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転生は普通のことだった!~3度目の人生、転生チートしてもそんなに巧くいくわけじゃないのよ~  作者: 牛一/冬星明
第三部.児童チートで優雅な(?)陰謀編、なにもしないうちから恨み買っています。
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35.教皇の悪あがき。

空から現れるなんて大失態を犯した俺は、教皇に様々な主導権を譲ってしまった訳です。

教皇は難癖を付けて俺達の入場を拒み、見習い神官ちゃんのみを人質に取る方法もあった訳です。


しかし、突然に現れた俺にびっくりした教皇に仕える神官達は教皇に知らせる以外の対策を取らなかったので、すんなりと大神殿に通してくれた訳です。


広場であれだけ痴話喧嘩で時間を潰したと言うのに、こっちの失態以上に向こうが慌ててくれたのです。


ラッキーとしか言えません。


 ◇◇◇


教会都市の大神殿はデカいです。


祭壇前の赤絨毯も30人ほどが行進できるほどの余裕があり、7人で横一列に並び間隔をあけて、ゆっくり歩くのがカッコ良さげですね。


やりませんよ。


やったらカッコいいな~と思っただけです。


正面両脇と左右の壁沿いに300人近い武装神官が待機しており、どのレベルが判りませんが、その雰囲気から最下層の魔法士という訳ではないようです。


神官服を着ているだけで、武装従者と思った方がいいようです。


「割と強そうね」

「割とじゃないよ。アーネちゃん」

「トモは怖がり過ぎよ。絶対にあんたより弱いから」

「たぶん、違う」

「トモもアーネも私が守って上げるから安心しなさい」


姉さんと見習い神官ちゃんの強気はどこから来るんでしょう。

姉友ちゃんは初めての時には、いつも自信なさげです。


「すみません。私達が付いて来たのは失敗だったかもしれません」

「完全に足手まといだね」

「馬車に残っていても危険なことは変わりません。俺が守りますから気にしないで下さい」

「対人戦は任せて」


お茶会や赤毛のお姉さんより、黒猫の方が別の意味で危ない人です。


何となく、姉さんと黒猫が暴れると、大神殿が血の海に変わるような気がするのは気のせいでしょうか?


 ◇◇◇


俺はそのとき相手の力量を気にしていたのですが、相手が自分をどう思っているのかなど思いも寄らないものです。


S級の魔物を単独で討伐したと噂される英雄とその一同です。


しかも姉友ちゃんと見習い神官ちゃんは、「寝ていても魔力が漏れる感じなの」と俺のなんちゃって成長期などではなく、本当の成長期を迎えています。1年くらいは習得に苦労すると思っていた中級魔法を3ヶ月でマスターしたのも、この成長期の産物なのかもしれません。このダダ漏れの魔力を見れば、幼い二人が魔導士から魔法師クラスの魔法使いである事は用意に想像できます。


つまり、化け物が三匹も大神殿に入ってきたのです。


武装神官達は肝を冷やしながら、自らの役割をまっとうする為に教皇を守らねばならないと特性の杖に力が入っていたのです。


それが殺気となって、俺達に注目が集まっていたなんて思っていなかったのです。


殺気だっているのは、教皇から何か命令されて、その隙を窺っていると思うでしょう。


普通はね。


 ◇◇◇


祭壇の下に付くと俺達は足を止めます。

普通の大神殿の祭壇は1段だけ高くなっていますが、この大神殿では20段の段差の上に祭壇が設けられており、自然と教皇は俺達を見下げるようになっているのです。


「お呼びにより来てやったわよ。何の用事?」


見習い神官ちゃん、見事な先制攻撃です。

まさか、そんなぶっきらぼうな言葉が出てくるとは思わず、完全に意表を突かれたようです。


「無礼者、教皇の御前であるぞ」

「ねぇ、教皇って、そんなに偉いのぉ?」


見習い神官ちゃんの素朴な疑問です。


「それぁ、私も思っていた。大司教様の方か偉そうに見えるよね」


うん、うん、姉さんの意見に激しく同意の姉友ちゃんが頷いています。

俺とお茶会・赤毛のお姉さんらは目が点になって反応できていません。

教皇も唖然として、しばらく動けないという感じです。


「偉いに決まっておろう」

「どこが偉いのぉ? みんな、神に仕える神官でしょう」

「神官を束ねるのが教皇である」

「でも、私達は神に仕えている訳で、教皇に仕えている訳じゃないよね」


おぉ、見習い神官ちゃん、良い事いいます。


横にいる見習い神官ちゃんと話しているのが総大司教ですが、俺は服の違いがよく判りません。

偉い人なんだろうなぁ~って程度です。

しかし、二人のエンドレスな会話を聞いていてもしかたありません。


「教皇様、俺を狙うのを止めて貰えませんか? それと、こいつを破門にするとか脅すのも止めて貰えませんか? もちろん、教皇様が望む。皇太子様に肩入れしないという要求は飲ませて貰います。皇太子様が力を付けるのが嫌なんでしょう。俺は皇太子様に力を貸しません。それでどうですか?」


