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転生は普通のことだった!~3度目の人生、転生チートしてもそんなに巧くいくわけじゃないのよ~  作者: 牛一/冬星明
第一部.幼少チートで優雅な(?)ウハウハ編、どこがウハウハなのですか?
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2.世界の話を聞かされたってね。(改)

突然に退屈な日々が終わりを告げます。


赤ん坊の体は自分であって自分ではありません。

腹が減れば、勝手に泣く。

排便・排泄も思うようにならない。

俺はこの赤ん坊に取り付いている浮遊霊のような存在なのではないか。


“浮遊霊ですか、言い得て妙ですな”


誰だ?


“はじめまして、この世界の魔法使いです”


魔法?


“ご存じないですか? マハ○クマハ○タ □ンバラ□ン□ン□ン”


昔懐かしい、テレビの呪文?

何の冗談だ。

魔法使い■○ーじゃるまし。


“は、は、は、この冗談が通じるとは同郷ですな。これは嬉しい”


何が面白いんだ。


“いや、いや、先ほどの浮遊霊はいい例えです。魂というのは肉体に降りてきた浮遊霊のようなモノであり、体と調整されてはじめて1つになれると納得しただけです。同郷だけあって発想が豊かだ”


褒めているようには感じられませんが、頭の中で笑い飛ばしたのは俺の心に話し掛けてきた魔法使いということだけは理解できました。

ここ世界に魔法が存在するという事が判ったのです。


 ◇◇◇


魔法使いと名乗った男は……たぶん、男だと思います。

自らを魔術士と名乗ります。

彼は使った魔法は口の利けなくなった者と念話をするモノであり、心を触れ合わせることで言葉の壁を越え、異種族とも意志の疎通が可能になる魔法だそうです。


完全な翻訳機能がある魔法でなく、イメージを交換するモノに近いといいます。

まぁ、パントマイムで言いたい事を伝える行為を高め、色つきのアニメーションくらいの鮮明な大容量の情報を交換するようなモノだそうです?


俺にはイメージなど送られて来なかったよな?


“言葉が通じるなら、言葉を交わす方が楽なんだ”


なるほど。


彼は同郷らしく、それで日本語を介して会話ができるのか。


“おい、おい、考え事をするのは勝手だが、もう少し鮮明に考えてくれるか。浅く考えられると何を言っているのか、まったく伝わらん”


なるほど、すべてが開示される訳ではない。


“君は適応力が高そうだ”


そうでもない。

どうやら死んで異世界に転生したらしいと認識しただけさ。


“いや、いや、それだけ理解して頂ければ、仕事も捗る”


魔術士はこの世界の説明をしてくれた。


実に助かる。


神がいて、魔物がいて、魔族がいて、戦争しており、時代は中世に近い。

魔法があり、転生を理解しており、異世界の文化や知識を積極的に取り入れている。


“どうかしたかね”


転生者の存在を理解しているのは判った。

それなのに時代が中世というのが理解できない。

ハイテクは無理でも近代の蒸気機関までなら容易に発展できるだろう。


“うん、中々にいい質問だ。転生者から知識を得て、国全体を発展させて誰が利益を得る事になる”


そりゃ、国民だ。


“それは間違いだ。正解はその技術を独占している者だ。この国では王族に当たる。王族は他者より技術の優位性を保ちたい。ゆえに技術は存在して一般化されない”


王族が技術を独占しているから生活レベルが中世のままなのか。

民草は馬車を使っているが、王族は飛行船を持っていると言う。

アンバランスな世界だと判る。


“さぁ、雑談はこれくらいでいいだろう。そろそろ本題に入ろうか”


おい、おい、雑談だったのかよ。


 ◇◇◇


輪廻転生というのは誰もがしている。

この世界の神が言ってそうだから間違いない。


この世界にはリアルの神がいるらしい。


転生は人から人と繋がる訳ではないらしく、犬になったり、蚊になったりもするらしい。


人間に転生できて、ラッキー!


