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伝説の魔法使いが脳筋だった件  作者: 六分儀・猫茸(ろくぶんぎねこだけ)
一十也=ストーンゴーレム、キープさんになる。
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キープさん(ゴーレム)の活用法

 各々の神殿でも神の奇跡ヒールは施して貰えますがお布施が高いのが一般的で、庶民にはナカナカ手が出ません。そこの隙間を埋めるのが薬師となります。勿論、薬師も治癒術ヒールを使えますが、神官職とは根本の原理が違います。魔力や魔素の蓄積能力も神官職より弱く少ないので、自然と薬で補う形をとっています。

◆薬師サマン

 

 薬師と言うのは庶民の医療を担うという一面を持っている。もっぱら一般区とスラムと言われる地域の境目辺りに好んで居を構え貧富の区別無く治療を施す事を旨としている者が多い。それ故に血の気の多い荒くれと言えども薬師にちょっかいを出すという事はほとんど無いらしい。少なくともこの街では聞かない。サマンもそうした薬師のひとりで手持ちの薬草が底を尽いたのでギルドへ依頼をしたのだと言う。

 

 歳の頃なら40代後半のひょろっとした優男でそれなりにモテるが未だに独身を通しているらしい。周りが良縁を勧めるがナカナカ首を縦に振らない。別の趣向か?と一時は疑われて足が遠のいた事も有ったらしいが、弟子たちと三人で連れ立って色街へ流れて行ったのを見て、野郎どもがホッと胸を撫で下ろしたと言う。


 「スラムの人達がやって来たんで、また小競り合いで怪我人が出たのかと思ってしまいました。あなたが・・・そうですかぁ~ありがとうございます」少し強張った笑顔で値踏みをしながら、お茶をどうぞと差し出した。

 今回行く採取の場所はマリエさんがソロで薬草摘みをしてた場所より更に森の奥へ踏み込んだ場所になります。と、大雑把な地図を広げて説明する。位置的に初級の魔物と中級の魔物の境目になるので少しでも人手が多い方が良いのです。弟子たちも自分の身を守って自力で逃げる位は出来ますので、心配はいりません。


 と、紹介され自信満々に頷く弟子二人はサマンより頭一つは抜けて横幅もある。「大勢が不利になったら一目散に逃げますので」「その為に背負籠に石を入れて日々鍛錬に勤しんでいます」と胸を張る。嘘のような話だと訝しがるマリエに、倒してナンボの冒険者稼業と薬草の入った背負籠を持って帰って来てナンボの薬師との違いなのです。と説明したら納得したようだ。


 私が地図を指すのを見て不思議そうな顔をしてたが気のせいだろう。何より連れているゴーレムが良い。荷物持ちにぴったりだ。むしろ、ゴーレムの方が真剣に地図を見てたような?

へんてこな凸凹コンビを見てたら良い事を思い付いた。

 「しばらくは薬草摘みの肉体労働から解放されそうだな・・・」

 打ち合わせを終え帰って行く二人連れを見ながら、弟子達に思い付いたアイディアを話をしたら、「「素晴らしい。流石、お師匠様です」」と目一杯褒めちぎられた。

 


◆マリエ


 サマンさんは誰彼なく傷病で困っている人に治療を施す事で近辺の住人に慕われてる尊敬に値する人だった。「紙に書いた落書きを広げて私がココで薬草を採取してる」とかワケの解らない事を言ってたけど、キープさんも同じような事を言ってたから・・・きっと、私には計り知れないナニカを二人は知ってるっぽい?

 でも、私はソコ(紙の上)では薬草は摘めないと思うの・・・菫亭への帰路そんな事を考えてた。



◆キープさん

 

 取り敢えず、近道はしないで地図の順路を逆に辿ってギルドへ戻り、それから菫亭へ戻る事にしようとナカナカにイケメンの弟子二人から離れようとしないマリエを引っぺがしてサマンの治療所を出た。イケメンに心を奪われてるマリエはサマンの段取りを聞いてるのか、いないのか・・・いや確実に聞いて無いな。


 出立は明後日、薄暗い内に東門に集合。夜明けとともに門が開くので一番で出発。夕暮れ前には帰って来る段取りで、準備はそれぞれですると言う事で話は纏まった。

 帰り際にサマンの妙に熱い視線を感じたんだが・・・気のせいだろう。


 翌日暇なのでゴロゴロしてたら、マリエが墨棒を持って来た。僕の頭に顔が無いんでどこを向いてるか良く判らないという事で、無理矢理、目と鼻と口と耳を落書きされた。

「コレからはキチンと顔の有る方を正面に向けるのよ?」自分の作品が気に入ったのかフフンと自慢気に鼻を鳴らすと食堂の方へ手伝いに行った。



◆キープさん&マリエ&サマン一行

 夜明け前に東門に着いていたのだが、ほどなく朝靄の中ガラガラと近所迷惑な大きな音を立てて、荷馬車の荷車だけがサマンの弟子達によって引きずられて来たのだった。弟子たちはサマンに荷台に乗るように勧めたが、そんな歳では無いと一蹴されたそうだ。背負い籠もしっかり5つ用意されてる。そんなに気合が入ってるとは思わなかった。いったいどれだけ摘む気なんだ?

 

 「おはようございます」「「「おはようございます、今日は護衛の方。宜しくお願いします」」」

マリエとサマン一行が挨拶を交わす。

「うわぁ~今日は気合が入ってますね?」にっこり愛らしい微笑みを浮かべてマリエが荷車と背負い籠を見ながら感心したように言うと、頭を掻きながらサマンがキープさんを指差し、引いて貰えないか?と言って来た。

 喋れない設定なので僕には断りようも無い。マリエの方を(ヤダヨ~ツカレルジャ~ン)と落書きされた顔で見て、断ってくれと懇願したが、それをOKと勝手に解釈したマリエが「任せて」と慎ましやかな胸を逸らせた。


 結局、先頭をサマルとマリエ、僕が荷車を引きそれに続き弟子二人が左右後方に別れて追従する。と言う隊形で街道を進む事になる。

 やがて門番がおっとりとやって来て、「薬師サマン一行だな?採集か。通って良し」と見送ってくれた。

 

 出発早々疲れたとかキツイと根をあげたマリエだけ荷台へ乗っけてたが、キープさん凄い!とか、流石力持ち。とか、全然疲れないよね~羨ましい~と、煽てに煽てられ、いつの間にか僕以外の全員が荷台でのんびりしてた。

 荷台の上でマリエ、サマンとその弟子の四人がキャッキャウフフと優雅に物見遊山しながら、あそこのスイーツが美味しいとか、雑貨屋の誰某が浮気して道端に迄家財道具が散乱してたとか果ては貴族の噂話や険しい山に隠れ棲むと言う伝説の生き物の話で盛り上がっていた。


 そうして僕は今、馬が引くハズの荷車を引いている。 どうしてこうなった?

読んで下さってありがとうございます。楽しんでいただけたら幸いです。

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