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転生は普通のことだった!~3度目の人生、転生チートしてもそんなに巧くいくわけじゃないのよ~  作者: 牛一/冬星明
第一部.幼少チートで優雅な(?)ウハウハ編、どこがウハウハなのですか?
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28.宿営宿の無料貸し出しとか。

2度目の夏休み。

クエストを終えてギルドに戻ってくると、ベンさんと俺はギルド長の部屋に呼ばれた。

「呼び出して申し訳ありません」

「別に構わんとは言わん。もうドラゴン退治とか、変な依頼は止してくれ!」

「は、は、は、今日は違いますよ」

「なら、いいんだが」

ギルド長の話は確かに依頼ではなかった。

「という訳で冒険者が増えているのですが、去年の冬より旅団の護衛の集まりが期待できないのです」

ギルド長がちらちらと俺の方を見る。

砦の開発、草原までの道路作りと護衛の仕事は山ほどあります。

砦の宿営宿は完成していないが、簡易のテントで冒険者が寝泊まりするようになっていて、それに伴って屋台が出店して食事にも困らない。井戸の数も十分あり、水場は自由に使えるので新しい狩り場として機能し始めています。

つまり、儲からない旅団の護衛を引き受ける冒険者が減ると。

俺のせいじゃないよね。

だから、俺をちらちらと見ないでよ。

はい、はい、何か対策を考えろって事ね。

宿題を貰って解放された。

「なに、なに、なにかおいしい話?」

「どこの調査だ」

「付いていきます」

「レベルが上がる獲物がいいな」

「遂にドラゴン退治か」

みんな、好き勝手言っているよ。


前回と同じく伯爵のパーティーはお断りした。

貴族の間で俺がパーティー嫌いなので呼ぶと不評を買うという噂がどこから共なく聞こえたと言いいます。

そのお蔭か、余り呼ばれなかった。

感謝、感謝!

親しくしている貴族は別腹です。

むしろ、姉と姉友ちゃんがパーティーに行く気満々でドレスを新調するぐらいです。

こちらからお願いしました。

お茶会のメンバーは内実を知っていますからね。

で、空気を読まない人もいます。

「絶対に来て下さいよ。来ないと私が解任されちゃいます」

無茶をいうのが文官さんの上司のパーティーです。

この城壁市には、二人の伯爵が存在します。

もちろん、一人目は領主伯爵様です。

そして、もう一人が王都から派遣された市長伯爵閣下です。

市長伯爵閣下は領地を持っていません。

ここの生まれでもありません。

王の命令で市民を統治しているのです。

王国に住む者はすべて市民であり、王の庇護下にあります。

王は領主に命じられて領民を守っています。

市民は物を売り買いすると市民税が徴収され、領地で作物が採られると4公6民で領主に領税を払います。

市長は領主が横暴なことをしていないか、市民がちゃんと市民税を納めているかを監視し、行政府の官僚のみなさんは監視する市長と治める領主という二人の上司のご機嫌を取らないといけないのです。

当然、

市長と領主は犬猿の仲です。

行きたくないな。


文官さんが馬車での道すがら説明してくれます。

この城塞市では長年に渡り、再開発を命じられているのです。

領地を増やす為には魔物を討伐しなければなりません。

当然、領軍の負担が大きくなり、財政も負担が大きく圧し掛かります。

こうして苦難の末に領地を増やせるのです。

しかし、耕作地を増やすと穀物価格が下がり、領主は財政に苦しむことになります。

苦労しても得るモノが少ない。

もしも討伐に失敗すれば、慰労金や被災者の救済金が重く長年に渡り圧し掛かります。

メリットが少なく、デメリットが大きい。

領地拡大など馬鹿らしいと申し出を蹴っているとか。

こうして王都の命令を無視して来たのが領主伯爵様でありました。

その領主伯爵様の手を掻い潜って領地を拡大し、産業を育成したのは誰か。

その者を確認しない訳にいかない。

また、

領主伯爵様と知見があり、市長伯爵閣下と知見がないのも拙いとか。

そんな事情なんか知りませんよ。

そんな裏事情など聞かされてもね。

「お願いますよ。暴れないで下さいよ」

どこの野蛮人ですか。

何故か、俺が文官さんをエスコートしてパーティー会場に入場し、文官さんのあいさつに付き合わされます。

あぁ、なるほど。

品定めですか。

文官さんの上司方々、さらに王都から帰省している王都官僚のみなさんへのあいさつです。

みんな、じろじろと見てきます。

敵対的じゃないだけマシですね。

あいさつが面倒です。

中には市長伯爵閣下の息子さんも父親に会いに来ていました。

嫌だ、嫌だ、嫌だ。

ダンスなんて踊りたくない。

身長を考えろ、バランス悪いだろう。

えっ、娘と踊って下さいですって。

1歳下ですか。

確かにバランス合いますね。

どうして家族連れで来るんだよ。

「今日はありがとうございました」

「旦那がいるんだろう。旦那と来いよ」

「あは、あは、あは、ウチのは下士官なのでまだ帰ってきていません」

文官さんの旦那さんは飛行船なんて贅沢ができるほど高官でないので旅団で帰ってくるといいます。そう、ここに顔を出しているみなさんはほとんどが王都の高官であり、高官様ゆえにあいさつに来ている訳ですね。

問題が1つあります。

こういう1つパーティーに出ると芋づる式で招待状が増えるんだよ。

もう帰っていいですか?

