ーこの花束を貴方に捧ぐー
ある乙女ゲームがあった。その世界ではプレイヤー以外の登場人物がほとんど年上キャラとなっており、一部のプレイヤーからとても好かれていた。年上好きとしては見逃せないゲームの1つだ。無論、それ以外の人からも人気はあったが。絵も綺麗、攻略対象のボイスも腰が砕ける一品らしい。更には内容も深く泣ける。概要をここでは説明しよう。物語のステージとなるのは〝レイフォード王国〟。魔法が存在し、豊かな国である。そして一部の人間だけが与えられる神々からの加護。魔法は基本、国民全員が使える。しかしそこに更なる加護が加わることでその魔法が特化される。この国では古代より神は6人いるとされている。光・水・炎・風・雷・土である。そこにもう1つの脅威の加護が加わる。闇だ。これは神ではなく魔王が加護するものであるから正式な加護とは判断しないらしい。恐れられ、倦厭せれ、虐げられる存在なのだ。加護が与えられるのは一世代に一人ずつだと今までの文献から考えられている。だから神と同じように皆、崇められるのだ。下手をしたら国王と肩を並ばせるほどの権力者にもなる力が加護された者にはあるのだ。ただし闇の加護者を除き。メインキャラクターは勿論、全員が加護を受けている。その種類が何であれ。そしてその設定がこのゲームをより一層際立たせる。他のゲームではあまり見かけない振り分けも興味を引く。しかし、完璧なものがないと言うようにこのゲームにも1つ、大きな欠点が存在した。それは乙女ゲームに必要不可欠な〝悪役〟に当たる主人公の4つ年上の姉である。主人公の実の姉だけあって容姿端麗、成績優秀、そして運動神経もそれなりにある。もしかしたら主人公よりもハイスペックなのではと疑われるほどに。だが彼女は性格に難ありだった。普通は適度に邪魔をして、最後は和解…というのが悪役の基本だろう。だがこの姉は清々しいほどに主人公をいびり倒し、いびり倒す。とことん邪魔をしてくる。血の繋がりがある妹に何故、そうも意地悪が出来るのか。プレイヤーからしてみれば不思議であった。主人公は天使、しかしその姉は悪魔…いや魔王だ。どのルートでも必ず現れる姉。心底、皆嫌っていた。邪魔されることに対しても勿論、その人間性も疑われたからだ。まぁ、その分の仕返しはクリアできればとことん制裁できる。それを目標に奮起していたプレイヤーも少なくはない模様。ある意味、プレイヤーの心を折らせない大切な役目を果たしている。また攻略対象も一筋縄ではいかない。そう、闇が深いのだ。それは主人公も同じである。しかしそれに比例して内容は良くなるから憎たらしい。1つのストーリーを終わらせるのにも一苦労だ。元々がムズイ上に最悪な悪役。最長で1年かかったらしい。1つのストーリーで…。他にこんなに時間のかかるゲームは存在しないだろう。全クリを成し遂げた勇者はネットで崇められた。そんな激ムズ最悪なゲームに知らぬ知らぬの内に転生しフラグを無意識に折りまくる主人公の物語が今、幕を開ける。
一体、誰が誰へ、どんな想いで花束を送るのか。