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転生は普通のことだった!~3度目の人生、転生チートしてもそんなに巧くいくわけじゃないのよ~  作者: 牛一/冬星明
第三部.児童チートで優雅な(?)陰謀編、なにもしないうちから恨み買っています。
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24. いざぁ、王都へ? もう到着?

旅団が出発する前日まで俺はあっちこっちに引っ張り凧です。関係者へのお礼、有力者への説明と一度で済ませてくれと言いたいですが、そうもいきません。最後の歓送パーティーを終えて、旅団出発の前日にやっと解放されて、母さんと食事です。


姉さん達は用事があるそうで留守でした。


俺は何をしに帰ってきたんでしょう?


旅団の見送りはいつものメンバーのみで、俺の見送りは7女ちゃんらお茶会のメンバーのみとは寂しいです。


実は市長や伯爵は後始末で大忙しなのです。


ひっ捕らえた怪しい奴を審議すると、様々な諜報機関のメンバーが芋づる方式で出るわ出るわ。


その対応で頭を抱えているのです。


「次は一緒に王都に行きます。必ず、お帰り下さい」

「判りました」

「アル様、私達が共同で作ったクッキーです。あとで食べて下さい」

「ありがとうございます」

「「「きゃあ~」」」


お茶会の新人さんからクッキーを受け取っただけで何故か喜ばれました。


『出発』


旅団に参加する冒険者の内、50人を率いているのはドクさんです。

ドクさんのメンバーの内、魔法士の二人は町に残って学園の教師役を引き受けてくれるそうです。ベンさんとこの魔法士さんでは魔法の教師になりませんからね。

という訳で、C・Dクラスの新人20人を率いるのは、ドクさんと盾の戦士と斥候の3人ということになります。


残りの30名は、Cクラスで固めたかったのですが、1年契約をしてくれる冒険者は中々集まらず、Dクラスの冒険者を地道に育てて行くしかないかと諦めていたのです。

しかし、旅団に参加する冒険者は優先的に審議官の審査を受けられると聞いた冒険者は、唯一空きがあったウチの旅団に参加を決めてくれたのです。


審議官の領内拘束が1年も続くとは思いませんよ。


それに最低でも半年は参加し続けないといけません。

規約金が金貨30枚という項目を読んでいるのでしょうかね?


「あいつらが読んでいると思うか」

「思いません」

「そういうこった」


いずれにしろ、ベテランのBクラス1組、Cクラス4組が確保できたのは重畳です。

これで王都の配送業が始動できます。


 ◇◇◇


ある程度、並走した俺達はドクさんと別れて先行する長荷馬車を追い掛けて馬を走らせます。


長荷馬車は魚を買い付ける為に1日だけ先に出発しています。

護衛は髭の領兵さんにお願いしてあります。


普通、2日掛かる行程を1日で走破すると馬が壊れてしまうのですが、ここは裏技の回復魔法のキュアを使って、馬にがんばって貰うしかありません。


追い駆けているのは俺、お茶会のお姉さん、赤毛のお姉さん、小公女さんの4人です。


王都で出会った彼女と紅蓮さんは髭の領兵さんの方へ回って貰ったのです。

戦闘能力としては、髭の領兵さんらは申し分ないのですが、魔法士の数が少なく、遠距離攻撃ができる数が限られるのです。

紅蓮さん、一人で3人分の魔法士に匹敵する連射魔法が使えますから最適です。

王都で出会った彼女の斥候能力と合わせると、まず、問題はなくなるでしょう。


短い休憩を何度も挟んで、馬を回復させながら、すっかり日も暮れた頃にゲルの漁港に到着したのです。


「アル、遅いわよ」

「姉さん、どうして?」

「私達も旅団に参加しただけよ」


道理で今回は大人しいハズです。

小公女さんらが騒がない所を見ると俺だけに秘密だったようですね。

どうでもいいけどさ。(怒)


 ◇◇◇


翌朝、港に行くと大量の魚が荷揚げされて行きます。

先月に告知した上に商業ギルドを介して正式に高級魚を大量に予約していたので、猟師さんもがんばってくれました。


「やぁ、天候がよくよかった。折角の予約が時化で舟が出せなかったらと思うとひやひやもんよ」

「時化の時は何日くらい、船が出せなくなりますか」

「普通は1日か、2日だが、長い時は4日ほど続く時があるな。夏場は要注意だな」

「なるほど」


冬はすぐに天候が回復しますが、夏場は雲が停滞して、しばらく漁ができない日が続くことがあるそうです。よく考えてみれば、この領主は船で王都に向かうのは我々より5日も早いのです。つまり、天候不順でも王都に到着できる日数を確保しているのです。


猟師さんの一言で、この計画の危うさを思い知らされました。


こりゃ、漁村に場所を借りて冷蔵倉庫を建てた方がいいみたいです。


「冷蔵倉庫ですか、経費が掛かりそうですね」

「そう、それが問題です」

「1年に2度しか使わない倉庫を維持するのは不経済です」

「北で定期的に魚を食べる習慣が付けばいいのですが」

「普通に運んでいたのでは経費がかさみます。王都ならともかく、ウチの町で荷馬車代こみ値段は出せません」

「ですよね」


お茶会のお姉さん、首を少し右に捻り、左手で右膝を持ち、右手を口元に方において、一指し指を鼻の上をトントンと叩く仕草をしています。

一休さんではありませんが集中すると、この仕草が出てきます。


トン、トン、トン、チーン!


何か思い付いたみたいです。

水上エレベーターですか?

