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転生は普通のことだった!~3度目の人生、転生チートしてもそんなに巧くいくわけじゃないのよ~  作者: 牛一/冬星明
第三部.児童チートで優雅な(?)陰謀編、なにもしないうちから恨み買っています。
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37.ときに現実は残酷に。

胸と言うか、頭というか、小さな拳がダンダンと叩き、頬を目一杯に膨らませて、俺を責める人がいます。


「ズルい、ズルい、ズルい、私だけ除け者とか、酷いじゃない」


学園の正面玄関に仁王立ちで待ち構え、見つけるとすばやく、俺の頬をひっぱって、その後は力ない拳で俺を連打しながら少し涙目で訴えています。


どうして小公女さんが知ったかと言えば、別に不思議はありません。


教会都市からの帰り道を自主的に護衛する従者と俺達の馬車を追って移動する信徒たちが列を為して付いて来た訳です。城壁町の借りている建物に帰れば、信徒が取り囲むのは必定です。

そこで無理を言って、学園都市に入れて貰い伯爵邸の屋敷にかくまった訳ですが、都市上層部に報告する為に姉さんらを連れて学園に訪れ、校長に会いに来ました。

今でも、人目でも見よう学園都市の周りに信者が徘徊し、学園に向かって祈りを奉げているそうです。


その数、ざっと10万人に膨れ上がっているそうです。


町の中はその噂で一杯です。


しかし、小公女さんは違います。

使徒になった見習い神官ちゃんとは知己があり、自分も当事者と思っていたのに、仲間外れにされて、女神の降臨・使徒の誕生という一大イベントを見逃した事に怒っているのです。


校長に昨日と一昨日の簡単な概略を話して事情を説明すると、小公女さんにもう一度、ほっぺたを引っ張られました。


何故か、姉さん、姉友ちゃん、見習い神官ちゃん、赤毛のお姉さんにも引っ張られましたよ。


その後は、矛先がお茶会のお姉さんに移ったのでよかったです。

一人だけ、すべてを聞かされていた事が問題だそうで、俺的には適材適所と思いますが、下手に口を挟むと怖いので黙っています。


「アル様、助けて下さい」


ごめんなさい。


 ◇◇◇


お茶会のお姉さんは行政府の企画課に用事があると言って逃げました。


ガルゼミの部屋に入ると、ガルさんとメイド服(薬)の教授が出迎えてくれます。

先輩や同期のアイリッシュ君を始め、俺の家臣扱いの同郷の先輩(学園では同期)達が勢ぞろいしています。


女神降臨と使徒誕生の話を聞こうと集まっていたようです。

そこに使徒本人が来たので大喜び、見習い神官ちゃんもアイドルのように扱われて有頂天だったりします。


「先生、ちょっと頼みたいんですが」

「何、何、おもしろいこと」

「おもしろいかもしれませんよ」


メイド服(薬)の教授の弟子の項目には3人の名前が上がっています。

俺、姉友ちゃん、見習い神官ちゃんです。


「じゃあ、アル君のお姉さんから行ってみようか」

「この盤に魔力を流せばいいのね。いきます。」


きゃぁぁぁぁぁ!

姉さん、20000マジックポイントを表示します。

俺が半年前に冬将軍を倒した当時の倍の魔力量です。

これで魔法士でないって、詐欺ですよね。


この世界には、スキルという隠れアイコンのようなモノが存在し、それが発動すると、基礎能力を5%だけ底上げしてくれるという特典が付いているのです。


まぁ、100の能力値を持っている人が、105に増えても実感はないでしょう。

しかし、10個のスキルが開花すれば、50%アップで150に増えます。

さらに、1つのスキルの周りに付帯スキルという派生スキルが10個ほど存在し、そのスキルがすべて開花すれば、500%アップで基礎能力が5倍の500まで上昇するのです。


運動音痴の魔法しか練習した事がなさそうなメイド服(薬)の教授が戦場で割と戦えるのも、魔法スキルの上昇に伴って、身体能力の基礎が上昇しているに他ならないのです。


姉さんは正にその逆です。

運動系のスキルが沢山開花して、魔法の基礎値を押し上げているのです。


魔力循環で肉体強化しかできない姉さんが、なんて魔力量を持っているんですか。


「ねぇ、あなた。魔法、覚える気ない」

「いいですよ。面倒臭い」


教授のスカウトを軽く躱し、宝の持ち腐れです。


姉さんはまぁいいんです。

あくまで確認の為にやらせただけです。


きゃぁぁぁぁぁ!

