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転生は普通のことだった!~3度目の人生、転生チートしてもそんなに巧くいくわけじゃないのよ~  作者: 牛一/冬星明
第一部.幼少チートで優雅な(?)ウハウハ編、どこがウハウハなのですか?
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17.お茶会。

学校が再開し、今日は優雅にお茶会に参加します。

お茶会はお茶学を専攻し、且つ、お茶会メンバーに認められると参加できるとか?

何か、最初から招待されましたけどね。

「こちらのお茶は如何ですか」

「おいしいです」

「それはよろしゅうございます」

お茶の区別なんてできる訳もない。実は首をただ捻るだけです。

「もしかしてオリエントかしら」

「正解です。今年は天候に恵まれて、100年の一度の出来だそうです」

「それはよろしいですわね」

「東方への貿易も巧く行っているようで繁盛しているそうです」

「では、麦の値が下がりそうですわ」

「そうなりそうです」

「では、南のミリディからお茶は安く入りそうですわ」

「それは楽しみです」

「今年のオビウムは出来がそうでもありません」

「それは残念です」

「プリヴィウス、マリィディ、アンティのお茶も楽しみにしていましたのに」

「わたくしもです」

「それに冬の木綿は高く付きそうですわね」

「それは嫌ですわ」

「どちらにしても苦しいそうです」

「困りました」

「北との交易も閉じてゆきますわね」

「では、セプテムは駄目ですか」

「あなたはどう思われますか?」

お茶会に参加するようになって半年、ようやく会話に付いていけるようになってきた。

「そうですね。地場産業を伸ばすのが一番でしょう」

「何か思い当たるものでも」

「残念ながら」

「そうですか、残念です」

産業を発展させるのは簡単なことではない。特に流通が盛んでないこの国では、安価な物を輸送するのでは採算が乗らない。

「ただ、短期的に言えば、魔物素材は高く売れます。魔物素材と木綿を交換すれば、オビウムのお茶は当然、オビウムに入るプリヴィウス、マリィディ、アンティ、さらにミリディのお茶が手に入るのではないでしょうか」

「まぁ、素晴らしいですわ」

解説しよう。

セプテム地方とは俺が住む王国の北方を差し、この城塞市から流れる川の両岸にあるいくつかの城塞市を差している。正確には、東方のオリエント地方と西方のオビウム地方を結ぶ東西の街道より北側にある地域をセプテム地方と呼んでいます。

魔物が多く、産業や農耕も遅れている地域であり、特に生産するものもないのです。

会話に出て来たオリエントというのは、この城塞市のあるセプテムの東にある地域を差し、このオリエント地域は天候に恵まれてお茶がよく育ったということです。

天候が良かったので大量のお茶が売れるようになりました。

オリエントのお茶は海を渡った東方の国で高く売れるそうで、東方からお茶の代金として銀が手に入ります。

この銀を南方のミリディに持って行き、オリエント地方の商人が大好きな鉄鋼や宝石や絹と交換されるのです。鉄鋼や宝石や絹も東方で高く売れるからです。

天候がよくお茶が沢山取れたので、彼女たちはオリエント地方の交易量が多くなりそうだと言っているのです。

しかし、問題もあります。

天候に恵まれてよく育つ作物はお茶だけでなく、麦や米も豊作になっているのです。

東方が豊作になるとオリエント地方は麦の輸入量が減ってしまうのです。

当然ですね。

セプテム地方の西方をオビウム地方と呼び、オビウム地方は穀倉地帯で王国最大の穀倉地帯を持っています。

オビウム地方は二つの大河に挟まれ、大河が作った広い平野が広がり、耕作に適しているのです。しかも、この平野の東側が天然の城壁となる山地が立ち並び、魔物が侵入し難い安全な地域となっており、オビウムを中心である城壁市アサを始め、多くの城壁市が造られて連合する大都市を形成しているのです。

人口も王国の3分の一が集中しています。

王都周辺部を除けば、大都市を形成しているのは西方のオビウム地方だけなのです。

農耕の他にも産業として衣服の木綿を栽培が盛んであり、王都や西方まで輸出されているのです。

オリエント地方が不作であれば、当然のようにオビウム地方から穀物が輸送され、オリエントのお茶を売った銀がオビウム地方に流れます。

オリエント地方とオビウム地方の貿易が盛んになると、その交通の要所であるセプテム地方を潤うと言う訳です。

つまり、オリエント地方が豊作になると農産物の貿易が減り、オリエント地方は木綿を買わずに南部の上等な絹を購入するというデフレスパイラルに突入するのです。

今年のセプテム地方は貧しくなると嘆いています。


王国の地理をもう少し説明してみましょう。

オリエント地方を南部に下ってゆくと、大陸の中央にある王都、センター都区に当たります。王都の東南部には神々の住む神域の廬山があり、人族が入ることを禁止されています。

