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理想の王様像

お父様はつんでれ。

そこで私は今朝の捨て台詞の真意もこっそりお父様に確かめてみました。どうか、どうか勢いで出てしまった言葉でありますように!勢いだとしても許されない言葉かもしれませんが。本気で言っているよりかはましのはずです!願うような想いで聞きましたが

「嗚呼、あの時は本気でそう思ってたよ。」

とあっけらかんとした顔で返されてしまいました。私の顔からは血の気が引きましたけどね。嗚呼、どうしましょう。お父様が今に不敬罪で牢屋にポイッとされえてもおかしくはありません。宰相ともなれば少しは罪が軽くなるのでしょうか。いいえ、そんな差別があってはいけません。どんな職業で、人柄であっても平等に償うべきです。でもそうするとお父様が…!牢屋に入れられても1日に6回くらい会えるのでしょうか。いっそのこと私も牢屋に入れてくださいと頼めば…?それなら確かにお父様と一緒にはいられますけど、何かが違う気がします。それに妹と会えなくなるのはいやです。それなら家族総出で牢屋に…。うーむ、これなら万事解決??家具とかも一式持っていけば特に不自由ないでしょうし。普段と一味、違って面白いのかもしれません。なんだ、とっても楽しそうで有意義ではないですか。それにいざとなったらお父様の物理的な力で牢屋から脱出すれば問題ないですよね。ウンウンと一人で頷き、心配そうにこちらを覗き見ていたお父様に目を向けました。

「お父様、家族みんなでの牢屋ライフなら楽しそうですね。」

ニッコリと笑いながらそう告げるとお父様はワタワタと慌てだしました。どうしたのでしょう?

「いいかい、フィオリア⁈どういう経緯でこんな考えに至ったかまでは分からないけれど。仮にもしお父様が捕まったとしても、家族みんなで牢屋ライフなんてしてはいけないよ?」

お父様にそう言われてしまっては何も言えません。名案だと思ったのですが。ちょっと楽しみにしていましたのに家族みんなで牢屋ライフ…。でもお父様が捕まらないのが一番ですものね。お父様は私が諦めたのを見て安心したように息を吐きました。そのあとお父様は嬉しそうに笑いながら私の頭をポンポンと優しく叩きました。

「まぁ、行ってみたら普段の仕事の半分ぐらいしか机の上になかったのだけどね。緊急の仕事は仕方ないからどうにもならなかったけれど。」

アイツなりの気遣いだよ。ぼそりと恥ずかしげにそう呟いていたのを私は聞き逃しませんでしたからね、お父様。お父様と王様の仲の良さが微笑ましくてクスクス笑ってしまい、お父様に小突かれました。

「良かったですね。お父様?」

お父様は僅かに頷きました。お父様は大変、照れ屋さんなようです。お耳が僅かに赤いですもの。

「あ、でもお父様。いくら仲がよろしくてもその、王様相手にアイツはちょっと…。」

いつか不敬罪で捕まったり、と周りの目を気にしながら小声で付け足しました。さっきは少し冗談めかして言いましたが不安のタネは早めに無くしておいた方がいいでしょう。お父様はこちらに向けていた目を見開きその後、珍しく声を上げて笑い出しました。

「何です?私は本気で心配して言っていますのに。」

と不貞腐れました。プイっと横を向いて腕を組み、ご立腹であるのをアピールします。心配している相手を笑い飛ばすなんて!お父様は未だに肩を震わせています。悪気はないんだよ、ごめんねという仕草をしながらも笑い声は止まりません。反省の色が全く見えませんよ…お父様。そしてある程度落ち着くと、目尻の涙を指の背で拭いました。

「目尻に涙が溜まるぐらいまで笑うなんて失礼です。」

抗議の声を堪らなくなって漏らします。優しい笑みを浮かべながら眉を下げてごめんね。と繰り返しました。お父様、今更言っても信用など1ミリもできませんからね!それから付け足すように

「大丈夫さ。これは王になる前からのものだし、アイツも了承している。それに…

アイツも私を影ではこのように言っているだろう。」

だから同罪だ。とイタズラっぽく笑いました。そんな返答に私も驚きが勝ってしまいお父様の先ほどの失礼な態度など何処へやらでお父様の話に耳を傾けてしまいました。…単純すぎ。と誰かにつっこまれた気がしますが放って置きましょう。しかし、王様が家臣を「アイツ」「あの野郎」

と影で呼んでいる姿は想像できませんししたくも無いのですが。理想の王様像がガラガラと音を立てながら崩れていくのを感じました。お父様が顎に手を当てて「そういう経緯でさっきのあんな発言に結びついた訳か」と言って喉を鳴らして笑っているのなんて無視です、無視!その後は普通に家族…(もちろん使用人の者達も含みますよ)と会話をしました。

もちろん、馬車をとばして帰ってきたお父様への苦言を遠回しに言うことも忘れてはいませんよ。ショボーンと落ち込むお父様に追い討ちをかけるようにお母様やシェリー、ベスの溜まりに溜まったお耳の痛〜くなるご指摘をいっぱい、受けていました。途中、妹が泣いてしまって大変でしたが良い思い出です。お父様が妹と一緒に泣き出してしまいそうになっていたのはお父様の名誉のために忘れることにします。


やっぱり家族みんなで牢屋ライフも捨て難いかも。

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