これをあっさりと呑むとは思いませんが、ここまで来たなら回り諄い事をしても仕方ありません。


呆れていた顔から生気を取り戻し、立派な太った悪人顔を作ります。


「貴様はすでに神に弓を引いた罪人である」

「その罪人ですが、どうしてここに来られたかを聞かないでいいんですか」

「教皇様の話に口を挟むな」

「ステイク次期領主・現領主様は誤解であったと納得して頂けましたよ。その使者は今晩中、遅くとも明日の朝には到着するでしょう。俺と争っていても、教会の被害が大きくなるばかりで得な事はありませんよ」

「黙れ! 教皇様のお話を聞かんか!」


横の男はかなり短絡的で直情な性格らしく、その分、判断に迷いがありません。

一方、教皇は思考を深く巡らすようであり、俺がここに来た事に疑問を抱いているのでしょう。


俺が密かに城壁市ステイクに向かった事を知り、小公女さんの行動も把握してから対応している事から、かなり精密な情報網を引いているに違いありません。


ならば、俺が今朝まで城壁市ステイクにおり、城壁市ステイクの南西に向かった所まで把握しているハズです。


おっと、大神殿に神官が慌てて入って来て、何かの紙を横の男に渡します。

その紙を見た男は、狼狽するように教皇にその紙を渡すのです。


それを見た教皇が紙をぐしゃりと潰すのです。

そして、俺の顔を睨み付けて、怒りを露わにしています。

どうやら、思っていたより早くに連絡が入ったようです。


あっ、この世界には魔法通信という便利なモノがありましたね。

この魔法通信は一方方向にしか送信ができません。

受信できるのは、魔法省の特殊な装置のみです。

おそらく、教会もそれを利用しており、送ってくる文章は暗号を使っているに違いありません。


王都から教会都市に30分、暗号解読に30分でしょうか。


そう考えると、辻褄が合うでしょう。


「この、悪魔め」


しぼり出すように教皇が唸ります。


 ◇◇◇


教皇の怒りが頂点に達したのか、軽く手を間に出します。


「この者は悪魔である。王都にいるはず王子をステイク領に偽物を召喚した。そして、何よりの証拠が、ステイク領にいるはずの者がここに存在している。この者は人を惑わす悪魔である。天罰を与えよ」


がしゃん!


300人の武装神官が特殊な霊装を施し十字槍風の杖を俺達の方に向けます。


「へぇ、私達をやるつもり! 受けて立つわよ」


姉さんがそう言うと手を組んで戦意を上げます。


きゃぁ、何ですか?

○○ボールじゃあるまし、毛が逆立っていませんけど闘気が突然に溢れ出します。

これって、完全に気をコントロールできるようになったって事ですか。


武装神官が慌てていますよ。


こっちは俺、姉友、見習い神官ちゃんと魔法士が三人です。

魔法士の唯一の弱点が詠唱時間です。

つまり、魔法を使わせなければ何とかなる。

そんな淡い想いを断ち切る存在が突然に現れたのです。


そう、普通の女の子と思っていたら超一流の剣士だったってオチですよ。


姉さんが強く見えると、それよりちょっと年長で背丈のある赤毛のお姉さんも強そうに見えてくるから不思議です。


「みなさん、私の得意魔法を教えておきましょう」


ダダダダダッダ!


