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転生は普通のことだった!~3度目の人生、転生チートしてもそんなに巧くいくわけじゃないのよ~  作者: 牛一/冬星明
第一部.幼少チートで優雅な(?)ウハウハ編、どこがウハウハなのですか?
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27.坂本竜馬って、誰ですか。

お茶の歴史は深いのです。

この世界では5000年ほど前から始まっていますが、人類は様々の物をお湯に浸してお茶を作ったとされています。中には、石や人骨までお茶の材料にしています。昔、本当に人骨だったのか、初めから豚骨を人骨と言っているのかは判りませんが本当に沢山の種類があったと思われます。

2000年頃前から葉を使った茶が主流になり始め、お茶は薬水として広まってゆきます。飲むと体によいモノ、それがお茶なのです。そして、時代が下るほど様々な呑み方が工夫されてゆき、近代に入って我々は劇的なお茶文化の変革を迎えるのです。

5000年より昔から勇者召喚によって異文化を受け入れてきた我々ですが、300年ほど前に新たな魔法を手に入れて、異世界の知識を多く手に入れることができるようになります。

そうです転生者の記憶の活用です。

これによって300年ほど前に異世界(地球)から伝わった茶の製法は、この世界(異世界)に革命を起こしました。同じ茶葉でも製法によって味が変わることは奇跡です。

様々な茶葉がどの製法で呑むとおいしいのかが研究され、世界中に茶の文化が広まったのです。

その製法とは、

緑茶、不発酵茶で発酵が始まらない内に釜炒りすることで酵素を不活性化します。

白茶、弱発酵茶で摘採後、放置して水分を飛ばすとともに酸化発酵を行わせます。

黄茶、弱後発酵茶で加熱処理を低い温度から始め、徐々に温度を上げ、その後徐々に温度を下げることにより、一定の酸化発酵を行わせます。

青茶、半発酵茶で放置して水分を飛ばすとともに酸化発酵を行わせる途中に撹拌して、釜炒りで酸化発酵を止めます。

紅茶、完全発酵茶で放置して水分を飛ばすとともに酸化発酵を行わせた後に、茶葉の香りと味を引き出すため茶葉を揉み、酸化発酵をさらに進行させます。

黒茶、後発酵茶で摘採後すぐに加熱して酸化発酵を止め、茶葉の香りと味を引き出すため茶葉を揉み、その後、高温多湿の場所に茶葉を積み上げて微生物による発酵を行わせます。

