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転生は普通のことだった!~3度目の人生、転生チートしてもそんなに巧くいくわけじゃないのよ~  作者: 牛一/冬星明
第一部.幼少チートで優雅な(?)ウハウハ編、どこがウハウハなのですか?
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3.記憶というのは苦痛でした。(改)

魔術士が言った魂を記憶に刻む意味を理解していませんでした。

うっすらと眠りの中で俺は前世の夢を見ます。

2度目の前世の記憶が蘇ります。


父さんって、こんな顔だったんだ。

母さんが笑っている。

その笑顔を見るだけで幸せな気分になってきます。


母さんの顔を思い出す事もできなかった俺にとって、母さんの笑顔が不思議な感じがします。


「おい、こいつは天才だ。きっと凄い奴になるぞ」

「どうしましょう。家庭教師、それともスクールに通わせた方がいいのかしら」


忙しい日々を送る父も家に帰ってくると子供を可愛がってくれます。


過保護過ぎるな。


賢者は知識を披露することなく、ちょっと天才な子供を演じてます。


この2年間が幸せの絶頂期です。


そして、その日がやって来ました。

突然の電話、テレビのニュース、絶望的な報告が次々と流れます。


母さんがお酒を飲むようになったのは、この頃ですか?


嗜めると子供の俺を殴って払い退けます。


夜遊びが増え、悪い友達がやってくるようになります。


3ヶ月の歳月が過ぎて、弁護士が慌てて報告に来たのです。


「どうして、主人の物が全部、会社の物になっているのよ」

「申し訳ありません。しかし、契約上はそういう事になっており」

「なんとかしなさい。この役立たず」


ヒステリックに母が弁護士を責めたてますがどうにもなりません。

創業者全員の共同経営であり、父の会社は父だけのモノではないのです。

ソフトも特許もすべて会社名義で登録していたのが仇となりました。


同僚達も保身に走ったのです。


最大の技術者である父を失った会社は、その先行きが危ぶまれたのです。


そりゃ、そうでしょう。

今後、新しいソフトが開発されない。

契約中のソフトの納期の目途が立たない。

有能なスタッフほど辞職してゆく。


負の連鎖がはじまった企業を立て直す為に大手との合併を模索し、その資産のすべてを自分達だけで分配したのです。


不幸な事はさらに続きます。

父が借りていた借財という証文を持って取り立てがやってくるのです。

書類は確かに合っていますが、筆跡が母のモノです。


父が残した借金じゃなかったんですね。


「筆跡なんて、どうでもいいんだよ。書類は揃っているんだ」

「期限が来ていません」

「ガキの癖に何言いやがる」


弁護士が駆けつけて取りあえず、お帰り頂いた訳ですが、詐欺であっても書類が揃っているのは事実です。裁判は当事者である母が裁判官の心証を考える訳もなく、また、騙したと思われる友人を訴えないので勝てないでしょう。


