37.エルフの里は花盛り。
目を開けているのが辛いくらいに疲れました。
峠を越えて、安全を確認すると岩場にどかっと腰を下ろします。
みんなも地べたで倒れ込みます。
峠を越える瞬間、
目に見えない何かの膜を通過して、目の前には緑溢れる森林が目の前に広がったのです。
この膜がビニールハウスのような役割をしており、暖かな温暖な気候です。
毛皮のコートが暑い。
それはどうでもよく。
もう、動きたくありません。
ドクさん達は元気です。
しかし、ドクさんがあんなに強かったとは知りませんでした。
いつも酒を飲んでいるか、「がははは」としゃべるマスコットくらいに思っていましたよ。
冬将軍を片づけて侍大将を2体倒すまで予定通りですが、その後は雑魚キャラを延びたビームサーベルで横一閃に数十体も切り倒す……ということはできませんでした。
くそぉ、剣が伸びない。
魔装甲の構造なら変化できるかとも思ったのですが?
駄目でした。
普通の剣の長さですから、2体同時に倒すのが精々です。
1体ずつ片付けました、
そんな無茶はしてもせんよ。
雑魚が大将を守ろうとするから大変です。
倒しても、倒しても、間に壁が作られてゆきます。
結局、全部倒さないと大将に行きつかない。
本当に疲れました。
今の俺では1000体を倒せませんね。
結局、半分近くをドクさんと姉さんらに譲ったことになります。
姉友ちゃんや見習い神官ちゃんもがんばったようです。
侍大将の1体は見習い神官ちゃんが倒したそうです。
もう1体はドクさんの盾の戦士が抑え、魔法剣士が間からずぼりとやりました。
後は統率を失った雑魚キャラというのが幸いしたのです。
中央で侍大将を失った雑魚キャラは俺の方へ合流しようとします。
残る数は500体を越えます。
侍大将が一旦引いて体制を整えていれば全滅もありましたね。
中央のエアーポケットに割り込んできたのが、姉さん達です。
姉さん達が間に入って合流を阻止します。
姉友ちゃんと見習い神官ちゃんの魔力が尽きるまでがんばってくれました。
それで残る侍大将に合流しようとする奴や戦おうとする奴と統率がバラバラになりました。
しかし、姉さん達が時間を稼いでくれたので、右手の雑魚に残った壊滅させることができました。しかし、敵の侍大将を倒したときはもう魔力が残っていません。
もうマインドダウンで倒れる寸前です。
同じく、姉友ちゃんと見習い神官ちゃんの魔力が尽きれば、火力は一気ダウンです。
俺を回収してゆっくりと後退します。
まだ、雑魚が400体近く残っていました。
ベンさんのパーティも僧侶のお兄さんがみんなを後退させて、ベンさんだけががんばります。魔法士、未熟な戦士二人がいますから残していると返って危ないのです。地味にベンさんは1体1体と倒してゆきます。
決して、無理をしません。
もうそこからはドクさんのパーティの独壇場です。
ドクさんとこの戦力は半端ありません。
持久力が凄い。
中でも、ドクが一人で200体以上も危機迫る鬼の形相で無双をかまします。
あの剣技、瞬発力、馬鹿力、凄いですね。
最後の1体まできっちりと。
「糞ぉ、糞ぉ、糞ぉ、死にやがれ!」
何かのうっ憤でも晴らすように?
戦いが終わっても終わりではありません。
疲れた体で雪原を横断しました。
ちっこい奴が鬱陶しい。
ドクさん達が前衛を引いた鋒矢陣形で守って貰い、襲ってくる数を減らしてくれていても大変でした。そして、峠を越えて倒れ込んだ訳です。
眠っていたようです。
みんな、何か食べています。
「あんたも食べる?」
食べますよ。
ちょっとすっぱい木の実です。
森の中から取ってきたそうです。
「じゃあ、そろそろ出発するか」
どこに?
決まっています。
美人の湯ですね。
森はエルフの隠れ里らしく、危害を与えない者には敵対しないそうです。
目指すのは森の中央に聳え立つ山の麓です。
この森には獲物はいますが魔物がいないとか。
全部、エルフの家畜ですか!
暴れん坊の熊がいるから注意しろって、熊は普通に危ないですよ。
でも、殺すのは駄目だって!
姉友ちゃんと見習い神官ちゃんは攻撃禁止です。
「したくても魔力が残ってないわ」
「あ、は、は、は」
そりゃ、そうだ。
下兄、そこで剣を振らないで。
姉さん、ナイフを研ぎながら歩かないで。
姐さんと妹ズは普通でいいな。
ドクさん、『美人の湯』に直接向かわず、エルフの里を訪れます。
おぉ、森を抜けて小高い丘の上に集落はあります。
花畑の真ん中ですか!
貴重な薬草もあるから後で貰おう。
そして、村に入場です。
ヤバぁ、姿は見えませんが囲まれています。
一見、白川郷にあるような藁葺き屋根の木造の建屋。窓や路地、屋根の上に隠れたエルフ達が矢を向けています。
たぶん、エルフだよね?
ドクさん、広場の中央で足を止めます。
風格からすると年老いているように感じますが、見た目は若々しいエルフが数人出てきます。
「この村は人族の立ち入り禁止ぞ」
「これはお久しぶりです」
「どなたじゃ」
「以前、ここで助けて頂いた者でございます」
「はて?」
忘れられていますね。
エルフはみんな美形の美男・美女のようで区別が尽きません。
エルフも俺とドクさんの区別がつかないのかな?
嫌だな。
長老に高級果実の『百薬果実』を奉納です。
あ~、そう言えば、そうでした。
持ってきましたね。
以前、1つだけ『百薬果実』を持っていた冒険者と思い出して貰い。
エルフは友好的に代わります。
急に殺気が消えると、多くのエルフが飛び出してきて歓迎ムードに、どれだけ『百薬果実』が好きなんだよ。
「あの盟約を守り、再び訪れるとは、人族にするにはおしいのぉ」
人間を完全に見下していますね。
まぁ、いいか。
とにかく、歓迎してくれるらしい。
俺は酒を飲めないけど、美酒佳肴の珍味を揃えてくれました。
中々に美味しいです。
森の木の実や野菜がメインですが、肉に魚も出てきますよ。
エルフが肉を食べないという説は、この世界では関係ないみたいです。
違うって?
人間みたいに人間を喰うような野蛮な行為はしない。
エルフはエルフの肉を喰わない?
人間も人間を喰わないよ。
たぶん。
そう言って怒ると、逆に喜んでくれたよ。
知らぬ間に人間も成長したって。
やっぱり見下している。
遂に秘境の温泉です。
何でも女神アルテミス様、女神アマゾネス様、女神ネクベト様が度々に訪れているとか。
先日も来られたらしい。
女神と同じ風呂に入っていいのか?
聞いてみるといいらしい。
おおらかだね。
源泉かけ流し、大岩に囲まれた大浴場です。
野生味あふれる岩をくり抜いて湯船にしているようです。
いいわね!
はい、俺達は退場です。
女性が先に入って俺達は後でゆっくりと入ります。
何故、一緒に入らないかって?
殺されるよ。
姐さんとひょろの旦那さん、ゆっくり後でね。
遅れて、すみません。
予約いれたつもりでした。