旅団なんか帰って来なけりゃいいんだよ。

帰る。帰って来る。帰らない。

誰が?

あっ、閃いた。

俺は文官さんに感謝を言った。

帰りは自宅ではなく冒険ギルドへ。

時間との勝負です。


冒険ギルドに到着するとギルド長と主なメンバーを集めて貰います。

時間がないんだよ。

帰っているなら呼んで来い。

提案は簡単です。

旅団と一緒に来る冒険者を全部雇ってしまう。

「坊主、無茶言うな! 一体、いくら掛かると思っているんだ」

「全部、払いましょう。宿泊費に朝食の炊き出しも付けて」

「話にならん」

そう言って帰ろうとするギルド長に俺は言います。

「砦の宿営宿に泊めるならタダですよ。しかも屋台で飯を食えば、ギルドに金が入ってくる」

帰ろうとしていたメンバーが足を止めます。

砦の屋台の飯は割高です。

危険手当に材料の輸送費とか言っていますが、場所代と売上の1割がギルドへの上納金です。それでも高い魔法素材を売って潤っている冒険者にとって安いモノなのです。儲かると判ると現金なもので屋台出店の依頼が後を絶たない。バラック小屋のような板を張り付けただけ酒場も登場している。

砦に住む冒険者が増えれば、屋台の数を増やしてもいい。

売り上げが上がれば、上納金も増えます。

これに気づかないならギルド職員失格だ。

「もちろん、砦だけはいけません。3割くらいは城壁市を拠点としましょう。砦の護衛、輸送の護衛、輸送の半数は帰りの旅団クエストを引き受けてくれた冒険者に優先的に斡旋します」

「宿を借りるのか」

「いいえ、シェアハウスです。空き物件を借りて、数組のパーティを合同で泊めます。朝は城門横の広場で炊き出しです」

「なるほど。だが、EとFクラスの輸送はどうする。最近、仕事が増えて喜んでいる。あいつらから取り上げれば怒るだろう。地元を怒らせるのか?」

「生活クエストの依頼などで支障は出ていませんか」

「最近、輸送クエストに回って遅れ気味です。依頼料を上げるか考えているところです」

「では、1ヶ月だけ戻って貰いましょう。1ヶ月だけです」

「Eクラスはそれでもいいだろう。Dクラス以上はどうする」

「旅団の到着する日に同条件で旅団クエストを発注します。冒険ギルドの目的は隣の冒険者を保護することではありません。帰りの旅団護衛の確保です。早い者勝ちでいいじゃないですか」

ギルド長が頷いた。

「2号館の宿営宿は後回しでいい。親方に話を付けて1号館をすぐに使えるようにしろ。細かい内装はいらん。ベッドもいらん。寝床だけ揃えろ」

「はい」

「不動産屋に交渉しろ! できるだけ安く、大きい物件だ。1回じゃない。毎年夏と冬の2回ある大口の案件だ。値切れるだけ値切れ。駄目なら次はないと脅してやれ」

「判りました」

「朝一だ」

「はい」

「依頼のクエストの詳細を今晩中に整えろ。人員とランク、基本は旅団参加で砦の討伐クエスト長期依頼だ。本部と同時に砦でも発表、早い者勝ちだ。徹底しろ!」

「任せて下さい」

この案件を指示されたのは副ギルド長です。

本部職員は徹夜だね。

「最後に坊主」

俺っ?

「Bクラスの依頼クエスト達成だ。評価はS。悪いが報酬は合同パーティの各一人に小金貨1枚だけだ。悪いがこれで折れてくれ。これからいくら掛かるか判らんからな」

「これ、クエストでしたっけ?」

「いい答えが返ってくると思わんから正式に依頼しなかった。儲けがでれば、追加報酬も出そう」

「よろしくお願いします」

「おお、任せておれ」

クエストの発表は旅団が到着する前日となった。

クエストも1ヶ月の長期クエスト、1週間毎の中期クエスト、1日毎の短期クエストに分けられ、Dクラス以上のパーティ対象とされた。

E・Fクラスは当日に仕事がある場合のみだ。

1ヶ月の我慢だよ。

しかし、地元の冒険者は旅団クエストを受ける者は少なく、一方、旅団に付いてきた護衛の冒険者はほとんどが長期クエストを引き受けた。

欠員分は、ベンさんのようにBクラス冒険者がいるパーティへの依頼発注で何とかなりそうだと言っています。

「安心しろ。依頼発注はおまえんとこが一番だ」

「いりませんよ」

「遠慮するな、は、は、は」

迷惑なギルド長だ。

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