1年以内に破産する事が決定した訳です。


賢者はまだ使える預金と元出に株式に乗り出します。

賢者が天才バイヤーとして讃えられた事は弁護士と税理士から聞いています。

それは凄い直観のバイヤーだったそうです。


でも、実情は違います。


賢者はコンピューターを完全にマスターしており、ハッキングで会社の内部情報を得ていたのです。


公表前の事実を事前に知っていれば、

そりゃ、外す訳がありません。


一度目の夢では流し見していて気が付きませんでした。


どこかで新しい契約が取れれば、買いを入れます。

不正が見つかれば、自らリークして売りを出します。

新しい開発に成功すれば、買いを入れます。

外交交渉で縺れたと情報を得れば、関連商品すべての売りを出します。


それでも借財すべてを完済するには至りません。


そこで賢者は大きな賭けに出たのです。


あらん限りの財力でニューヨークの原油先物で買いを入れます。

大方の予想通りに中東の緊張が緩み、大きく値を下げたのです。

誰もが声を潜めて嘲笑したでしょう。


しかし、緩んだハズの原油国同士がミサイルの誤射で、緊張が再勃発したのです。


誤射したミサイルは相手国のタンカーや石油精製所をピンポイントで破壊してます。

そして、報復と思われるミサイルがパイプラインら精製所を直撃します。


互いに誤射という罵倒を繰り返すばかり、互いに陰謀論を振りかざすのです。

一触触発の危機が訪れたのです。


原油は高騰し、こうして賢者は巨万の富を手に入れたのです。


どちらもハッキングして発射させたのは賢者です。

そりゃ、先物予想も当たりますよ。


かなり、ヤバい人ですね。


俺の前世の話だけど。


 ◇◇◇


巨万の富を手に入れた賢者の下に政界人や財界人がやってくるようになります。

名義は母ですが、誰が取引をしていたのかは明白です。

雑誌が母の夜遊びをスクープし、テレビが母を罵倒するのです。


「アンタの所為よ。アンタが、この化け物。アンタは誰、私の子供を返して」

「母さん」

「私に触れるな。私の子供をどこにやったの?」


殴る蹴るを繰り返し、預金の金をすべて引き出して母はどこかに居なくなりました。


完全に忘れていた事ですが、二度目になると心が締め付けられます。


 ◇◇◇


母が居なくなってから賢者は取引を一切しなくなりました。


学校にも行かず、パソコンに膨大な魔法知識を打ち込み始めたのです。

打ち込む速度が速すぎて、画面に文字が流れてゆきます。


もう覚えるとかいうスピードではありません。

流れる景色を見ているような気分です。


一体、何日が過ぎたのでしょう。


1ギカのハードディスクを埋め尽くす論文を書き上げると、『妄想ノート』(妄想の中二ノート)に「未来の俺へ」と書き示して、俺へのメッセージを残してくれたのです。


大学に通っている頃にそのノートを見つけて、幼い頃の俺は盛大な中二病を患っていたんだなと思ったモノでした。


 ◇◇◇


オカルト好きな彼女と出会ったのは大学教授室です。


未来の自分への論文を書き終えた賢者は、現代における魔法の可能性を探る為に様々なオーパーツを世界中から買い求めたのです。


そのオーパーツを持つ教授の一室で彼女と出会ったのです。


中学3年生だった彼女は魔法の可能性に目を輝かせて話を聞いてくれたのです。


オーパーツを軸にした魔法の発動実験に失敗しても、彼女は笑顔で微笑んでくれたのです。


「失敗はつきものよ。次に期待しましょう」

「そうですね」


彼女の笑顔が荒れた賢者の心を癒したのかもしれません。


そんな実験を繰り返す日々から記憶が段々とはっきりして、何を考えていたのかもはっきりと思い出せるようになってゆき、いつしか賢者の記憶が消えてしたのです。


彼女の表情が曇ってゆくのに気づくべきでした。


俺は彼女の慰めにやる気を取り戻し、彼女の為に彼女を喜ばす為に努力したのです。


そう、その頃の俺は魔法を再現するなんてどうでもよかったのです。


そして、破局を迎えるのです。


あそこで逃げた俺を、俺は許せない。

あの時の俺を殴ってやりたい。


 ◇◇◇


俺は中学にも行かず、家に引き篭もります。


家の中でインターネットを通じて、目に入ったモノを買い漁ったのです。

文学、歴史、研究本、古典、ビジネス本、心理学、経済学、果てはノベラーからゲーム本、漫画、エロ小説まですべても読み漁りました。

国内外を問わず、ジャンルなんて存在しません。

とにかく、読み更けたのです。

気が付くと中学を卒業して、あらゆる蔵書の中で埋もれていたのです。


それでも心が満たされず、目に入った大学のポスターを見て、大学の講義を聞こうと決めたのです。

大検を通って大学を受けて入学し、そこで面白い教授には会えました。


「足掻けばいいのです。気がすむまで足掻いてから考えましょう」


考えるより動けと言われ、

今度は映画にゲームに熱中し、

さらに柔道、剣道、柔術、登山にダイビングなどやり尽くしたのです。


大学を卒業すると、世界中の人に会ってみようと物産の商社に入社して世界中を駆け巡ります。


今、思えば、いろんな事件に巻き込まれました


手八丁口八丁の交渉術でよく生き残ったものです。


結局、何もなさずに42歳になったのです。

離婚の仲裁、詰まらない事件で命を落とし、そして、俺の人生は幕を閉じたのです。


 ◇◇◇


ぼんやりと目を開けた俺は急激な空腹感で声を上げます。


おぎゃ、おぎゃ、おぎゃ!


煩い、泣くな。

ホント、赤子の体はままならない。

ミルクを飲んで腹一杯になると眠くなる。

不便な体だ。


一生分の夢を見て、ちょっと感傷的になっているのかもしれません。


この時点で、本当に意味の地獄を知らなかったのです。


うっすらと眠くなる。


おそらく、レム催眠の間は体を休めているのでしょう。

寝ているので意識はできない。

そして、少し覚醒してノンレム睡眠に移行すると再び夢が始まるのです。


ちょっと待て!


 ◇◇◇


 ◇◇◇


 ◇◇◇


 ◇◇◇


ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!

(おぎゃ、おぎゃ、おぎゃ)


目が覚めると俺は発狂します。


好きな映画を2・3度と見る客はいるでしょう。


それを1日6回も見続け、翌日も、その翌日も、そのまた翌日も続くのです。


寝ている間も何となく考える事ができますが、夢から意識をそらしたり、飛ばしたりする事ができません。


3回も見たら飽きるぞ。

4回目から苦痛だよ。

100回は超えているよね。

まだ、続くのか。まだ、続くのか。


誰か、助けて!

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