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転生は普通のことだった!~3度目の人生、転生チートしてもそんなに巧くいくわけじゃないのよ~  作者: 牛一/冬星明
第一部.幼少チートで優雅な(?)ウハウハ編、どこがウハウハなのですか?
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15.竜の派生でも英雄ですか。

クラスの対抗戦は遊びです。

王族や大貴族は暇潰して催しを行い、そこで活躍すると取り立てて貰えるので立身出世を願う人は大真面目なのです。

それにも慣れておけという意味でしょう。

クラス対抗戦を重ねてゆくとクラスの力関係が見えてきます。

我が2組は伯爵家の分家にあたる子爵の息子様と将来が期待される自治官僚の息子である男爵の長男がリーダーになっています。

1組のリーダーは伯爵家の3男であり、他に対抗馬もいません。

1組は3男の取り巻きを中心に団結しています。

そりゃ、後継ぎではないからと言って市の最高権力者の息子を蔑ろにできませんよね。

2組は分裂中です。

3男に媚を売る分家の腰ぎんちゃくと市の治安を引き受ける父の影響を受けた男爵の長男が対立します。

1組に逆らうなど持っての他という腰ぎんちゃく。

堂々と戦う事に意義があると正論を吐く男爵長男。

どちらも譲りません。

俺、関係ないよ。

三男さん、かなり狭量のようで喧嘩なんて売りたくないです。

子爵の坊ちゃんは最近見つけた有力な子爵坊ちゃんにアピール中ですから男爵長男に加勢しています。

クラス対抗戦は同年対決を制すると、学年を越えて学園一位を争うことができます。

一回生代表になれば、目立つ可能性も上がるからです。

「協力して下さいよ」

遠慮する。

さわらぬ神に祟りなし。

どちらの派閥にも参加していません。

忙しいからだよ、俺は。


こんな感じですからトーナメントの初戦の同年度クラス戦で敗退して、家に早く帰れてラッキーです。

しかも2日間の開催日程になると2日目が休みになります。

下兄がクエスト行こうと煩いですが、執筆に決まっているでしょう。

肉体強化で執筆速度が上がったと言っても1日で書ける量は決まっています。

マリアさんは遅れると煩いし、ノベラーばかりだと審議官の覚えが悪いので情報提供、歴史の論文を書かないと。

くそぉ、依頼発注が溜まっているんだよ。

すでに50市に一覧表が配られています。

ぽつぽつと依頼が舞い込んできます。

依頼しても届かないと言う噂は立てたくないのです。


月一回の学園パーティー。

こういう催しに慣れろという意味なんだね。

慣れました。

自然にフェイドアウト。おいしい料理を食べて満喫しています。

ダンスなんて踊っていられるか。

おぉ、珍しく伯爵が登場。

会場が騒いでいる。

えっ、えぇぇぇぇ~、俺の前で止まらないで、話しかけないで!

あいさつを交わすと伯爵は去ってゆく。

代わりに横の連れが残ってテラスに移動する。

キタぁ!

禁書依頼だ。

金貨10枚の大仕事で審議官に提出しない非公開のブラックノベル。

伯爵も男だね!

