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転生は普通のことだった!~3度目の人生、転生チートしてもそんなに巧くいくわけじゃないのよ~  作者: 牛一/冬星明
第三部.児童チートで優雅な(?)陰謀編、なにもしないうちから恨み買っています。
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25.お魚を売って大儲け。

城門町に入場するとお茶会のお姉さんはいつものように商業ギルドに向かいます。長荷馬車7台分の高級魚と特殊な魔物肉が2台分の取引です。北の海の高級魚と聞いて職員が目の色を変えて、王都の本店に走っていったのです。


王都の夏は暑く、腐り易い魚は敬遠されます。もの好きな商人が魚を氷漬けにして持ち帰ることがありますが、大量に持ち帰る事は難しく、それだけ重宝される訳です。おそらく、商人も馬鹿ではないので魔法で魚を凍らせる事を考えたハズです。


「そう言った魔法を使えるのは王宮魔法師くらいで、冒険者でそんな繊細な魔法も使える奴はいませんし、魔法師様はそんな下賤な魔法を作ってくれませんよ」

「そういうものなのですか」

「王宮魔法師は王族の為に使用しますから、残念ながらこっちに魚は回ってきません。どうしても欲しい貴族は王族の方に頼んで回して貰っているようですが、礼金が普通の額で済みません。そんな馬鹿な事をする貴族様はいませんよ」


輸送に携わった人の話だと氷の張った箱に魚を入れ、藁を何重に掛けて外側から何度も氷の魔法を掛けて輸送するそうです。王都では王族か、三公のパーティーくらいしか魚料理が出されないそうです。

そんな世間話を職員としていると、連絡員が戻ってきました。


姉さんらやドクさん達とはここで一旦お別れして、学園都市の隣にある城壁町に移動して貰う予定だったのですが、本店から貴重な魚を護衛して、王都本店の取引所まで護送してくるように通達が来たので、内城門を通って王都内に入ったのです。


「はじめて入った」

「ドクさんは貴族だったんですから入ったことあるんじゃないですか」

「馬鹿やろう。俺は初等科中退だぞ。王都に行く用事がある訳ないだろう」

「ドクさん中退、カッコ悪ぅ」

「おまえらは学校も行った事がない奴に言われたくないわ」


我が家で学校に通ったのは俺だけです。


ドクさんも元貴族(一様まで貴族です)ですから、貴族が絡むと恐ろしいと実感しているようで、王都の町で絶対に騒ぎを起こすなと何度も注意しています。

当然ですが見物も飲み屋などに遊びに行くのもなしです。

王都の飲み屋なんてあるんですかね?

飲み屋と言うよりレストランのような食事所はありそうですが、冒険者が騒ぐような店はないように思います。


「出店もなかったよね」

「そうですね。地下は別ですけど」

「地下って何?」

「王都の市民は地下で生活をしていて、地上部は貴族か、貴族の関係者しか出歩かないんですよ」

「すっごく、おもしろそう」

「行く予定はありませんよ」

「ケチ!」


姉さんを放置したら、トラブルの予感しかありませんよ。


「姉弟そろって、トラブルメーカーですからね」

「うん、うん」


お茶会のお姉さんと赤毛のお姉さん、割と酷いこと言っています。


 ◇◇◇


うひゃ~~~~~ぁ!

