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転生は普通のことだった!~3度目の人生、転生チートしてもそんなに巧くいくわけじゃないのよ~  作者: 牛一/冬星明
第一部.幼少チートで優雅な(?)ウハウハ編、どこがウハウハなのですか?
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11.4.ゴブリンスレイヤー(前篇)

我が家の食が一気に改善しました。

クエストで取って来たホーンラビットを解体し、焼肉に肉入りのシチューです。

特大のハンバーグも作りました。


ヒヤァ~ハァ~、山盛りのハンバーグだ!


お裾分けで肉を配ると、代わりに色々な具材を貰って食卓が彩りました。


下兄に毎日の如く、クエスト、クエストとせがまれます。

冒険を気にいったようですが行きませんよ。


「アル、クエストに行くわよ」

「姉さんも森は危険だって言っていたじゃない」

「私はお肉が食べたいのぉ」


兎一頭の肉の量など知れています。

3日目で肉がテーブルから消えたのです。

すると、翌日の朝に俺を起こしてそう宣言するのです。

昨日まで森に行くのは反対していたよね。


「いだだだぁぁぁ」

「アルもクエストに行きたいよね。行きたいのよね」

「耳が…………行きたい」

「よろしい」


暴力反対!


 ◇◇◇


そんな訳で3日に1度はクエストに連れ出される日々が始まったのです。

最初は順調でしたよ。

近くの森でも危険な魔物が多く、誰も薬草を取りに行かないから取り放題です。

熊系、犬系、猿系、猪系、鳥系の凶悪な魔物が襲ってきますが、ブラッディベアに比べれば、格が1つ下という感じで、俺の改良したファイラーにひれ伏します。


実践的な火の魔法『ファイラー』の炎を凝縮して、弾丸のように撃ち出すことで殺傷能力を上げて拳銃のように使っています。


魔法石に書ける魔法陣が10個と限定されますから中々に選別に苦労します。

必殺技の加速陣は必須です。

治療のヒールと毒消しのインバリッドも絶対です。


闇系は浮遊魔法に固定し、水と土は念の為に残し、光と風を消して、火の魔法『ファイラー』のオープションを増やす事にしたのです。


この魔法石は本当にチートですよ。


「お願いします」

「薬草二籠とホーラビット2頭と鹿1頭ですね。凄いわね」

「まだ、まだです」


この獲物は下兄と姉さんが倒した魔物達です。

俺が全部倒してもいいのですが、それでは下兄と姉さんの訓練にならないので、浮遊盾で防御して、止まった所を素早く回り込んで攻撃して貰います。

下兄と姉さんも手慣れたようで止めを刺すのが上手になりました。


浮遊盾と火の魔法で戦うスタイルは賢者を真似た訳です。


まぁ、賢者の場合は敵が強力だったので火の魔法は牽制くらいの役割だったようですが、浮遊盾で味方を守りながら、火の魔法で牽制して、味方が敵に止め刺すというやり方です。


一撃で仕留めず、足か、腕を封じて、下兄と姉さんの練習相手になって貰っているのです。


「この大物は私が倒したのよ」

「お嬢ちゃん、凄いわね」

「そうでしょう」


えへへへ!

しばらくは有頂天にさせておきましょう。

俺の身の安全の為です。


 ◇◇◇


下兄6歳、姉さん5歳、俺4歳の冒険パーティ『シスターズ』の活躍は、ある意味で下層のDクラスの冒険者仲間を活性化させてしまったのです。


「おぃ、この前、ブラッディベアの討伐部位を提出していた奴がいたぞ」

「部位が腐っていて、本当に討伐したのか疑われた奴だろう」

「それよりあの子供らを見たか」

「領主様が討伐軍を出したって話を聞いたことないぞ」


最近、この森で奇妙な事が起こっているのです。

どうみても実力の合わない魔物を討伐した冒険パーティがちらほらと現れ、その冒険者が揃えて口を閉ざすのです。


「おい、レッドタイガーを討伐したのはホントか」

「ホントすよ」


男はじゃんじゃん酒を飲ませて酔わせます。


「もう一度聞くが、レッドタイガーを討伐したのはホントか」

「そんな訳~ないでしょら。見つ~かっちゃら、即、逃亡れす」

「じゃあ、どうした」

「落ちぃてらに~きらってじゃらいれすか」


こうして、冒険者の中にちょっとした噂になっていたのです。

どこかの誰かが森の凶悪な魔物を人知れず、討伐している。


なぜ?