この国に禁書は魔法書以外ないので、実際は禁書じゃない。

一応、一覧表の最後の方に記載したけど誰かが依頼するとは思えなかった。この貴族様がこんなエッティー本を読んでいますと公開するようなものだからね。

まさか、直接依頼とは思わなかった。

口の堅い、身分が確かな者に届けさせろと言ってきたから文官さんの名前を上げた。

それでいいらしい。

文官さん、金貨1枚の副業だよ。

口止め料込み。

翌日、クラスの勢力図が変わった。

分家さん、俺に媚びても何もでないよ。


0の付く日はクエストです。

ベンさん、厄介なクエストを貰ってきました。

北と西は湖と川で隔たれているので渡し船を使う必要があります。

城壁市の西側には港があり、そこから向こう岸までの小舟を出してくれます。

北西にはよい薬草地帯がないので手を出していません。

北の山を越えると別天地らしく、変わった魔物や植物が生えているそうです。

でも、運搬は不便そうです。

川を渡らず、北東にある湖の周辺に近場の薬草地帯が便利ですね。

5の付く日は下兄や姉さん達もそこを利用しています。

薬草クエストの達成金は銅貨50枚と安いのですが、薬草の質で買い取り価格が変わってきます。

価格で比べると、

近場の薬草が手持ちの籠で銀貨1枚。

草原部を超えた当たりが銀貨5枚。

魔力溜まり周辺の薬草になると小金貨1枚。

日帰りで行けるぎりぎりの所にある大きな魔力溜まりの薬草は魔力をたっぷりと含んでおり、小金貨5枚で引き取ってくれます。

ですから下兄は自分らだけでも東の奥の森に行きたがるのです。

ギガウルフの群れとかに囲まれたらどうする気だ。

危なっかしいです。

東の森は奥に行くほど魔力溜まりが濃くなってゆき、東の山を越えた先は魔族が領土と定めている地域となるので要注意ですね。


話を戻します。

城壁市の北東には湖があり、湖から流れ出した川が城壁市の北から南西へと流れており、北側と西側には高い山が魔物進入を防いでくれているので、若手の冒険者が狩りによく利用しているのです。

東が森、西が高い山脈、北が山を越えて盆地、南は低い山々が折り重なった危険地帯なのです。

南側の山の高さは500mクラスであり、低い山々が折り重なって丘陵地帯を形成しています。山の向こうは東の魔物と比べものにならないくらいの凶暴な魔物が徘徊しているのです。しかし、山に結界が張られているので凶暴な魔物が通過してくることはありません。比較的に弱い魔物は網の隙間を抜け出て溢れてくるそうです。

どれほど危険かはよく判りません。

王国ではこの聖域を避けるように通行を往来しているのです。

つまり、我が城壁市は街道を東南から西南へと結ぶ中継地点となっているのです。

街道の安全は交通の要ですから、東の魔物討伐より南の魔物駆除の方が高い賞金が懸かる訳です。

余りにも冒険者が南側に偏るので、東側を中心に活動するベルさん達が重宝されている理由でもあります。

去年の実績で冒険者パーティ『黄昏の蜃気楼』はDランクからCランクに格上げされました。

ベルさんもCランク冒険者からBランク冒険者にランクアップです。

Bランク冒険者になると、ギルドから直接依頼が入るようになるのです。

それが厄介な話なのです。


暖かくなって北西の森で大型の魔物が徘徊するようになった。

しばらくしても落ち着かない。

ギルドの見解は北側の山を越えた所に原因があるのではないか?

山を越えた盆地の調査です。

西に比べて北の山が少し低く、一番低い所の谷間なら標高1000mくらいですか。

高いわ!