また、悪事を働くと犬畜生に成り下がり、善行を貯めると天国に行ける訳でもないらしい。


何でも魂には格式があり、人から虫に突然に転生することはない。

ゆっくり格式を上げて人になるモノもあれば、ゆっくり格式を失って犬畜生に落ちることもある。


この格式と言うのは、心の強さだそうだ。


また、異世界には人間と同等かそれ以上の知的な虫族などもいるので、格式が虫より人の方が高い訳でもない。


おぃ、知性的なゴキブリに生まれる事もあるのかよ。

絶対に変わりたくない。


転生すると前世の知識を持つ者が稀に生まれる。


“貴様のようにな”


稀なんですね。


“稀らしい”


それも神様から聞いた話ですか?


“そうだ”


前世の記憶とは魂に刻まれた記憶であり、本来は肉体と共有する。

死んで肉体を失うと記憶の維持ができなってゆく。


魂の保管場所を仮に天界と呼べば、天界に長くいる魂は綺麗に記憶が消えて逝く。

しかし、せっかちな魂はすぐに地上界に戻ってくる。


そう、それが俺のように前世の記憶を持っている稀なケースだ。


“この魂の記憶には保存する機能がない。ゆえに時間と共に消えてゆく”


そう言えば、何かの論文に前世の記憶を持つ子供は7歳か、8歳くらいで以前の記憶をすべて忘却すると書いていあったな。


“それは是非、教えて頂きたい”


そんなにはっきりと覚えてない。


“ふっ、そんなことはない。記憶の扉は開かないだけで意外と覚えているものだよ”


何をいい加減なことをいうのか。


“細かい事はいいだろう。この王国は君のその記憶にある知識を買いたいと言っている。もちろん、どれを売るかは君の自由だ”


悪いがそんな都合よく覚えていない。


“大丈夫だ。とある魔導師が開発して魔道具を使うと、魂の記憶を体に刻むことができる。それによって君は前世の記憶を自在に思い出すことができるようになる。”


魅力的な話です。しかし、巧い話には罠がありそうですね。


“もちろんある。メリットは技術者なら技能が用意に再取得でき、武術者なら新しい肉体がその技を使える親和が高まる。デメリットはその知識が有意義か、無意味か、そのを見極める為に君は成人するまで国の監視下に置かれる。そして、危険思想や危険分子と判断されれば、排除される事もある”


ハイリスク、ハイリターン?

確かに、独裁思想や暗殺者などは排除されそうだな。

一介の商社マンには関係ないか。


“商社マン! まぁ、君の意志は確認するが、君の親御さんの許可は貰っている。一も二もなく、親御さんは賛同してくれた。この家は貧しく、日々の生活も困っているので悪い話ではないと思うぞ。それに国の監視下に入ると言っても拘束される訳ではない。それより幼児期の食糧保障と15歳の成人まで月銀貨1枚が支給される。この家にとって大きな額だ”


俺の意志はなしですか?


“そんなことはない。君は強固に反対するならその処置は行われない。ただ、記憶の開示には協力して貰う。そして、わずかでも危険と思われれば、とある施設に10歳まで隔離されることになる”


記憶が無くなる日まで自由を拘束される訳か。

拒否した者は全員拘束されているんじゃないか?


“あくまで危険と思われた場合だ。詳しい事は俺も知らん”


記憶を刻んだ方が危険度は高いと考えないんですかね?


“受けた者は少なくとも王国に協力の意志があると判断される”


なるほど、判りました。

好きにして下さい。


 ◇◇◇


魔術士が交信を絶って、すぐに俺は新しい寝床を移された。

そして、体中に魔力が走ったのを感じたのです。

何故、それが魔力と判ったのか?

それは眠れる記憶としか思うしかありません。


俺の前世、岩木正文が母に捨てられたと言う記憶は曖昧なのです。

正文もまた転生者であり、賢者の記憶も持って生まれてきたのです。


どうして、俺が10歳前の記憶を覚えているのか?


それは賢者が残してくれた中二ノートを読んで知った事なのです。


さて、この魔道具でどうなるのか?