姉さんが声を上げるのも無理はありません。

王都商業ギルドの取引所はとても取引所と思えないくらい清潔であり、ドーム状の会場内で取引が行われます。馬車で中まで入り、取引場の隅に止めてゆくようになっています。

円卓状の取引場には、それぞれ卸業者と貴族の駐車馬車などが止める場所が決められており、卸して荷物が積み替え易く作られています。


しかも、デカいです。


円卓は段差を設けて、荷馬車から板を置くだけでスムーズに荷卸しできるようになって便利ですね。


「みなさま、お待たせしました。高級魚が到着しました」

「「「「「「「「「おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ」」」」」」」」」


凄い勢いで貴族付きのシェフと魚好きの貴族がよって来ます。

後ろの扉を開けると、次々と魚が降ろされてゆきます。

並べられた木箱を眺めなら、貴族やシェフ達が声を上げて何を買うかを相談しています。


「おぉ、これは素晴らしい」

「こんなデカいのははじめてだ」

「これは北でしか取れない貴重な魚ですぜ」


7台の長荷馬車から凍結させた魚が次々と取り出されて並べられてゆきます。

全部、商業ギルドの職員がやってくれますから、俺達はのんびりとお茶をしてくつろいでいます。


まずは魚のセリをしてから他のモノを見ると言っています。

蟹のような甲殻魔物の肉を使った味噌汁を新人君らに大鍋で作って貰って、試食から買手を探さねばなりません。


魚のセリの交渉はお茶会のお姉さんに任せています。


「では、一番ネタのこの魚から始めます。お値段は〇〇〇からです」


ぶっ、思わず、お茶を噴いてしまいます。

相場の100倍からスタートって、何んですか?


否、間違っていません。

値がドンドンと跳ね上がってゆきます。

ちょっと信じられない額が飛び出しました。


「1万、飛んで50枚。それ以上はいませんか」

「200枚」

「200枚、いませんか」

「250枚」

「300枚」

「400だ」

「1万、飛んで400枚。それ以上はいませんか」

「2万枚だ」


ぶっ~~~~~~~~ぅ!

何ですか、その値段は?


「汚いな。あんたさっきから何やってんのぉ」

「姉さん、あれを聞いてびっくりしませんか」

「なにか?」

「仕入値の2万倍ですよ。確かにあれは高級魚の超大物で金貨1枚もしました奴ですけど、2万倍はないでしょう」

「もしかして、2万って、金貨2万枚のこと?」

「それ以外にあると思いますか」

「わぁ~すっごい、お金持ちだ」


大セリは大物5点のみ、残りは各職員が商品を見てその場セリをやってくれています。

商業ギルド長が揉み手をしながらあいさつに来てくれました。


「この度は大口の納品ありがとうございます」

「こちらこそ、ありがとうございます」

「北の貴重な魚を持って来て頂いて、本当に助かります。この時期の魚は貴重ですからな! 本当に助かりました」

「今後、夏と冬の年2回を予定していますからよろしくお願いします」

「はい、門前ギルドで連絡だけ入れて貰えば、王都に入場できるように特別書を発行させて頂きます。これからもよろしくお願いします」


丁度、出来て来た味噌汁を商業ギルド長に飲んで貰います。

商業ギルド長はあちらこちらに足を運んでいるようで、この肉の事も知っているようです。


「これも凍らせれば、日持ちがする訳ですか。すべて、買い取らせて頂きましょう」

「ありがとう。ございます」

「ただ、あの荷馬車を少しの間、お貸し頂けませんか」

「どうぞ、お貸いたします。もう一度凍らせておきますので、三日は持つと思います」

「ありがとうございます」


できあがった味噌汁をシェフや貴族様に試食して頂いて、その場で長荷馬車1台分は売れました。

というか、7台分が一瞬で売り切れるとは思いませんでした。


「何でも近くの城壁町の貴族に出入りしている商人が残り全部を買っていってくれました」

「出入りの商人っているんですね」

「やはり、王都には様々な物が入ってきます。その為にずっと人を配置しておく訳にはいかないので目利きのよい商人と契約を結んでいるようです」

「なるほど、納得です。処で蟹の味がする魔物肉もいい値で買い取ってくれたみたいですが大丈夫なんですかね」

「はい、魚を求めて後から買いにくる貴族や商人に売り付けると言っていました」


確かに魚が多く出回れば、まだ残っていないかと手にいれようと遅れてくる方も出てきます。何も手に入れないで帰れない人が出てくると踏んでいる訳ですね。


しかし、荒稼ぎ、儲かり過ぎですよ。

元手は金貨300枚で中々な出費と思いましたが、大物5匹で金貨2万5000枚、その他の魚も買い取り相場の80倍で売れたので2万4000枚で、合わせて4万9000枚、ここからギルドの手数料が1割引かれますから、4万4100枚の粗利です。