アイススピアーが武装神官の足元で突き刺さります。


「私の得意技は、超高速詠唱の平行詠唱が得意です。100人くらいまでなら、一瞬で倒す自信があります」

「じゃぁ、私も100人を相手するわ」

「私も50人くらいなら何とかなります」

「残りは私が相手して上げる」


姉さんが軽く素振りをし、姉友ちゃんもアイススピアーを連続で足元に出現させ、見習い神官ちゃんも光の矢を連続で放ちます。


魔法使い全員が超高速詠唱持ちという印象が植えつけられたのです。


本当は無詠唱だけどね。


これで武装神官の指揮者も迂闊に攻撃命令を出せないようになりました。


「教皇様、和解をする気になってきましたか」


「私を脅しているつもりか」


「滅相もありません。教皇様を脅すなど、そんな恐れ多い事ができますか。教皇様のお慈悲に縋り付いているのです。どうか、この憐れな子羊をお許し下さい」


誰が見ても立派な脅しです。

負ける気はしませんが、立派な霊装を身に纏っている武装神官を無傷で無効化できる自信はありません。

でも、必要というならやりますよ。


俺は教皇を睨み付け、教皇も俺を睨んでいます。


俺と教皇が止めた事で武装神官も止まったままで睨み合いを見守ります。

じりじりとした緊張感で大神殿が凍り付き、時間だけがゆっくりと流れるのです。

姉さん、痺れを切らさないで下さいよ。


 ◇◇◇


ばたん!

大神殿の正面玄関が開かれ、一人の男が入ってきたのです。


「双方、杖を下げよ」


その男の声で武装神官が杖を元に位置に戻すのです。

かつ、かつ、かつ、甲高い靴の音を鳴らして近づき、お茶会のお姉さんの横で一度足を止めます。


「遅くなり申し訳ありません。そして、連絡を頂き、ありがとうございます」

「いいえ、来て頂いた事を心より感謝いたします」


男が頭を下げ、お茶会のお姉さんも頭を下げます。


「枢機卿、一体どういうつもりだ」

「教皇様、それはこちらがお伺いする事です」


おぉ、枢機卿と言えば、教会のNo.2です。

さすがお茶会のお姉さんです。

こんな隠し玉を持っていたんですね。


「この者は悪魔である事が判明した。ゆえに処罰すると決めた」

「ならば、国王の面前で審議いたしましょう」

「悪魔を断罪するのに、何故、国王の命を待たねばならぬ」

「この者は学園の生徒、国王の臣下で御座います。国王の臣下を妄りに誅殺するなど許されません」

「ふ、ふ、ふ、ならば。神の意志に従おう」

「お聞き頂けて感謝いたします」


違和感?

あの目が諦めた目か、緩んだ頬に白い歯が見えて、手をゆっくりと降ろすと、横にいた男が何かの紐を引いたのです。


がたん、ぶしゅ~ぅ!

四方の壁の一部が開き、瞬間的に4本の何かが飛び出したのに気が付きます。

そして、最大まで上げている肉体強化の目がその物体を捉えます。


先が二つに割れた独特なフォルム、聖槍(せいそう)と呼ばれた『ロンギヌスの槍』にそっくりの槍が四方から迫ってくるのです。


聖槍が4本もあるハズもなく、おそらくはレプリカです。

レプリカですが、禍々しい力はただの槍ではありません。


浮遊盾、浮遊盾、浮遊盾、浮遊盾、闇の盾、浮遊盾、浮遊盾、浮遊盾、浮遊盾、闇の盾、浮遊盾、浮遊盾、浮遊盾、浮遊盾、闇の盾、浮遊盾、浮遊盾、浮遊盾、浮遊盾、闇の盾、浮遊盾、浮遊盾、浮遊盾、浮遊盾、闇の盾、浮遊盾、浮遊盾、浮遊盾、浮遊盾、闇の盾、浮遊盾、浮遊盾、浮遊盾、浮遊盾、闇の盾、浮遊盾、浮遊盾、浮遊盾、浮遊盾!


時間の余す限り、浮遊盾を出現させます。

止めるなんて絶対無理です。

おそらく、無理です。

正面ではなく、斜傾に配置して角度を1度でもズラす。

闇の盾を出すのは、少しでも減速が掛かればという祈りです。


パリ、パリ、パリ、パリン!


浮遊盾が無常に砕かれ、闇の盾は触れた瞬間に霧散され、俺の抵抗をあざ笑うかのように進んで目の前まで進んできたのです。


糞ぉ、駄目か、南無三!


ピシャーン。


人は死を感じる瞬間、時間が止まって見えるといいますが、正にそんな感じです。


俺の目の前でロンギヌスの槍が止まったように感じるのです。


「止まったようではなく、止めた」


???


声なき声が頭に響きます。


「だから、止めたと言った」


目の前に銀髪の美少女がふわりと現れたのです。

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