確かに7女ちゃんの新領地と下流の領地の高低差を無視して水路で運搬できるアイデアとして水上エレベーターの話はしましたよ。

でもさ、エクシティウムとゲルの漁村の距離は軽く3倍はありますよ。


「大量に物資を運ぶには船が一番です。一年中、西風が拭くので帆を張って、川を遡る訳に行きません。しかし、高低差がほとんどなければ、(かい)() で川を遡ることもできます」

「確かに時間が掛かって、凍らせておけば問題はありません。安全はどうしますか。西のように完全が確保できていませんよ」

「水路の両端を壁に覆うしか手がありません。いっそ、水路の横に街道を並走させれば、護衛なしで移動もできるようになりますね。エクシティウムだけで大量の魚を消費できませんから、東のフルミネンセやインペラトにも販路を広げれば、新しい産業になります」


言うんじゃなかった。

すぐに着工という事になりませんが、高等科を卒業後は大規模工事が待っていそうな予感ですよ。


話はそれくらいにして、魚を凍らせて長荷馬車10台に積んでゆきます。

北で用意していた10台の荷馬車はどうも構造が貧弱なので、普通の荷馬車として使うことに変更し、姉友ちゃんと分担したので作業もスムーズに終わり、昼には出発できたので、城壁市ゲルには旅団より早く到着する事になったのです。


 ◇◇◇


旅団は順調に進みました。

予想外の事と言えば、行く先々で魚を分けて欲しいと頼まれた事ぐらいです。


おもえら、海は近いんだから自分で買いにゆけや!


各城壁市に1台分ずつ、合計3台分を分けて上げましたよ。

買い取り価格の5倍のお値段です。

高いと思いましたが、何でも手間を考えると相場らしいです。


空いた長荷馬車は蟹の味がする甲殻魔物を冷凍保存して王都に持ち込んでみます。


個人的なトラブルと言えば、姉さんが飽きたから魔物を呼べとか、俺の仕事を増やしたくらいです。


「アル、先遣隊は飽きた。魔物をドバっと呼んで終わらそう」

「あれをすると後片付けが大変なんです」

「いいじゃん。そんなの地元の冒険者がやってくれるって」

「でもね」

「やるの!」

「はい、はい」


言い出すと絶対に引かないから困ります。

ドクさんの指揮官にウチの新人さんと髭の領兵さんを並べて、5km四方から魔物を一気に呼び寄せます。


「小僧、匙加減があるだろう」

「正面以外は適当に片付けますから適当にかんばって下さい」

「全員、密集体形。一人で倒そうとするな」


姉友ちゃんはアイススピアーの速射ができるようになっており、紅蓮さんより速いかもしれません。見習い神官ちゃんは以前から3本同時が打てましたが、3本別方向に撃てるようになっています。


「あの子ら、あんな魔法も使えるの?」

「私の連射より速そうね」

「あの子なんて、あなたみたいに別方向に撃ち出しているわよ。どういう事?」

「一応、俺が教えましたから…………弟子みたいなモノでしょうか」

「ズルい、私は教えて貰ってない」


小公女さんもあの子らに触発されたのか、ドンドン子供っぽくなっていますよ。さらに対抗心を燃やして広範囲の中級魔法で一部を殲滅して存在感を誇示します。


小公女さんが活躍して活気付くのは髭の領兵さんらです。


「王女様に続くぞ」

「「「「「「お~う」」」」」」


怪我人が続出したのはウチの新人君らです。


「はい、そこに全員集まって」


見習い神官ちゃんは覚えたての中範囲の治療魔法『エリアヒール』を試したく仕方ないんです。


何で新人冒険者の実践訓練をしているんでしょうね?


魔物の残骸から高価な素材だけ回収すると、小公女さんに燃やして貰って、あとは後続に任せます。


獲物の残骸を見た領軍と冒険者が大喜びです。

まぁ、領軍の兵士さんは最初から空荷馬車を用意していましたからね。


何でも、旅団に参加すると臨時収入が手に入るとか噂になっているそうです。


 ◇◇◇


後は紆余曲折ですが、些細な事です。

はじめての雨に打たれた事とか、蟹味の魔物肉を食べすぎて、姉さんが動けなくなったとか、紛れてA級の魔物が現れたとか。


「とかじゃないだろう。新人にA級と戦わせる馬鹿がいるか」

「何事も経験だと思いますし」

「半分の奴がトラウマになりかけたぞ」

「ならなかったからいいんじゃないですか」

「そりゃ、おまえとこのチビらが倒せば、気落ちの方が酷いわ」


そうなのです。

なんとA級の魔物を下兄、姐さんの妹と妹分の3人で倒したのです。


「おまえらは手を出すな!」


そんな風に言われたら、手を出せませんよ。

最近、姉さん、姉友ちゃん、見習い神官ちゃんが規格外になって来ていますから、下兄らも焦っているんですよね。


ウチの新人さんらも俺の事は「あれは別物だから」と納得しているようですが…………って、納得するな。


これは努力の結果です。


それ別にして、まだ仮成人(10歳)していない少年と可愛い女の子らが必死に戦う姿は、新人君らの心を打ったようです。


まぁ、連れて来た新人君らは成人(15歳)か、成人前のC・Dクラスの冒険者ばかりです。

下兄のがんばりでやる気が上がって上々です。


「おい、なにか。いい話にまとめてないか」

「駄目ですか」

「当たり前だ。力量に合わない相手を送り出すな。一歩、間違ったら使い物にならなくなるところだったぞ」

「は~い、気を付けます」


ドクさんは固いです。



そんなこんなで王都領に入りました。


無事是名馬(ぶじこれめいば)


そりゃ、毎回、暗殺や陰謀が度々あったら堪りません。


河を渡ると巨大な城壁が迎えてくれます。

ここまで読んで頂いてありがとうございます。

3章も半分を過ぎました。



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