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転生は普通のことだった!~3度目の人生、転生チートしてもそんなに巧くいくわけじゃないのよ~  作者: 牛一/冬星明
第一部.幼少チートで優雅な(?)ウハウハ編、どこがウハウハなのですか?
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1-29.折檻と駄目な大人(改正版)

助けて殺される。

いつもより早く帰って来た姉さんに見つかって折檻を受けています。

ほっぺたが千切れる。

もう、限界だ。


「ア~ル、お姉ちゃんと約束したでしょう。どうして守れないのぉ!」

「らいりょうぶとおもひぃた」(大丈夫と思った)

「私は家から出ちゃ駄目って言ったわよね。お外は危険なのよ」


俺は姉さんより危険なモノはないと思う。

俺は間違って城壁で爆発を起こした。

そして、慌てて逃げた。

林を抜けて来た俺はちょっと焦っていた。

不注意にも東通りにいた元ガキ大将の前に姿を現してしまったのだ。

元ガキ大将は姉さんに負けて地位を奪われ、顎が崩れた所為か、呂律も可笑しくなって、皆から避けられるようになっていた。

元子分らの子供は姉さんの傘下に入った。

でも、肝心の姉さんは俺にべったりなので子分を連れ回す事はない。

ソロで遊んでいる奴を見つけては元ガキ大将が乱暴を続けていると聞いていた。

元ガキ大将と目があった。


「ア~ルぅ、よぃ所で会ったな」

「こんにちは」

「いっも姉の後ろひ隠れる卑怯な奴らな~!」

「隠れているつもりはありません」

「まぁ、ひいわ。今日は気分がひい。金を出しぃな。それぇで許してやる」

「ある訳がないでしょう」

「しぁらばっくれるな。小銭ぉ稼いでひるのは知ってぃるんだ。それともひたい目に遭いたいか?」


油で小銭を稼いだのは母さんだ。

持って帰って来た油を安値で近所に分けていた。

ご近所付き合いと言うモノがあるらしい。

安い対価として、次の収穫期に子供を貸して貰える。

どう使おうか?

また、空き地から持って帰って来るのは野菜などの現物であって、お金に換えた事は一度もない。

勝手に売ると罰せられるらしい。

つまり、俺は一文無しだ。


「姉さんが帰って来る前に家に戻らないといけないので失礼します」

「こぉのまま逃がしと思うか?」

「俺に勝てるとでも思っているんですか?」

「あたひ前だ。おんらの尻に隠れる奴に負けるぅかよ」


簡単な魔法ならば、詠唱破棄が出来る。

今度は旋風(つむじかぜ)で済むと思うなよ。

丁度いい実験だ。

ちょっと吹き飛ばしてやる。

勢いを付けて腕を上げて殴り掛かろうとしている元ガキ大将に狙いを定める。


「ウィン『ア~ルを苛めるな!』・・・・・・・・・・・・ド。えっ!?』


一瞬、横線が流れたように姉さんが通り過ぎた。

俺が「ウィンド」と風の魔法を発動する前に、姉さんが道の角を曲がって、疾風のように超加速で元ガキ大将にドロップキックをかまして吹き飛ばした。

誰もいなくなった所に小さなトルネードが起り、元ガキ大将の歯が全部綺麗にぶっ飛んで、遙か彼方までボロ切れのように引き潰されていた。

スローモーションで見ないと何が起ったのか、まったく判らないような一瞬の出来事だった。


血まみれぐったりとする元ガキ大将を見て焦った。

これはヤバい。

死んでいないよな?

手を翳すと、念の為に光の魔法『回復(ヒール)』を三重にして飛ばした。


回復(ヒール)回復(ヒール)回復(ヒール)


息を整えた姉さんが髪を掻き上げて立ち上がると駆け寄ってきた。

俺の肩をがしっと掴む。


「ア~ル、大丈夫。痛い所はない。何もされなかった?」

「大丈夫です」

「ア~ルが大変な事になっていると思って、走って帰って来たのよ」

「何もありませんよ。本当に大丈夫です」

「ホント!?」

「本当です」

「嘘じゃないわね。ホントに心配だったのよ」


姉さんが目をうるうるさせて俺を心配してくれていた。

習い事が終わり、道に出ると虫の知らせと言うのか、俺の助けを呼ぶ声が聞こえたらしい。

そこから俺の名前を呼びながら全力疾走で帰って来たらしい。

時間から逆算すると、城壁を壊して焦った頃か?

それは無い。

聞こえたら逆に怖い。

安心した姉さんが俺のほっぺたを掴んだ。

優しい笑顔で目が笑っていない姉さん。

つまり、頭に角が生えた鬼のような姉さんだ。

ヤバい、逃げなきゃ。


「ア~ル。どうして家の外に出ているの?」


俺の虐待が始まった。

何を言っても聞いてくれません。

誰か助けて!


 ◇◇◇


あぁ、酷い目にあった。

ほっぺたが伸びて戻らないのかと思った。

夕食前まで俺への折檻は続いた。

今度はもっと巧くやろう。


太陽が山に近づいた所で姉さんが怒るのを止めてくれた。

二人で手を繋いで家に戻る。

居間の扉から親父が顔だけを出して外を見ていた。

姉さんが目を逸らす。

どうやら恥ずかしいようだ。


夕方前、この時間になると泥んこになった子供らが帰ってくる。

食事の準備の終わった奥さんが、その泥んこ子供を引き連れて井戸に集まってくる。

奥さん連中の時間だ。

つまり、この時間帯は井戸のある道が女性専用の道になる。

これが暗黙のルールらしい。


奥さんは井戸から水を掬うと頭から水を被せて子供を洗っている。

脱がせて服は桶の中だ。

洗い終わった子供から丸裸で家に帰される。

気分は風呂場だ。


おばさんの中には子供が終わると髪を洗い、服を脱いで身を清める人がいる。

そこに恥じらいなんて何処にもない。

ボン、キュウ、ボン。

豊かな胸、くびれのある腰、ズドンと膨らむ臀部(でんぶ)(尻)、母さんにはない色気の塊だ。

洗い終わると布で体を拭いて綺麗な服を着て帰って行く。

ある意味、男らに見せつけているのだ。

女同士の戦いでもある。

当然、覗いているのは(うち)親父(おやじ)だけではない。


「ア~ル、あんな大人になっちゃ駄目よ」

「はい、姉さん」

「もう、恥ずかしいな」


姉さんは担当官さんに教育を受けているので、貴族の知識が少し混ざっている。

貴族の女性は主人以外に肌を見せない。

下町は見せつける。

まったく逆だ。


そもそも貧乏な家では貴族のような透き通る絹の長袖の服は着られない。

姉さんもそこは諦めている。

因みに、母さんくらいの若い女性は家の中で水桶を使って体を拭いているので参戦していない。

そして、親父らが井戸を使う時間は日が暮れてからと決まっている。

親父らの行水を覗く、奥さん方は誰も居ないらしい。


「ア~ル、あっちから入りましょう」

「はい、姉さん」


今日は居間から入らず、玄関から戻った。

こういう日は母さんも不機嫌になって床を一緒にせずに子供部屋で寝るそうだ。

ざまぁみろ。

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