船小屋の一夜
伝説の魔法使いとチョロインの船小屋での顛末。
も少し煽りたいところですが・・・・タイトル詐欺はイカンよね?(笑)
◆(一十也改め)キープさんと(チョロイン)マリエ 船小屋の一夜
親と子と言う互いに思っても無い”縁”を結んだふたりは船小屋の中でお見合いの席のようにモジモジしている。そこそこの広さを持つ船小屋だが流石に2メートルを優に越すガタイのゴーレムと膝つきあわせて座っていると異様に狭く感じる。
話が途切れた・・・一十也に取っては一番来て欲しくない”サイレントタイム”この何とも言えない沈黙が苦手だった。 他愛の無い一言で良いのに出て来ない。変な事を言って呆れられたら、嫌われたらどうしよう?臆病な心に勝てない自分が居た。
<<せ・折角異世界に来たのに何やってるんだ俺?>>叱咤激励や鼓舞の才能は無いみたいだ。ドンドン思考の渦に巻き込まれていきそうだ・・・こうなると、自分ではどうにもならない・・・
「あ・あの・・・」マリエが沈黙を切り裂いて口火を切る。
「キープさんは、その・・・人であった頃は何をなさっていたのですか?人の姿を捻じ曲げるような凶悪な魔法を行使する輩と対峙しておられたのなら・・・元は名のある御方なのでは?」
「しがないサラリーマンだったけど、齢30にして都市伝説の魔法使いになっちゃったよ」人間に戻った時にナニに失敗しても取り繕えるように先手を打ってカムしてやったぜ?どうだ!
(こういうところは肝が据わってるな・・・いや・・・開き直りか?)
それを聞いたマリエは居住いを正して片膝をつき手を胸に添え深々とお辞儀をし口上を述べた。
「私も冒険者として身を立てようと思っております。まだ、ジョブ的には何を取ると言うところまで行ってはおりませぬ故」
要するに、ジョブを何にするか決めかねてますよって事ね?
「なので、もしもよろしければ是非弟子にして頂きとうございます」
言いながら・・・プルプル震えてるよ・・・ホントに決めかねてたんだねぇ?
「されど・・・我が魔法使いだったのは昔の事、人ならざる身となった今教えられる事とて無いが・・・良いのか?」マリエが畏まった口の利き方するから~移っちゃったじゃァん~とか、ふざけたいのを飲み込む。
「はい。キープさんは私の名づけ子で私のお師匠様です♪」
更なる縁で結ばれたふたり・・・・めでたしめでたし・・・・
◆(チョロイン)マリエ
まさか、私を救ってくれたお方が伝説の魔法使いだった。だ、なんて・・・なんて幸運なのかしら?
さっきはキープなんて上から目線でモノを言っちゃったけど、これからは改めなきゃね?って言ったらキープさんったら
「僕も街に入りたいから、マリエにティムされた事に出来ないだろうか?」だ、なんて素敵なご提案をされたの。
勿論、二つ返事でOKしちゃったわよ?なんと言っても伝説よ?伝説!そんじょそこらの山ほど履いて捨てる十把一絡げの有象無象とは<格>が違うのよ?その上!キープさん「普段僕を呼ぶ時はキープと呼び捨てにして良いから」とまで、おっしゃったの!やっぱり十把一絡げとはデキが違うわ。
でも、キープとは呼び捨てには出来ないわ?そう答えたら、「じゃぁティムが三体目だからキープ3という意味ならどう?」って、御自分で今の自分は脳筋だからと謙遜されてたけど・・・頭の回転も速いじゃん♪ 私の中で何かが膨らんで行くのが判った。そしてそれはなんか嬉しくて楽しくてウキウキして来ちゃった。
それから夜が明けるまで街での事を話し合い。私達は明け方早く船小屋を出てベラムに向かう。まずは宿のおかみさんに謝んなきゃ・・・あぁ気が重いなぁ・・・
「まて」
街に入る所で門番の衛兵に止められた。後ろのゴーレムは一体何だ?と言う事らしい。こういう時だけは目敏いんだからァ。仕方ないからお金を少し握らせたら手の中を見て「愚弄する気か?」と槍を向けて来た。ガメツイなぁ・・・も少し上乗せ♪これでどうよ?と相手の目を見る。
「と・通ってヨシ」
「そっちのゴーレムにはこの鈴を首からかけるのを忘れるな?狩りの対象にされるぞ?」
と、カウベルの様な鳴り物を買わされた。
こうしてふたりは街中へ入って行った。
読んで下さって感謝。楽しんで頂けたら幸いです。