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『 ウソつき』

作者: 平小春

『ウソつき 』

この言葉を聞いた時の世間一般のイメージはかなりネガティブなものになるだろう。それもそのはずである。平気で嘘をつく所謂オオカミ少年の言葉は何が本当なのかわからない。1度嘘が勘づかれたが最期、何を言っても信用してもらえないまま人としての信頼を失ったり、悪口の標的になったりして行くことが相まって、次第に仲間外れにされどんな場でも孤立してしまうのが成れの果てだ。他者からの評価を重視するあまり本当に大切なものを失っているように見え、大変滑稽なものだと私は考えていた。



およそ6年前、高校で私に初めて話しかけてきた人間は『ウソつき 』と呼ばれる種族だった。入学してから1か月近く誰とも話すことの出来なかった私からするとその時の彼は自分の救世主的存在であった。それだけでなく、彼から聞かされた高い学力やゲームのランクの高さ、人間関係の広さからハイステータスな人間に見えた。


私が彼と話し始めてから数日、初対面女の子から「あいつはめちゃくちゃ嘘つくよ。」と告げられた。彼女は彼と同じ中学校出身だったらしく、彼の中学校での振る舞いなどを事細かに私に伝えてくれた。日を追うにつれ、私以外のクラスメイトにもその噂は広まった。私は私で沢山の人から彼の噂話を聞かされていくうちに彼への不信感が募った。私は他の友達もできたため敢えて彼に話しかけるなどせず、誰も彼に近づこうとするものはいなくなった。



彼がクラスで浮き始めてから半年以上が経ったある日ふと思うことがあった。なぜ『 ウソつき』は他の人から嫌われるのだろうかというちょっとした疑問だった。



『 ウソつき』が煙たがられるのは前述したような背景があるからであるが、あまりにもそれは自分、否、自分達のことを棚に上げ、キレイな存在としてみなしすぎていると感じた。例えば、子供になぜ空は青いのかと聞かれた時、あなたはその原理を答えるのだろうか。大抵の人は難しい解説を避けはぐらかしてしまうだろう。それだって嘘つきだ。はたまた違う例えをすると、大変傷つき涙を流している友人を励ます時だってそうである。少しでも立ち直ってもらうためにも多少は大袈裟にその人を慰めるに違いない。それだって嘘つきだ。


建前などと言い訳をして嘘をついてしまう人間が、嘘を人よりついたりバレたりする他人のことを『ウソつき 』というレッテルで分類するのは如何なものか。他人を考え守るための嘘は自分を取り繕う嘘とは違い優しいものだと思われるかもしれないが、その嘘からどんなにポジティブな印象を受けようと嘘は嘘であり五十歩百歩であるとその時私は考えた。


私が先駆けとなったかは定かではないが私が彼と話すようになってからはちらほらと彼と話す人が増えていったように感じた。今でも私と彼はよく会う様な中ではあるが、彼の言葉が全て真実だと考えたことはない。

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― 新着の感想 ―
[一言]  成程です。読ませていただきました。  人が噂していても、実際にその人に会って話したらそうではなかったということはよくあります。  自分の目で確かめて言われますが、先に噂などの情報が入ると、…
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