山を越えると広大な盆地が広がっているそうです。

イメージでいうなら四方を山に囲まれた奈良盆地ですね。

盆地には琵琶湖並の大きな湖が広がっており、この水が城壁市の北東から西南へと流れています。

魔物は山岳系の魔物が増えますが、強さはここと同じくらいなので衛星市を建設して領土を拡張することもできそうですね。

まぁ、そんなことはどうでもいい。

山道がシンドイです。

時々、川と合流しますが深い谷を形成しており、落ちたら死にますね。

3000m級の山脈に斜めに波状断層が起こり、そこに水が一気に流れて深い谷を作ったと思われます。

この先の盆地はすべて湖だったのでしょう。その大きさは東京都がすっぽり入るスケールです。その膨大な水が一気に流れたと想像して下さい。

1000mクラスの谷がこうして生まれたのです。

峠まで上がると城壁市が見えてきます。

反対側に大きな湖が広がり、緑と青のコントラストが何と言えません。

盆地の先は深い山脈が続いています。

400mほど降りると湖のたもとです。

そこから湿原地帯と森の狭間を通って北上するのです。

ベンさん達は北の調査ですが、俺達は薬草採取です。

この盆地にだけに存在する希少な果実(薬草)を取りにゆくのです。

百薬果実と呼ばれ、桃のような形状で食べると1年は寿命が延びると言われている高級果実です。

「「楽しみ」」

姉さんと姉友ちゃんが破顔して、今からヨダレを垂らしているくらいのおいしさだそうです。

合同パーティを組んでいるとき、よく魔法士さんと魔法の話をしています。

魔法士は魔道士から魔法を習ったらしく、魔道士クラスになると無数に魔法を放てるようになるそうです。

「子供が魔道士と同じというのが異常す」

「でも、名門の子供も凄いと聞きますよ」

「まぁ、そうす。魔法の名家は異常に高い魔力を持つ子供がよく生まれるす」

「そんなに凄いんですか?」

「そりゃ、最初から魔道士クラスすよ」

俺もそれに比べて異常ということでもないらしい。

魔法の才能は遺伝するのはめずらしいことではない。

賢者の世界もそうであった。

ただ、突然に現れた才能の方が爆発的な魔力量を持つことがあるのだ。

原因は不明。

賢者はまさにそうして誕生したのです。

俺の体は違うみたいです。

もっと魔力はあればね!

「何言ってす。魔力が桁違いでしょうす」

「あれ、ただのファイラーだから」

「ありえねいす」

そう、タダの炎だ。

毎回、『レールガンもどき』を撃つ訳にもいかないので工夫しました。

炎を直径9mmの弾丸のように圧縮して撃ち出しています。

庭に水をまくホースの先に散水ノズルを想像して下さい。

搾るとストレート。さらに捻ってゆくと、シャワー、散水、霧、流水と変わってゆきます。同じ原理で最大魔力を投じると炎が圧縮されて弾丸のようになり、魔力を弱めると炎に変わり、さらに弱めると暖房のような温風になり、魔力をほとんど抜くとたき火のような火が落ちる。

この温風状態に広域魔法を発動すると周囲200mくらいに拡散します。この魔法を火から風に変えると、そよ風の魔法『リインフォース』になる訳です。

火はただ拡散し、闇はへばり付きます。風は拡散して跳ね返ってくるのです。跳ね返ってくる感じで敵の位置と強さを何となく把握できるというのが『リインフォース』の原理なのです。

開発した当初は大変でした。

そよ風に攻撃されたと魔物が反発して、すべてが襲い掛かってきたのでモンスターパレードが発生するのです。今は敵意のない。より弱い風に改良して、ギガウルフみたいに用心深い魔物は戦略的撤退をしてくれるようになったという訳です。

最終的には敵に気付かれず、こちらは把握できるものにしたいですね。

「そんな簡単に魔術式を改造できるのが異常なんすよ」

「普通でしょう」

「異常す」

魔法士に魔法陣を見せると、余りにも幾何学的なので「何すか、これ?」と落書きのような評価を下します。

魔術士から貰った魔法の初心者本を完読したので、今は中級編を読んでいます。書かれている魔法陣は芸術のように美しい造形美で整えてあります。

こちらの世界の魔法陣は芸術です。

まぁ、普通は解読しないで使用するものなんですがね。

魔法士さんはファイラーとファイラーボールを組み込んだ杖を持ち。癒しの風と風の刃を組み込んだ指輪をしています。

ファイラーボールはこの『黄昏の蜃気楼』の最大火力です。

火力不足に悩んでいる?

「インフェルノ、教えましょうか」

「欲しす。あれ1発で全魔力を使うから駄目すよ。坊主はいいすね」

「魔道具がないので使えませんよ」

「は、は、は、お互い貧乏すね」

インフェルノは2層構造の魔法陣が使える魔道具を買う必要があるのです。

高いんですよ。

「いい話を教えてやるす。魔法石の中には、取り分け純度の高い魔法石があり、それを聖なる石、『聖石』と呼ぶす。こいつはイメージした魔法陣をその場で組み込んでくれるという奇跡の魔道具で、魔道士以上なら一度は手にしたと言われるす」

「それは凄いですね」

「魔法陣を書き込むのは一日仕事す。そいつを使えば、10分くらいで魔法陣が組み込めるす」

10分くらい?