オリエント地方は海に面しており、交易が非常に盛んな地域なのです。

王都の地域も元々は大陸の東西を結ぶ、交易の中継地点として栄えていました。

1838年前に神聖国として王国が建国され、困窮する東西を吸収し、衰退する三王家を同化して現在の王国へとなってゆきます。

神の命により魔物を討伐するのが、この王国の使命なのです。

ゆえに、神の棲み家、廬山に近い地を王都と定めています。

知識をどん欲に吸収し、流入に不便な内陸部というデメリットも克服して王都周辺は発展しています。

交易と流通の便利さから言えば、オビウム地方の城壁市アサを西都とした方が国の中心にふさわしいのですが、そこは神聖国ということなのです。

それは歴史の話なので飛ばします。


王都から南西の街道を進むと海に出ます。

この南に続く街道を南方のミリディ地方と呼ばれています。

ミリディ地方は大陸南方の西海岸を指し、海岸沿いに数珠繋ぎに城塞市がどこまでも並んでいます。温暖な気候から様々な野菜や果物を育ち、絹などの高級な衣類なども作り、魚介類や真珠といった宝石も産出します。また、山間部には鉱山が多くあり、鉄や銅を多く産出するのです。海岸が複雑で大型船が行き来するのに適さず、物流は海を使った輸送用の小舟を使います。

王都やオビウム地方と交易を盛んにしている地域なのです。

ミリディ地方は国土の4分の3を占め、小さな城塞市が海岸線にそって南へ南へとどこまでも延びているのです。

このミリディ地方で生産されるオレンジを使ったオレンジティーが好きな先輩もいます。

オレンジ、輸入して欲しいですね!


さて、我が城壁市は北東から南西へ河川が流れ、このセプテム川はオビウム地方の海岸であるオビウム湾まで流れています。この川は緩やかな流れが続き、行きは川の流れに沿って下って行き、帰りは西方の風を使って上ってくることができるのです。

川を介してセプテム地方とオビウム地方は繋がっているのです。

オビウム湾は東にオビウム地方、北にセプテム地方、西に三王家地方に囲まれています。湾を海に面して南に下るとミリディ地方から海岸沿いへと繋がっています。

三王家地方は北側に小王家プリヴィウス、南側に小王家マリィディ、小王家アンティが王国の庇護の元で存続しているのです。

プリヴィウスの西側の山地を超えると広大な大陸が広がっており、プリヴィウスは大陸へ続く玄関口の緩衝地帯として存続して大きな役割を果たしています。また、西方に続く海は小王家マリィディ、小王家アンティが大きな影響を持っています。なぜなら、この三王家はかって大陸を支配した王家の直系なのです。

そして、大陸の国家はすべて三王家から派生した一族が各地を支配しているのです。

名門という奴ですね。

日本的にいうと、

「やぁ、やぁ、我こそは源氏朝臣の……」

と言う奴です。

戦国時代には足利家は幕府として力を失っていましたが、権威は残っており、織田信長らも扱いに苦労しています。

三王家はそういったポジションなのです。

そして、プリヴィウス、マリィディ、アンティで取れるお茶も伝統の味で美味しいとお茶会のメンバーは絶賛します。

ミリディ地方のオレンジティーも外せませんよ。


いずれにしろ、

オリエントが豊作なのでオビウムからの穀物の輸入が減ります。

東西の交易で儲けているセプテム地方、我が城壁市の収入も減るのは明らかです。

念の為に確認しますと、

西のオビウムが凶作であっても東西の交易の量が増えることはないそうです。

そもそもオリエントに輸出できるほどの穀物の生産力がないからです。

その場合は大陸から輸入するそうです。

妥当ですね。

セプテム地方は、交易量が減り収入が減るだけで済ません。

穀物の余剰に運ばれてくる綿花の輸入量が減るのです。

今年は綿花の値段が高くなりそうだと嘆いています。

綿花だけを輸入すると、やはり綿花の値段が上がりますね。

コートとか高くなりそうで嫌ですよ!


俺が考えたのは魔物素材をオリエントや王都に回さず、オビウム地方に持って行くという案です。正確には、セプテム川の河口にある城壁市です。この城壁市はオビウム地方と船で交易をしています。馬車と違い、船は安価に大量輸送できるというメリットがあるのです。

オリエントに持って行くのは距離的に近く運搬費を節約する為であり、王都に持ってゆくのは単なる習慣で意味がありません。魔物素材は需要の多いオビウム地方なら高値で買ってくれます。

オビウム地方は魔物が少なく魔物素材を高く買い取ってくれるのは、『魔物素材の買い取り価格とお茶の生産』という論文に書かれていました。

空になった船に綿花を買って帰れば、安く輸入できるという訳です。

船、それはキーワードです。

魔物に襲われるリスクが少なく、行きは川を下ればいいだけで、帰りは西風に帆を張って上がってくる。時間が掛かることを除けば経費も安くつきます。

みなさんもご存じです。

このお茶会の提言がどこまで城塞市の運営に届くのでしょうか?

先輩のお母さんは交易省の職員だそうで、リボンの先輩は造船部の父を持っており、淑やかなお姉さんは財務局に姉が務めているとか。

お茶を注いでくれているお茶会のお姉さんのお父さんは次長だそうです。資料とかを運んでくれているお姉さんは審議官の娘さんで知り合いかもしれません。その他の元気な先輩や頑張り屋の先輩、控えめな先輩も貴族なので両親に話しておくとか。

お茶会の人脈はハンパないわ。

えっ、俺が一番?

伯爵さまと面識あるけどやりませんよ。

お茶の為と言われても無理です。

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