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転生は普通のことだった!~3度目の人生、転生チートしてもそんなに巧くいくわけじゃないのよ~  作者: 牛一/冬星明
第三部.児童チートで優雅な(?)陰謀編、なにもしないうちから恨み買っています。
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30.銀貨3枚の情報戦。

とある組織のおっさんは銀髪のカツラを被り、口元まで隠れるセーターのような厚手の服に厳ついローブを身に纏うと、かなりどっしりとした体格に見間違えます。さらに、目を隠すバイザーを装着すると、細見のおっさんとは思えません。


裏戸から裏道を通って広場に戻ると夜食を買って待っていた紅蓮さんと合流して、黒い馬車に乗り込みます。そして、黒い馬車は暗闇に消えてゆくのです。


この馬車を操る御者は夜目が相当利くのでしょう。


新月の夜でも自分の足で走るなら怖いという感覚を覚えませんが、俺なら暗闇の中を最高速で馬車を走らせるのは躊躇います。


到着は明日の昼前と言っています


 ◇◇◇


対向する馬車がすれ違う音で目を覚まします。

と言っても、馬車休憩に止まる度に目を覚ましていますから熟睡と言うより仮眠です。


日が明けてからの方が対向する馬車が多くなったのか、それを避ける為に速度が落ちているような気がします。細かい事は気にせず、俺は紅蓮さんが買ってくれた弁当を朝食代わりに取り、紅蓮さんらは昨日の串のおみあげを朝食代わりに食べています。


「紅茶ですがいいですか」

「相変わらず、便利な人ですね」

「空の水筒にお湯を注いで、茶葉を入れて、待つこと3分でできる簡易ティーです」

「普通、馬車の中でお湯はできませんよ」

「休憩の時に水筒は洗っているから清潔ですよ」

「…………」

「まぁ、まぁ、王子。彼はこれが普通だから」

「まぁ、いいでしょう。頂きます」


怒っていると言うより、呆れている感じです。


俺の基本は身を守る魔法と生活が便利になる魔法なんですよね。


 ◇◇◇


あぁ~、尻が痛い。

夜通しで馬車なんて乗るものじゃありません。

その苦労もあって、自称天才ライバルを名乗るアッキ・アディ・ステイクの本拠地である城壁市ステイクに到着したのであります。


降りた場所は敵の本拠地であるステイク領主の邸宅前です。

門前で黒い馬車を止めたので、門を守る衛兵がこちらの様子を窺っています。

馬車から降りているのは、俺と紅蓮さんのみです。


「私はアルゴ学園で魔法教官をやっているローサ・ファン・セレストと申します。こちらはアルフィン・パウパーという者です。同じ学園のアッキ・アディ・ステイクと行き違いがあり、ステイク家との誤解を解く為に罷り越しました。突然に訪問に驚かれるやもしれませんが、事は王国と教会に関係する重大案件ゆえに、至急、侯爵様と面会をお願いします」