魔法陣を書くのにそんなに掛かりませんよね。10層の魔法陣の1層のみ消すのは、意外と手間で1時間くらい掛かりますが、腰に付けている単体の小杖なら10分で新しい魔法陣を構築できます。

ともかく、いい話が聞けました。

魔法士さん、ファイラーの威力を上げる魔法に変える話の喰いつきが悪いです。姉友ちゃんは真剣に聞いてくれるので、もう少し詰めてみましょう。

「おい、周りがおかしい。注意しろ!」

警戒は怠っていませんよ。

むしろ、警戒するような感じがないので魔法士さんと話しています。

「この当たりは魔物が徘徊し易い地域だ」

確かに、水があり、森があり、魔力溜まりが近い。

魔力溜まりと言っても東のような強力な奴ではなりません。でも、魔力溜まりの周辺には魔物が徘徊するのが定番です。

「試します」

「おぉ、やってくれ!」

無暗に近づくより確認した方がいいと判断したようです。

『リインフォース』

風の索敵魔法で前方の確認です。

えっ、何これ?

魔物の数が1です。

やたらとデカイ魔力を帯びています。

「キュエェェェェ」

声か、叫びか、何か判らない音が耳に響き、がさっという音が前からしました。

次に木々の上に羽付きの魔物が目に入ったのです。

ワイバーン?

「グイベルだ」

ベンがそう叫びます。

何でもドラゴンの頭、コウモリの翼、一対のワシの脚を持つ黒い竜をワイバーンと呼び、イタチのような体にコウモリの翼を持つ黒いイタチをフェレットと呼び、そして、白い鱗に足がなく、コウモリのような翼を持つ蛇をグイベルと言うそうです。

このグイベルを白い竜と呼び、対に存在するのが赤い竜のペンドラゴンと言うらしい。ペンドラゴンはコウモリのような翼を持った紅い鱗に四足の蜥蜴だそうです。

どれも竜ではありません。

竜の派生であって竜ではありませんが、Aクラス冒険者も一パーティで挑むような生易しい魔物でもありません。

グキュエェェェェ、威嚇的な声を上げて近づいてきます。

当然、こんな奴は遠距離射撃だ。

『ファイラー、ファイラー、ファイラー』

かん、かん、かんと3発の火の弾丸が白い鱗に弾かれてしまいます。

意外と固い?

その攻撃に怒ったのか、再び大きな雄叫びを上げてすぐに襲って来るのかと思うと急上昇して距離を取ります。そして、加速して急降下してきます。

加速魔法を使った?

その瞬間、俺の脳裏にグイベルの狙いが読めます。

「散らばれ、頭を下げろ!」

ベンが大声で叫び、仲間達がそれに従います。

俺は仁王立ちしたままで手を突き出して迎え撃つ姿勢を取ります。

「無理だ。あいつに並の魔法は利かん」

側方に飛んで、身を低くしたベンさんが吠えます。

でしょうね。

防御壁×6×10、プラス、闇の防御壁×6×10。

その巨体に敬意を示し、普通は1枚展開の防御壁を上下・左右に3枚ずつ展開し、さらに10層を用意してあげましょう。

後ろの闇の魔法が本命ですが、できれば普通の盾で止まってくれると嬉しいです。

高高度から加速を付けて急降下し、速度は音速を超え、グイベルは翼を大きく広げて急降下から地上すれすれの低空飛行へ移行しようとします。

もし、その速度で超低空を通過したならソニックブーム(衝撃波)が草木を簡単になぎ倒され、爆音を風圧で俺達は吹き飛ばされて抵抗心と攻撃力のほとんどを失うでしょう。

最少で最大の効果、理屈を知っているのかは知りませんが、本能で知っているのでしょう。

ボアのように自重で気絶しやがれ!

ばり、ばり、ばり、ばり、ばり、ばり!

無属性の防御壁をあっさりとすべて砕いてしまします。

まぁ、そうですよね。

そこから舵を切って急上昇、水平飛行に移行する。

だが、その重力は重かろう。

「地面とキスでもしてやがれ!」

ぐががががががががががががあがががが、急激な超重力が下へと働き、グイベルが地面に頭から突き刺さり、地面を抉りながら直進し、俺達の前で停止した。

「ふん、さすがに地面を割る力はなかったか」

これで終わってくれればよかったのだが、蛇の体をぐねぐねと強請って頭を抜いた。

グキュエェェェェ!