だれが?


ともかく、そのお相伴に預かろうと、Dクラスの冒険パーティが多く森に入るようになっていたのです。

こうして、誰も入らない森に冒険者が溢れ出したのです。


俺たちの薬草の取り放題、そんなおいしい毎日が続く訳もありません。


Dランクの冒険パーティが小物の魔物を討伐すると、小遣い稼ぎに薬草を採取して帰って行くのです。


「ア~ル、この薬草を取るのぉ?」

「姉さん、それは取らないで下さい。採り尽くすと薬草群が枯れてしまいます」

「じゃあ、どうするの?」

「もう少し奥に別の薬草群があります」


俺達は無傷の薬草群を探して、ドンドンと河の上流に昇っていったのです。


凶悪な魔物を退治しているのは、俺達だろうって!

そうですよ。

でも、6歳の下兄に200kg以上もする魔物を運べというが鬼がいました。


「もう~無理」

「だらしない。アル」

「無理だよ。運びなさい。無理だって」


流石に姉さんも最後は諦めてくれました。


でも、この前に倒した鹿の体重は168kgもありましたよ。

下兄ぃ、よくがんばったと思います。


姉さんがはじめて倒した大物だったので持って返ると言って、仕方なくがんばったのです。

下兄ぃ、冒険ギルドに着いた時は口を聞けないくらいにへばっていました。


ちょっと見直しましたよ。

ラダーボアーとか、軽く1トンはありますよ。

持って返るのは無理でしょう。


冒険者には魔物を倒すと討伐賞金と討伐ポイントと魔物素材の買い取り費の3つが手に入りますが、E・Fクラスの冒険者には討伐賞金と討伐ポイントが入らないのです。


不公平ですよね!


もちろん、それには理由があり、冒険者として未熟なE・Fクラスの冒険者が無理をして魔物討伐で死んでしまうのを防ぐ為です。


E・Fクラスの冒険者を生き残らせる知恵なのです。


俺達にとって倒しても1円のお金にならない魔物、持って帰ることもできない魔物は、道の邪魔にならないように浮遊魔法で道の脇に放置です。


何頭くらいが襲ってくるかと言えば、

1クエストに付き、10頭程度ですか?


3日に1度の割合でクエストに出掛けていますから、相当な数の凶悪な魔物が駆除されて、東の森が少しだけ安全になっていった訳ですね。


 ◇◇◇


それはブラッディベアの討伐部位を提出されて1ヶ月と少しくらい過ぎた頃です。


魔法用の薬草の群生が多くのDクラス冒険者に荒らされるようになったのです。


「アル、ここも駄目よ」

「ふざけていますね」

「全部、採っちゃ駄目だよね」

「全部と取ると枯れてしまって薬草の群生が再生するまで長い時間が掛かってしまうか、最悪、他の雑草が生えて、薬草が採れなくなります」


どこの馬鹿がこういうアホな事をするんでしょうか?

上流のあった8つの群生がすべて駄目になりました。


「アルの言う通り、クエスト依頼を後にして正解だったな」

「どうする?」

「今日は最上流の群生を調べに行きましょう」


俺は冒険ギルドによって採取クエストの依頼を受けてからクエストに行くのではなく、薬草を採取して冒険ギルドに戻ってから採取クエストの依頼を受けて、その場で提出する方法に変えたのです。