その時は、ちょっとワクワクしていたのです。


眠りに入ると夢を見ます。

まったく、覚えのない母と思われる顔、さわやかな子供を溺愛するだらしのない父が顔が映っています。

この二人が俺の母さんと父さん……言葉が出ませんでした。


父はAI関連の社長をやっており、相応の資産を保有していたようですが、移動中の飛行機事故で亡くなると、共同経営していた同僚にすべての財産を奪われたのです。


まぁ、家とか、銀行口座は残っていたので、当面の生活には困らない額が残っていたハズですが、様々な保証の請求や母の散財のおかげで家計は火の車になっていったのです。


その窮地を救ったのが賢者の記憶も持った俺です。


正文の前世は、とある魔法王国の賢者だったのです。


賢者は仲間と魔王を倒したまでは良かったのですが、死にぞこないの魔王が賢者を道連れに滅びたのです。

王都に帰ってウハウハな生活を夢見ていた賢者は、苦難の末に何も手にせず死んでしまったのです。


ドジな賢者もいたもんです。


生まれ変わった地球では魔法は一切使えず、賢者も随分と落胆したようですが、優しい母さんと父さんに囲まれて幸せな時間を過ごしていたのに世界は残酷です。


借金で破産しそうな家を賢者は株式や先物の相場で一財産を築きます。


賢者曰く、相場の変動は魔法式の解読より楽であったと『妄想の中二ノート』に残しています。


莫大な富を得た賢者の元には、株主である賢者の元に大企業の社長や大手の銀行頭取などが訪れ、また、錚々たる方々が様々な投資話を持って家に訪れるようになったのです。


3歳の子供に頭を下げて頼み込む姿が異常に映ったのでしょう。


「この化け物が」


賢者の記憶を持った俺の事を母は『化け物』と呼んでいました。


そして、持てるだけの金を持って家を出ていったのです。


母に捨てられた俺は狂っていたのでしょう。


魔法のない世界で魔法を再現することに熱中し、気が付くとオカルト好きの少女が正文の横に立っていたのです。


10歳以前の記憶は映像と会話しか思い出されませんが、10歳以降になると、その時の感情まで心の中に逆流するようです。


強いて言うなら、

10歳以前は映画でも見ている感じです。

10歳以降はバーチャルでゲームを操作している感じとでも申しましょうか。

感情まで伝わってくるのです。


賢者の記憶を失なった俺は彼女が魔法を見たいと言う願いを適える為に、日夜、一生懸命にかんばっていたのです。


俺は賢者から残してくれた『妄想の中二ノート』を頼りに、賢者が書き遺した1ギカのハードディスクを埋め尽くした論文を読み耽り、魔法を再現する可能性を探っていったのです。


もしかすると、彼女が好きだったのは賢者であって、俺ではなかったのかもしれません。

当時の俺はそんな事に気づく事もなく、彼女の夢を追い続けたのです。


小学6年に進級した頃、とあるデパートの一角で友人と遊ぶ彼女を見つけ、声を掛けようと近づいた所で彼女の本音を聞いたのです。


「今度はどこに行くの!」

「さぁ、知らない」

「エジプト、ギリシャ、イースタでモアイ像もあったね」

「いいな、いいな、羨ましい」

「私はロンドン行きたい」

「それいいね! ミステリーサークルを見に行きたとおねだりしたら」

「友達も一緒でいいですかって言ってよね」

「「「あは、あは、あは」」」

「ちょっと止めてよ。私はもう行きたくなんだから」

「えっ、オカルト好きなのに」

「もう、そんなのどうでもいいの。私は彼氏が欲しい」

「金持ちの彼、彼氏じゃないのぉ」

「私の趣味はショタじゃないっの!」

「「「あは、あは、あは」」」

「パトロンちゃん、可哀そう」

「お金持ちなんでしょう」

「捨てるのもったいない」

「私にちょうだい」

「「「あは、あは、あは」」」


その後も彼女達の罵詈雑言が続きます。

3年という歳月は、純粋なオカルト好きな少女を女性に替わるのに十分な時間だったのです。


もちろん、その悟りに域に達したのは40歳前です。


当時の俺は彼女に裏切られたショックで家に引き込りました。


若気の至りという奴ですね。


今となってはタダ懐かしい。


な~んて余裕ぶっていたのは最初だけです。

目が覚めて、再び俺が眠ると魔道具が作動し始めたのです。

誤字脱字の修正中。

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