怒ってる。怒ってる。

火を吐かれて堪らないので先制攻撃だ。

奥の手を準備しながら、牽制に広げた口にファイラー3発を放って置いた。

右手にパチンコ束を握りしめて発射体制もばっちりだ。

レールガン擬き、加速陣は瞬時に出せる最大の15陣、音速の20倍を超える散弾を浴びるがいい。

自嘲は少し解除だ。

が…………。

パチンコが放たれることはありません。

その巨体がゆっくりと横に倒れてゆくのです。

何が起こった?

そう、ファイラー3発は喉を突き破り、脳天を破壊していました。

鱗の強度に比べて、内部は軟だったみたいです。

「やったのか?」

ベンさんも疑問形です。

「「やった!」」

姉さんと姉友ちゃんが抱き付いてきます。

他のメンバーもお互いに抱き合っています。

みんな、死を覚悟していましたからね。

派生と言ってもドラゴンと対峙して助かったのです。

そりゃ、嬉しいに決まっています。

ラッキーでした。

しかし、ファイラーが利かない相手の対策も考えておく必要がありますね。

「坊主。何、難しい顔しているんだ。今更、怖くなったのか」

「いえ、少し楽に倒せないかと」

「化け物か、おまえは」

初歩魔法で小ドラゴンを倒したことが異常なのです。

それで満足しないから呆れられました。

こっちは自嘲を解除まで追い詰められたのですから考えますよ。

レールガン擬きで利かない場合は、魔装剣の一発勝負です。

それで魔力切れの上にネタ切れです。

もう少しバリエーションを持たないとヤバぃですね。


それはさて置き。

ここからが大変です。というか、大忙しかったのです。

巨体なグイベルを運ぶのは不可能です。

標高1000mはある峠越えですよ。

しかし、素材としては超一級品で手放すのは勿体ない。

早足でギルドに直帰です。

「緊急クエストだ」

「ベンさん、どうかしましたか」

「グイベルだ。グイベルだよ」

「わぁ、わぁ、わぁ、緊急クエストですね。マスター、討伐クエストです」

「違う。討伐はした」

「グイベルでしょう」

「言いたいことは判っている。今は黙っておけ、回収クエストだ。死体を向こうに残している」

「マスター」

受付のお姉さん、処理量を超えたのかギルドマスターさんに泣き付きます。

運ぶだけで金貨1枚のクエストです。Cクラス冒険者を中心に60名が解体道具を持って再出発します。

随行のギルド職員を伴って再び山越え、俺達も薬草採取クエストをキャンセルして、Eクラスの冒険パーティで唯一の回収クエストに参加させて貰います。

パーティごとに荷物を背負って、何度も往復するのです。

小ドラゴンは鱗、牙、肉、骨に至るまで余すことなく高級素材です。

血の一滴まで持ち帰ります。

ギルド職員も大張り切りです。

日が暮れると護衛クエストも追加され、さらに大所帯になってゆきます。

川を渡った所に仮置きのベースキャンプを作って、回収した素材を一時保管します。

分別された部位から船に積んで港に水揚げ、一度は小ドラゴンを見ようと見物客で溢れかえり、屋台なども出て大賑わいだったとか。

家に帰ったのは朝早くです。

これが所謂、朝帰りですか。

姉友ちゃんを家に送ってから汗と血の匂いを取ってベッドに入ります。

母さん、起こしてくれるかな?

起こしてくれました。

日課の薪割をして、朝食を食べて学校です。

「ちょっといいか!」

「まぁ」

男爵長男さんが声を掛けてきます。

「グイベルの回収クエストに行ったのは本当か?」

「はい、一応」

「ドラゴンを見たと」

「はい」

「鱗は触ったか」

「そりゃ、運ばないと仕事になりませんから」

「「「「「「「すげぇぇぇぇぇ!」」」」」」」

クラス中が声を上げます。

えっ、小ドラゴン、見るだけで尊敬。鱗に触ったら英雄。

何それ?

その日以降、男爵長男さん。妙に俺を持ち上げます。

ご意見なんか伺わないでいいよ。

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