリアとテオのご両親は、テオの不在の中、テオとリリアの離縁に向けて少しずつ動き出していました。




一方テオは、ベラと共に街の宝石店で買い物を楽しんでいました。


「テオ、見てよ。私にピッタリ!」


ベラはさりげなくお店で一番高い宝石のついたネックレスを手に取り、胸元に少し当ててテオに見せていました。


「‥ベラ、なんて綺麗なんだ。その宝石もまるで君の為にあるようじゃないか。‥店長、これを頂くよ。」


「‥公爵様、恐れ入りますが前回の支払いもまだ頂いていません。前回の分のお支払いを頂いてから、こちらの商品をお売りします。」


「‥つまり、今はこれは売れないと言うのだな!」


「‥すみません。我々も真剣に商売をしているんです。‥遊びや慈善活動じゃないんで。」


「‥ちっ!」


「‥テオ?もうこのネックレスをつけても良い?」


「‥ごめん、ベラ。それは今日は買えないんだ。‥またにしよう。‥さあ、気分を変えて食事へ行こう。」


テオにそう言われても、ベラは手にしたネックレスを決して離しませんでした。


「‥嫌よ。これは私のよ。‥テオ、さっさとお金を払ってよ!私に恥をかかせないで。」


「‥ごめん。ベラ、今日は諦めてくれ!」


オホン、


「‥あの、お取り込み中失礼します。大切な商品なので、早く返して貰わないと‥こちらにも考えがありますよ。」


店長はそう言って、ベラに手を差し出しネックレスを返すように促しましたが、ベラはそれでもネックレスを離しませんでした。


すると、店の外から屈強な男達が数人現れ、テオを殴り、ベラを羽交い締めにして、ネックレスを奪い返しました。


「返せー!私のネックレスなのよ!」


そう叫ぶベラを男達は、店の外へ放り投げてしまいました。テオも同じく店から追い出されてしまいました。


「‥公爵様、前回のお代はお屋敷へ行って奥様から支払って頂きます。それと‥‥あなた方は、今後うちの店には出入り禁止とさせて頂きますので。」


店長はそう言い捨てると、すぐに店内へ戻り、店の扉に鍵をかけてしまいました。


店の外に追い出された二人を見て、道を行き交う人々がクスクス笑っています。


「おのれ!リリアの奴め!」


テオはリリアへの殺意を込めてそう叫びました。


ベラは、自分に恥をかかせたテオにとても怒っていましたが、それよりも‥テオが今までのように自分に貢ぎ物をできないのは、リリアのせいだと思っていました。


なので、ベラも邪魔なリリアを殺してやろうと本気で考えていました。


「‥テオ、よくも私に恥をかかせたわね。許さないから!」


「ごめん、リリアの奴は一発ぶん殴っておくよ。そうすれば、もう大人しくなる筈だから。‥それともいっその事‥。」


「‥いっその事?どうするの?」


「‥‥誰が殺したか分からないように殺してしまおうか。」


テオがそう呟くと、ベラはとても嬉しそうに笑うのでした。


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