「お願いします」

「侯爵様は会見の御予定のない方とは面会なさいません」


衛兵が定例句の返答を返します。

もちろん、想定済みです。

「その事は存じ上げている」

「ならば、手続きを踏まれよ」

「事は王家に関わる重要案件です。伏してお願い致します。一度、確認をお取り下さい」

「判りました。しばらく、お待ち下さい」


衛兵の一人が屋敷の中に確認に走ります。

侯爵に辿り着くには、何人かの過程を踏みます。

衛兵は隊長に、隊長は事務長に、事務長が家令に、家令が最終判断を下して、侯爵に取り次ぐかを決めます。

意外と早かったので事務長当たりでしょう。


俺達は礼をして、侯爵邸を後にします。


 ◇◇◇


次に向かうのが行政府です。


もし、この領内にある貴族に当てあるなら貴族邸に向かう方が時間短縮に繋がります。

領内の貴族なら先触れを出せば、その要件に応じて、面会の時間が設定されます。

爵位の高い貴族なら1時間くらいで面会できるハズです。


そんな当てもありません。


俺は基本的に平民なのです。


紅蓮さんがアルゴ学園の教員なので男爵並の対応を見せてくれました。


「確かに面会希望の書類は受け取りました。明日の昼以降にご確認に来て下さい」

「もう少し早くなりませんか」

「申し訳ございません。伯爵以上でない方は規定のルールに乗っ取って面会の手続きをさせて頂きます」


行政府から言わせれば、「領内の貴族を頼りなさいよ」と言いたい所でしょう。

面接希望の書類は侯爵邸に届けられますが、日程が合わないという理由で断られる事がほとんどです。


本当に稀なのです。


それでも行政府に足繁く通えば、領内の貴族を紹介してくれるようになり、晴れて侯爵様と面会できるようになるのです。


 ◇◇◇


行政府の次は、教会に足を向けます。


当然ですが、大司教に会える訳もありません。

大聖堂の脇には小さな教会が併設されており、そこにいる神官にお願いして、大司教様、あるいは、侯爵様と面会できるようにお願いする訳です。


受付にいる神官に事情を話し、寄付金で金貨10枚の入った袋を渡すと、平静を保ちながら、足取りが早く、とり乱しているのがアリアリと判ります。


俺と紅蓮さんは待合室に通されて、司教様が姿を現します。

普通は助祭が出てくる所ですが、教皇様とのイザコザとなると、司祭を飛び越して司教様が出てくるも頷けます。


「大司教様は御多忙に付き、わたくしが承らせて貰います」

「よろしく、お願いいたします」


俺はすべて誤解であり、教皇に対して無害アピールをしておきます。

取り持って頂けるなら多額の寄付金を上納する事も露骨に言い、俺が困り果てて縋り付いて来たように振る舞います。


本当に金で方が付くなら、それはそれでありです。


この国で一番の金持ちは王族であり、金に汚い奴が王族に対抗できる訳もなく、定期的な寄付で命が助かるなら安いモノです。


 ◇◇◇


一番高い宿で連絡を待つと言った訳ですから、一番高そうな宿で部屋を取ります。

俺と紅蓮さんは食堂で食事を取りますが、王子とおっさんは従者として、交代で簡素な食事をして護衛を続けています。


この町に入ってから王子もおっさんと同じバイザーを付けて、ストールを首に巻いて口元を共に隠しており、珍しい親子連れの護衛がかえって目立っているような気がします。


食事を終えてもすぐに帰ろうとせず、飲み屋に場所を移して、カウンターに腰かけて、マスター相手に金で身元を引き受けてくれる貴族がいないかを聞いて時間を潰すのです。


「ステイク侯爵は厳格な方だから、そういう貴族を毛嫌いする傾向が強いのぉ」

「そうですか。でも、逆に正義感の強い貴族はどなたですか」

「そうさのぉ」


チップも弾んでいるので軽快に舌を動かしてくれます。

正義感の強い貴族の強い貴族様が突然に訪れた来訪者に気を許す訳もなく、責めるならその友人と交友関係を聞き込んで時間を潰します。


十分に時間を潰した後に、他に詳しい酒場のマスターはいないかと聞いて、酒場を変えてマスターから同じように貴族を紹介してくれる人を探します。


「とりあえず、3人が候補ですか」

「明日は爵位の一番高い子爵様から当たりましょう」

「では、この後に服屋の店長を訪ねて繋ぎを頼みましょう」

「そうするのがいいだろう。服屋の嫁は子爵家の娘さんだ。世話焼きで親身になって話を聞いてくれるだろう」

「ありがとうございます」


マスターの礼を言っていると。俺達とより随分と後で入ってきた男が俺とマスターの割って入って来たのです。


「ちょっといいか」

「はい、何でしょうか」


男があからさまに手を捲いて報酬を要求します。

とりあえず、銀貨1枚を放り投げます。

それを見て、少し残念がった男ですが、めげる様子もありません。


「お代は後払いにしてやるよ」

「内容によりますね」

「あんた、次期当主のジョルト・アディ・ステイク侯爵様を知っているか」

「王宮で一度あいさつをした程度なら」

「なら問題ない。ジョルト様はお帰りになると、必ず町や村を巡って領内を巡回する。階級に関係なく、意見具申を許し、民草からの上申を受けてくれる」

「立派な方ですね」

「領民思いの中々にいい次期領主様だ」

「それがどうかしましたか」

「へ、へ、へ、ここからが本題だ」


手をむぎむぎするので、銀貨を1枚放り投げてやります。


「先月は王軍の巡回を終えられて、今月は領に戻って領内を巡回する事になっている。毎年の事なのでめずらしく事ではない」

「…………」

「怖い顔をすんなよ。これからだって、帰ってくるのは2~3日後のハズだったが、つい先ほどお帰りになった。そして、明日は南西の森で鷹狩りに行かれると触れを出した。役所や冒険ギルドの掲示版に載るのは明日の朝一しか手に入らない情報だ」

「絶対に会える場所と言えば、どこになりますか」

「南西の森の手前に小さな丘がある。南側は川が蛇行しているので馬では行き難い。必ず、その丘を通って行く」


俺はポケットから金貨3枚を取り出します。

ぴゅ~う、金額が余りにも大きかったので男が口笛をならします。


「前金です。会えるだけで面会の約束を取れた訳でありません。失敗した場合を考えて、他の情報を集めて下さい。掛かった費用は後で払わせて頂きます。とりあえず、それだけあれば、信用くらいは買えるでしょう」

「もし、無駄になったらどうする」

「明日で面会がかなったなら、成功報酬として10枚を追加で払いましょう」

「判った。段取りを付けて置こう」

「お願いします」


男は金貨3枚を懐にしまって出て行きます。

グラスを拭いていたマスターがぽつりと呟くのです。

「いいのかい。余りいい噂は聞かん奴だ」

「構いません。今、俺の命が掛かっていますから、金で命が買えるならいくらでも出しますよ」

「そうか!俺も聞いておいてやろう」

「お願いします。次に来た時は、ミルクと厚めのスグワットを頼みます」


俺は酒場のミルク代と銀貨3枚を紙に積んでおくと、マスターはゆっくりと頷いたのです。


 ◇◇◇


作品の向上の為に、


『 評価 』


だけでも付けて頂けると幸いです。


よろしく、ご協力下さい。


お願いします。


作者:牛一/冬星明



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