花茶、以上6種に加え、花で茶に香りを付けたものをいいます。

今、この瞬間にも新しいお茶が生まれているのかもしれないのです。

生産地、材料の葉、製法によって無限の可能性を秘めているお茶の世界は神酒と並ぶ神水と呼ばれます。

お茶は神が与えた祝福なのです。

お茶会主催の茶学論文「転移者が齎したお茶文化の進化」が先輩らによって発表され、茶学を選考する未来のお茶会メンバーが聞いている。

発表しているのは、5回生の資料さんと頑張り屋さんの二人です。補助として資料の出し入れを4回生の控えめな先輩と新人ちゃんの二人が手伝っています。

7女ちゃんと俺と見ているだけです。

論文発表が終わり、質疑応答に移っています。

「後期の発表はあなたらにもやって貰うわよ」

「任せなさい。完璧に発表して見せるわ」

「その前に何を発表するかが問題だよ」

「それはあなたがやればいいのよ。わたしは発表会に華麗にデビューするのよ」

丸投げかよ。

「先輩ならきっと大丈夫です。期待しています」

「少年、よろしく頼む」

控えめな先輩も新人ちゃんも俺に丸投げかよ。

「異世界のお茶を手に入れるなんてどう?」

「どうやって?」

「知らないけど、あんたがいう異世界の緑茶を飲んでみたいのよぉ」

「手に入るなら私も」

「私も一票」

「私も」

「無理です」

「ちゃんと質疑応答をちゃんと聞いておきなさい」

「「「「「は~い」」」」」

お茶会のお姉さんに怒られました。

日本の緑茶ね。

まぁ、勇者召喚の折りに茶葉の苗木を一緒に持って来て貰わないと。

無理だ。

召喚前に声でも届けられないと絶対に無理だ。


午後は反省会という名のお茶会です。

7女ちゃんがメンバーに加わってからお菓子の差し入れが圧倒的に増えました。

7女ちゃんの侍女が会のはじまる前に用意してくれます。

なんか、優雅な雰囲気になったね。

侍女ちゃんの服がメイド服なのがいけない。

侍女ちゃんはメンバーではなく、7女ちゃんの付き添いであると頑なに固辞します。

まぁ、いいか。

「転生者のこの世界における貢献度の大きさに驚きました」

「今回、論文の争点は正にそこね」

転生者の文化的な貢献は非常に大きい。

お茶を始め、道具や工具において飛躍的に発展している。

それに対して技術はほとんど貢献していない。

「エンジンの開発は成功したと聞きますが、量産の目途が立たないと聞いています」

「エンジンより魔道機の開発を優先しているとも聞くね」

石油が発見されていないようで燃料となるガソリンを作るより、魔石で動力を動かす方が効率いいらしい。

飛行船のエンジンは風の魔石だとか。

しかし、その魔石は貴重な上に消費も馬鹿にならない。

飛行船は作られても、車や飛行機は作られていない。

この車や飛行機は異世界の文献に出ているので存在を隠されている訳でもない。

「調べていて思ったのですが、これだけ貢献している転生者の保護政策は何故、これほど冷遇されているのでしょうか?」

4回生の質問はもっともです。

俺もそう思います。

月々銀貨1枚と食糧支援のみ、貧しい家では生きてゆくのが精一杯で生活の余裕がない。

「私の見解でいいかしら」

「はい」

お茶会のお姉さんの意見らしい。

「わたしの子爵初代様も転生者です。剣で活躍し、その褒美として子爵を頂いたと伝えられております」

おぉ、お茶会のお姉さんのご先祖様は転生者らしい。

「でも、転生者の多くは特別な技能も知識も持っていないことが多いのです。転生者は前世の記憶を持つという以外に特別な存在とは言えません」

「でも、凄い知識を持っています」

「そうですね。でも、その知識を持っているのがごく一部の存在です。そのわずかな存在の為に多くの財を投じるというのは、王国の市民の財を無駄に投じる事と同意なのです」

「だから、支援しないのですか」

「いいえ」

お茶会のお姉さんが俺の方を見て、優しいそうににっこりと笑う。

「転生者の知恵を無碍にするつもりはありません。ゆえに生きる為の最低の支援を行い。後はその知恵を使い、のし上がれということなのではないでしょうか」

「そんなことができるのでしょうか?」

「私のご先祖がそうでしたし、目の前にもいます」

俺を見ないで下さい。

みんな、見ないで!

「納得しました」

納得しないで、もうちょっとだけ支援して上げようよ。

「当然ね。転生者は魔法士を多く輩出していると言われているけれども、魔法使いを多く輩出する家系の方が魔法士ではなく、上位の魔道士を多く輩出しているわ。重視するべきは血の濃さであるべきだわ」

転生者は早い時期から自覚して魔法の訓練ができるから成長著しいだけだ。別の魔法の才能に長けている訳じゃない。

差し詰め転生者は秀才であり、魔法の家系は天才を生む。

あっ、7女ちゃんと目が合った。

「うぅ、違うわよ。あなたは転生者だから優れているのではないの。あなたはあなたが優れているあなたなのよ。私は認めて上げているから感謝しなさい」

ふん、7女さんが顔を背ける。

ツンデレですか。

それよりお姉さんの方だ。

「あのぉ、先輩。ご先祖様はどんな方だったのですか」

「詳しくは知らないのよ。北辰一刀流の凄い剣士だったと聞いていますわ」

「まさか、坂本龍馬の生まれ代わりとか?」

「「どなたですか?」」

「明治維新で活躍し、大政奉還を行いました」

みなさん、坂本龍馬を知りません。

4回生の異世界文学好きの子は「明治維新と大政奉還は知っています」と言うが龍馬は知らないという。

そうですか、そうですよね。

「その坂本龍馬は千葉道場で北辰一刀流を学んだ剣豪と言われています」

「あっ、そう言えば、ご先祖様はお酒を飲まれると、『坂本は剣士でもない』と口癖のように言われたと伝わります。でも、そちらの坂本様は剣豪のようですから別の方ですね」

あぁ、そういう噂もありましたね。


坂本龍馬から異世界文学の話に移ったのだが、お茶会のお姉さんはあまり異世界の話が好きでないらしい。

子供の頃、『赤ずきんちゃん』とか、『狼と七匹の子山羊』とかを聞かされたことがあるのだが納得いかなかったと言う。

「あんなに大きな狼がベッドに寝ていて、赤ずきんちゃんどうして気が付かなかったのでしょうとか」

あぁ、この世界の狼は大きいよね。

ギガウルフとか、象か、(サイ)かという位に大きい。小さい方の雌でも、虎か、フランダース犬ほどある。

確かにあれが寝ていて、ベッドに納まる訳もない。

「子山羊を食べた狼の腹を裂くと、子山羊が生きているのも判りませんとか」

狼は獲物をむしゃむしゃと食べて丸のみにしないよね。

他にも、

王様の耳はロバの耳でどうしていけないの?

見た事ないですが、エルフをドワーフもいるそうです。

「どうして、死体にキスをするの?」

死んでいる女の子にキスするのは変な王子だね。

「桃太郎も金太郎もおかしいと聞いてしまいました」

確かに鬼であるオーガは竜やロック鳥のように光り物を集めないね。

どうして宝があるのか疑問に思うよね?

魔物の熊と相撲は取れない。

こっちの常識です。

一寸法師は、小さくなる魔法ってあるの?

聞きません。

「幼かった私はどうでもいいことで母を困らせてしまったみたいで、恥ずかしい思い出なのです」

お茶会のお姉さんは小さい頃から疑問に思ったことを聞かずにいられない子だったみたいで、少し困ったような顔をして指で頬を少し掻いていました。

これでは異世界の本が好きになるハズもありません。

この後、

みんなで恥ずかしいことを告白し合うような流れが…………自白大会になってしまいました。

もう、止めようよ。

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