これなら採取クエストの失敗がギルド依頼の失敗になりません。


「あの断崖って登れるの?」

「登れますよ。でも、そんな無理をせずに丘を迂回すれば、簡単にいけます」

「そうなんだ」


姉さん、冒険ギルドの資料を読もうよ。


俺達の城壁市は東と西の山々がゆっくりと三角方向に引き裂かれてゆく地形で、ずっぽりと落ちた窪地なっています。そこに大量の水が流れて扇状地が生まれ、さらにもう一度落ちた所に城壁市が造られたのです。


町から大河の上流へ半日ほど歩くと10m位の断崖が立ちはだかります。

この断崖は左右に分かれて行くほど低くなり、その途中に丘になっている所が崩れて道になっているので、そこを迂回すると簡単に最上流部に行くことができるのです。


つまり、東に迂回すれば、簡単に最上流の薬草の群生に行けるのです。


【エクシティウムの周辺】

< i381942|28184>


 ◇◇◇


きゃあぁぁぁぁ!

丘に近づいた頃、悲鳴が聞こえたので俺達は急いで獣道を走ります。

そして、草木を越えた所で6匹の魔物に女性が襲われているのです。

慰み者にされようとする女性が悲鳴を上げています。


「いやぁ、止めて」

「誰か助けて」

「いやぁぁぁ」

「おねがい」


俺より先に姉さんが切れました。


うおおおおおぉぉぉぉぉぉ!


一瞬で沸騰した血液が急激に凍りつきます。


姉さん、無茶!


相手は小鬼と呼ばれるゴブリンです。

背丈は140cmくらいと小柄な魔物ですが、5歳の姉さんはゴブリンより小さい120cmの体です。


小さな姉がショートソードを振りまわしても巧く切れる訳もなりません。

姉さんも判っているようで、ゴブリンを背中から突き刺します。

姉さんの得意技で体全体を使った突貫突きです。

背後から不意打ちで一匹を仕留めますが、すぐ横のゴブリンが棍棒のようなモノで姉さんと叩きつきます。


させないよ。浮遊盾!


ガ~ン!


半不透明な盾に阻まれて理解できないのか、おそらく、ゴブリンの頭に(クエスチョンマーク)でも出ているのではないでしょうか?


その隙を姉さんは見逃しません。

剣を引き抜くと、その勢いの儘で体を捻って斜め切りです。


ずぼごぉ。


鈍い音がゴブリンの脇の肋骨でも砕いたのでしょうかね?

切ったというより殴った感じでヨロつかせます。


振り切った剣が中ほどで折れています。

もっと良い剣を買っておくべきでした。


姉さん、剣を捨てて回し蹴りでゴブリンの顎を横に弾き飛ばすのです。


スゲぇっ!


じゃなかった。

見とれてどうするんですか。

俺は馬鹿ぁ!


ファイラー、ファイラー、ファイラー、ファイラー!


ゴブリンの額に向けて、火の魔法『ファイラー』を放って葬ります。

何、姉さんに危ないことさせているんだよ。

俺ぇ!


があぉ、ごほほほぉ、ほぉ、ほぉ!


まだいるか!

見つけたゴブリンをファイラーを撃って沈黙させます。


ともかく、薬草の籠の下に引いている布を二人の女性に被せておきましょう。

姉さん、念入りに折れた剣でゴブリンの心臓をずごずごと刺して直しています。


「大丈夫ですか」

「…………」

「他に仲間はいませんか」

「…………」


助かった女性は何かまだ放心状態みたいですから言葉が出ないようです。


がさがさと辺りから俺達を取り囲む足音が聞こえ、姉さんも気づいたようです。

下兄は気づいていませんというか、それ所じゃないみたいです。


下兄ぃ、なにさっきから布の下を覗こうとしているんですか!


「下兄ぃ、その人をおんぶして! 姉さん、担いで、俺が足を持つ」

「どうして、やっつけることはできないの?」

「数が多すぎ」


パッと感じただけで20匹以上、3桁の敵がいたら詰んじゃいます。

無理はできません。


「戦略的撤退」

「せっってたい何?」

「逃げろってこと」


下兄が一人を背負って走り出すと、ゴブリンが姿を出します。


ファイラー、ファイラー、ファイラー!


