入学~開始~
「いよいよ、始まってしまうのね。」
あれから1年が経ちできる限りの下準備は進めてきたつもりだ。
それでも事足りてるのか不安ではある。
何か一つ間違えてしまえば即座にルートに入ってしまう。
それでも私は覚悟を決めたのだ。
全員を幸せにする未来を見つけると、そのために隣にいるハーレイに全てを教え共犯者にしたのだ。
いつ見てもイケメンの従者はそんな私の想いを知ってか知らずかいつも通りの笑顔を向けてくる。
嫌味なほどのイケメンで何かムカついてしまう。
「それでは行きましょうか、お嬢様。」
そう言い馬車から先に出て手を差し出し私の誘導をする。
私はこの1年隠れて動いていたため学園の生徒にも知られていない存在であるため、位の高そうな馬車から出てきた少女とイケメンは一体何者なんだと周りがザワつく。
目の前に学園に入る門が広がっている。
この門をくぐった瞬間ゲームの開始なのだ。
新入生として初めて通う学園に緊張している生徒と違い、ここからが本番だと違う意味で緊張している私の震える手を優しくとるハーレイ。
その従者の顔を見て覚悟を決めた私は門をくぐった。
その瞬間まるで時計の歯車が回り出したかのような雰囲気を感じとった。
「まずは攻略対象に出会うところからですかね?」
ハーレイの言葉にふと我に帰った私は静かに頷き歩みを進める。
この1年で事前準備のために攻略対象に何度も会おうと試みたもののゲームの強制力の力か必ず出会うことが出来なかった。
事前に出会えていれば色々やりやすかったのだが無理なものは仕方ないとできる部分の準備を整えることにした。
「まずはナバーロ・ストログラムですわね。この攻略がゲームでは1番簡単だからこそ全員ハッピーエンドを迎えるには1番難しいわね。そして、私にとってとても大事な人を味方につける為に必要な事よ。」
ナバーロは幼めな容姿でありながら同じ新入生であり成績上位者かつ人当たりも良く人気者と言ったキャラだ。
このキャラのヒロイン枠兼悪役令嬢がゲームで主人公の一番の親友になる女性、「アメリア・ロイスハート」その人だ。
ナバーロを攻略する時だけ敵対するのだがそれ以外の攻略対象が相手の時はかなり協力してくれるとてもいい子なのである。
ゲーム攻略者のアンケートでも女性部門で主人公を置いて2位につける程の人気者であり、かくいう私も彼女のファンなのだ。
ちなみに1位は別のヒロイン兼悪役令嬢なのだがそれはまた後ほど。
とにかく私は彼女を傷つける訳には行かない、必ず親友になってみせると意気込みを見せる。
その姿をハーレイは傍で優しく微笑んで見つめるのであった。