姉友ちゃん、102万マジックポイントです。

俺の倍以上ありました。

しく、しく、しく、心の涙を流して「おめでとう」と言って上げましょう。


「凄いわ。凄い、もう魔導士の領域に達している。学園に入りましょう。私が推薦状を書いてあげるわ」

「えっ、いいんですか?」

「私の弟子ですよ。何でもいいなさい」

「アル君と一緒に勉強できますか」

「OK、OK、権力を使っちゃうよ」


前座が終わり、真打登場です。

俺の知る限り、姉友ちゃんより、ちょっとだけ魔法量が多かったのが見習い神官ちゃんです。


「じゃあいくわよ」


あぁ~やっぱり。

確認してけど、その数字を目にすると落ち込みます。


「きゃあ、何に? この子、520万マジックポイントって、魔法師クラスよ。これが使徒効果って奴なの?」

「そうです。女神守護スキルは、基礎能力値は50%も引き上げる効果があり、一般に女神の加護と言われているモノですが、本当の女神の加護を受けると、基礎能力が500%も引き上げられます。特殊能力として、聖域がどこでも作成ができるようになります」

「聖域って、教会のアレ?」

「そうです。光の魔法が10%ほど威力の増すアレです」

「魔法の伸びも凄いし、女神の加護って凄いのね。お姉さん、追い抜かれた」

「ってことは、昨日までアンニちゃんも104万で、トモちゃんとも余り変わらなかった訳よね。アルテミス様の加護を貰っていれば、同じになれていたのに」

「それは駄目です。結婚できなくなります」

「はぁ、は、は、そんな事を言っていたね」


人が10年位の歳月を掛けて昇る階段を、一瞬で昇る女神の加護は凄まじいです。

見習い神官ちゃんは、たった1日で小公女さんを追い抜いた訳です。

これをきっかけに姉友ちゃんと見習い神官ちゃんのライバル関係にヒビが入らないといいですね。


「ちなみにあんたはいくつなの?」

「今、やりますよ」


ざっと、49万でした。

誤差、1万って所ですか。


「トモにも、アンにも負けているじゃない。何、やっているのぉ」

「俺の性じゃないですから」


氷の加護は氷に関する魔法に対して5倍の魔法効果が付与されます。

氷に関しては、この5倍の魔力量があると考えて問題ないですけど、やっぱり微妙にショックです。

しかも、ここからしばらくはドンドンと差が付くだけという現実が待っています。


このスキルには10段階ほどレベルがあり、熟練度によってレベルが上がってゆきます。

姉さん、姉友ちゃん、見習い神官ちゃん達はしばらく成長著しい時期が続きます。


じっっっっ~~と、小公女さんが俺を見つめ続けます。


「いいな、いいな、いいな、私だけ、除け者だね」


俺は溜息を付くと諦める事にします。

すぐに教えませんが、基礎段階を姉友ちゃんに教えさせましょう。


「トモちゃん、王女さまに……」

「ソフィーアか、ソフィー!」


小公女さんが俺の言葉に遮ります。


「トモちゃん、王女さまに……」

「ソフィーアか、ソフィー!」


「トモちゃん、王女さまに……」

「ソフィーアか、ソフィー!」



「トモちゃん、ソフィーアに……」

「うん」

「魔力循環と魔力コントロールを教えて上げて」

「えっ、アル君が教えてくれないの?」

「誰が教えても一緒です。基礎ができたら、本格的に教えます」


メイド服(薬)の教授が目をキラキラさせて、俺を見ています。


「先生には教えませんよ」

「えっ、どうして?」

「教えたら、発表しちゃうでしょう」

「しないからさ」

「駄目です。自分で改良して下さい」

「もう、いくつか作ったわ」

「見ていいですか?」

「等価交換」

「今、魔力循環と魔力コントロールが肝だって知りましたよね」

「ケチぃ」

「おつりが来るくらいですよ」


なんと、流石、魔法師です。

メイド服(薬)の教授がスプリンクラーや薬の調合に使う為に真空窯や高圧窯を開発していました。

一から作るより、基本となる魔法式があると楽です。


貰うだけでは悪いので、風系の魔法から電気を作り、マイクロ波を交互に発生させて加熱する『電子レンジ』の魔法の術式を返しておきます。


メイド服(薬)の教授なら魔法陣と詠唱は自分で作れそうですしね。


 ◇◇◇


屋敷に帰ると、小公女さんが屋敷の前で待っています。

小公女さんの馬車には荷物が幾つも乗せてあります。

大きな荷物は後で運ばせるとか言っています。


「部屋がないなら、アル君のベッドで一緒に寝ましょう」

「それなら私の部屋を貸してあげる。私がアルと寝るから」

「ずる~い」

「姉だからいいのぉ」


すみません。

王女様に部屋を用意して下さい。

姉さんも、もう出てゆく気ないよね。

たぶん。

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