仕入300枚と荷馬車の購入費4000枚を引いても金貨3万9800枚の純利益ですよ。


4年で市長にむしり取られたお金と同額を稼げます。

長荷馬車の台数が3倍になれば、1年ちょいです。

イッソの事、これを定期行路にすれば…………大儲けできるかも。


「アル様、さすがそれは無理です」

「無理ですか?」

「無理です。今回は物珍しさもあって高値で取引をしてくれましたが、定期行路になれば、相場の40倍が限界と思います。それに大物のセリもあそこまで高値になりません」

「それでも純利1万くらい見込めますよね」

「はい、それは見込めます」

「やりたいですね」

「やりたいです」

「台数も増やしましょう」

「それがいいです。今の10倍になっても王都なら捌けます」


俺はにんまり、お茶会のお姉さんはにっこりと笑います。

定期便を作れば、ゲルの漁港に倉庫を借りても十分な利益が還元でき、1ヶ月一行路としても、年の金貨10万枚を稼いでくれます。台数が3倍になれば、30万枚で、10倍の100台なら100万枚ですか!


「いいですね」

「絶対にやりましょう」


もちろん、今すぐにできる訳ではありません。

俺がずっと護衛をする訳にいきませんから、20人くらいの氷が使える魔法士を揃える所から始めないといけません。

そんな夢のある話を冷ややかに姉さんらは見ているのです。


「ねぇ、ねぇ、いつも二人はあんな感じ?」

「うん、お金儲けの話をするとあんな感じです」

「私も入りたい」

「王女様も入ったら」

「さすがに無理ね」

「私も無理、純とか、粗とか難しい言葉が飛び出してわかんないよ」


氷の魔法が使える魔法士を育てると色々なことができそうです。

でも、そうなると、その魔法を知りたがる不埒な輩も多く現れます。

ヘタに隠すとトラブルの元というのがお茶会のお姉さんと意見を同じくする所なのです。


 ◇◇◇


取引を終えると、蟹の味がする魔物肉の入った長荷馬車2台を商業ギルドに預けて、行政府の庁舎に向かいます。


「姉さん、大人しく待っていて下さい。すぐに済ませてきます」

「あんた、私の事を何だと思っているの!」


そりゃ、トラブルメーカーです。

絶対に口に出しませんよ。

姉さんらには馬車の駐車場で待機して貰います。

ドクさんらにはくれぐれもお願いしています。


まずは企画課に寄って報告と今後の予定を確認します。


基本計画は王都から荷物を預かって南回りコースで城壁町を巡ります。隣の城壁市でUターンして、北回りコースで遠征の時に使った城壁町などを巡って王都に戻ってくるという定期便になる予定ですが、クールの輸送ができるようになったのが変更点です。


これが成功すれば、各城壁市間に定期便を増やしてゆく予定です。

どうして、ウチが増やすのかと言えば、企画課の企画室には予算がないからです。

慈善事業ではないので赤字路線はやりませんよ。


「お帰りなさい。旅団の方はどうでしたか」

「変更点がいくつかありましたが、おおむね、成功です」

「それはよかった」


企画室はあいさつだけです。細かい事はおいおい詰めればいいですし、担当の職員さんもいますから慌てる必要もありません。ただ、行政府に来て企画室に顔を出さなかったというのは、体面を潰すことになります。


ちゃんと寄りましたからね。


ここの来たのは冷蔵魔法を取得しようと色々とトラブルを起こす前に、こちらから公開しておこうという結論になったからです。公開しておけば、産業スパイがやってくることもないでしょう。


「お初にお目に掛かります」


魔法省の受付に行くと職員がたくさん集まってきます。

握手を求めてくる者までいるので何事かと聞いて見ると、ミルラルド教授が魔法協会の総会で新魔法理論を発表して魔術師になったとか。


うん、うん、先生おめでとうございます。


メイド服(薬)の教授の唯一の弟子が俺です。


なんか、そんなことを言っていました。

完全に忘れていたよ。


「今日はどのようなご用件で」

「はい、いくつかの魔法を公開しようかと思いました」

「おぉ、なんと! 今、注目の新型の魔法を公開して頂けるのですか」

「新型というより、生活向上に使える簡単な魔法式です」

「ご謙遜を」


めっちゃ、やり難いんですけど!


学校の教材に出てくる基本的な術式を再構成しただけの簡単な魔法ですよ。


「これは素晴らしい」

「あらゆる無駄を省いたシンプルな術式です。簡素で合理性を追求されています」

「これが新時代を開く術式ですか」

「これなら応用も簡単そうです」

「これが究極魔法への手掛かりですか」


違います。

単に食品を凍らせるだけの魔法ですよ。

ちょっと、聞いていますか!

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