3匹を倒して、姉さんを急かします。

姉さんが上を背負って俺が足を持って走っていますが、スピードがでません。


3匹を倒しても、すぐに増援がやってきます。

あっ、すでに横に回られています。

投石が鬱陶しいので、火系の魔法『ホット』を浴びせます。


ごおぉ~~~~うぉ~~~~ん!


火系の魔法『ホット』は大浴場の水を一気にお湯にするのに便利な広範囲系の火魔法です。

周囲の温度を300度近く上げる事ができます。


大量の水があるなら適当に水が温度を下げてくれますが、空間で使えば灼熱地獄です。

肌は焼け爛れ、空気を吸って肺まで大火傷の重症になりかねない危険な魔法です。

但し、一撃で倒す殺傷性が乏しい分のです。

まぁ、広範囲の20匹くらいのゴブリンを戦線離脱に追い込んでくれまたので、しばらくは後方は大丈夫でしょう。


否、倒れたゴブリンを踏み潰すように後続が続いてきます。


これだから魔物は嫌いなんだよ。


ファイラー、ファイラー、ファイラー!


横に回り込んでいるゴブリンも1体ずつ減らしながら逃げていますが、ちょっとヤバいかも?


魔力量がガンガンと減っていますよ。


ゴブリンって、ゴキブリの親戚ですか!


1匹見かけたら、1万匹いるとかなしですよ。

糞ぉ、ゴキブリ並の繁殖力を持っていますからね。

あいつらは。


そう言えば、ゴブリンとゴキブリは発音も似ていますね。


100体超えているみたいで、デッドラインを越えますよ。


ヤバぃ、ヤバぃ、ヤバぃ!


林の隙間に湖が見えた瞬間、ゴブリン達が追うのを諦めたみたいです。

縄張りでもあるのでしょうか?

それとも城壁市が近づいてきたからでしょうか?


いずれにしろ、助かりました。


門番の人に襲われていた女性二人を預けて、事情だけを話すと帰宅します。


 ◇◇◇


俺達の家は倉庫区をショートカットした方が近く、冒険ギルドに用事がなければ、中央区に寄る必要はありません。


「あのお姉さんら、大丈夫かな」

「とりあえずは大丈夫ですよ」

「でも、怯えていたぞ」

「間に合いましたから」

「でも」

「しゃべれるまで回復していたので問題ありません」

「そうか、ならいいんだ」


下兄ぃ、背負っていた感触を思い出しているのか、鼻が伸びていますね。

このまま、お近づきになりたかったのでしょうか。


「違うぞ、そんなことはないぞ」

「何も言ってませんよ」

「ほら、あれだ。他の仲間の事だ」

「そうね! 他の人は死んじゃったのかしら」

「たぶん、そうです。男はすぐに殺されます」

「いやらしい魔物ね」


Dクラスの冒険者にしては装備が良かったので、冒険者に憧れてなったタイプでしょう。

そういうタイプは仲間が惨たらしく殺されたのを見て冒険者を続けられなくなると言います。

あのお姉さんがそうなるとは限りませんが、一生モノの心の傷になるでしょう。


「ゴブリンって、最低ね」

「最低です」


ゴブリン(小鬼人)とか、コボルト(小犬人)とか、オーク(豚人)とか、〇〇人と付く魔物は純粋な魔物ではありません。


魔力溜まりから発生する純粋な魔物と違い、種族として繁栄します。


自ら増殖して増える厄介な魔物人と呼ぶべき存在なのです。


種の講釈はともかくです。

このままゴブリンを放置して置くと、増殖して森に行くのも危険になります。

群れているという事は、どこかに棲み家があるハズです。


賢者もゴブリンをよく討伐していたみたいで退治方法はいくつかありますが、今の魔力量なら方法は1つしかありません。


ふ、ふ、ふ、ゴブリン如き恐るに足らず。


「アル、ヤルわよ」

「もちろんです」

「おまえら、滅茶苦茶悪い顔しているぞ」


下兄が何か言っていますね。

空耳でしょう。

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