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転生は普通のことだった!~3度目の人生、転生チートしてもそんなに巧くいくわけじゃないのよ~  作者: 牛一/冬星明
第三部.児童チートで優雅な(?)陰謀編、なにもしないうちから恨み買っています。
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18.神なんて厄災と一緒でしょう。

教皇の代理官は俺とAクラス冒険者を戦わす陰謀を描いてきました。そして、自ら告発者になるという裏技を酷使してきたのです。


告発者:教皇の代理官。

裁判官:エクシティウム大司教。


大司教様は7女ちゃんの叔父さんですが、断罪官の真偽を覆すことは教会の存続に関わる大問題です。


「断罪官が嘘の証言をするのはあり得ないのですか」

「誰もが思っていますが、それを口にする事はできません」

「どうして?」

「それを口にすれば、裁判の意味がなくなるからです」


地球の裁判は証拠を元に人が人を裁く訳であり、誤審があることを前提に裁判は行われています。


「教会は神の代理人であり、神を疑うことはあってはいけないのです」

「でも、嘘をついていますよね」

「はい、でも教会の権威が落ちれば、天罰が下ります」


小公女さんと7女ちゃんが何を恐れているのかがよく判りません。

こう言う時は、お茶会のお姉さんがいると助かるのですが、いない人を頼ってもしかたありません。


「彼女達が恐れているのは、神が残した神託を心配しているのよ」

「神託ですか」

「そう、人心が神への敬愛と信仰を忘れたなら、必ず天罰が下りましょうという一文ね」


紅蓮さんの説明で少しだけ理解できました。

教会を疑うと言う事は神を疑うと同意なのでしょう。

この世界はリアルに神がいますから天罰もある訳です。


「天罰って、どの程度ですか」

「神は気まぐれです。国1つ、大陸1つを沈めたともあります」

「迷惑ですね」

「つまり、断罪官を疑うことができないと言うことですか」

「「「…………」」」


みんな、黙ってしまいました。


王族も教会もみんながこの国を思ってやっているのでしょうが、その想いは1つではないのです。

誰が主導するのかという1点が定まらないのでしょう。


日本人として、神は気まぐれで人智が及ばないので、恐怖と畏敬を残しながら泰然と暮らすことを選択した訳です。


台風が襲うのも、火山が爆発するのも、人の思いや行いなどを超越した次元にあり、人智の及ばぬものとして、祈りを捧げて生きてきた訳です。


本質的に神に祈っても助けてくれないと知っており、その災いは時として恩恵となって人々に豊かさを与えてくれると感謝の念を持って神を祀りました。


要するに、生きた火山と思えばいいんですよ。


なら、火山が爆発すれば、どうするか?


答えは簡単です。


 ◇◇◇


結局、みんなは結論も出ないままに城壁市が近づいてきます。

段々と言葉数も少なくなってゆくのです。

涼しい顔をしているのは、王都で出会った彼女だけです。

その涼しげな顔を見ていた小公女さんが話し掛けるのです。


「ねぇ、さっきから落ち着いているけど、何か策はあるの?」

「ない」

「あはっ、そうよね」

「うん。でも、彼はもう決めている」


俺の心を読んだように言わないで下さい。

みんなが一斉に俺を見つめます。

そんな期待するような顔をしないで下さい。


「言っておきますが、別に策がある訳じゃないですよ」

「まさか、死ぬ気じゃないでしょうね」

「嫌ぁです」

「俺も最初から死ぬ気じゃないですが、最悪はそれもありと思っています」

「アル、怒るわよ」

「姉さん、落ち着いて」

「落ち着ける訳がないでしょう。私、そんなの嫌ぁだからね。嫌ぁなの」


嫌ぁ、嫌ぁ、抱き付いて泣くのは止めて下さい。

恥ずかしいです。

とにかく、姉さんを落ち着きましょう。

みんなも一緒に貰い泣きしないで下さい。


「も~う、最悪の結論だけ言いますよ。一度死んでから生き返ります」

「「「「「「えっ!」」」」」」

「あっ!」


みんな、不思議そうな疑問の声を上げますが、姉友ちゃんだけ気が付きました。


「俺が死なないと決着しないなら、一度死んでから生き返ればいいんです。俺は蘇生魔法は使えます」

「無理でしょう。死んだ人間が蘇生魔法なんて無理よ」

「遅行性魔法というモノがありまして、先に魔法を発動させて時間が来ると発動する魔法です。今は魔力が枯渇している状態なので仕えませんが、処刑が今夜の12時以降ならかなり回復しているハズですから大丈夫でしょう」


やっと泣き止んでくれました。

成功率は30%ということはいいません。

状態を見て掛ける蘇生魔法と違って、状態みない蘇生魔法の成功率は下がるんだよ。

まぁ、保険が利きそうですから五分五分よりいい確率で復活できそうです。


「相変わらず、無茶なことばっかり言うんだから」

「それより、死んだ人がウロウロできませんから西に移住する事も考えないといけませんね。できればここを離れたくないので、他の策を考えましょう」

「私は付いてくからね」

「私も」

「はい、はい、案内します」

「お父様が反対しても付いていきます」

「騎士は諦めるから連れていってね」

「うん、仕方ない」

「みんな行くのね」

「先生はどうしますか」

「一緒について行った方が楽しそうね。でも、ちょっと無理かな」

「だから、俺は残りたい。知らない土地ではじめからやりたくないのぉ」

「そうだった! みんな、いい対策を考えよう」

「「「「「「お~う」」」」」」


全員が一緒にいなくなったら逆に怪しいから駄目でしょう。

俺は姉友ちゃんの頭に手を置いて言います。


「もしかの時はお願いします」

「がんばります」


さぁ、気楽になったことですし、作戦を練り直しましょう。

母さんと別れるのも嫌だしね。

みんなが明るくなった所で紅蓮さんが嫌なこと言います。


「1つだけ質問するけど、私達も全員が死刑を言い渡された場合も大丈夫なの?」


なんて恐ろしいことを言い出すんですか。


「ねぇ、どうなのかしら」

「無理です。全員を生き返らすのは不可能です」


まず、魔力が足りません。

上級魔法で広範囲の蘇生魔法は理論的に可能なハズです。

今の俺では実行できるだけの魔力がありません。

それは魔力消費量の少ないこちらの魔法式に使っても同じです。

中級と上級の壁は果てしなく高いのです。


「そうよね。で、どうするの?」

「どうしても答えないと駄目ですか」

「えぇ、私はそれを聞きたいわ。私も覚悟を決めないといけないからさ」


そうでした。

紅蓮さんは味方ではありますが、立場がある人でした。

みんなが息を潜めて答えを待っています。


「そうなったら最後まであらがいます。戦争です」

「教会を敵にすれば、王国が敵に回るかもしれないわよ」

「敵の強大さは関係ありません」

「また、勇者が敵に回るわよ」

「今度は勝つだけです」


勝てる見込みなんてありません。

でも、負けると思って戦う訳にはいかないのです。

紅蓮さんは意地悪です。


「仕方ない。私も乗るわ。その船に」

「いいんですか。王国と敵になるかもしれないんですよ。途中で降りてに構いませんよ」

「そんなつもりなら今の質問はしないわよ。貴方達が本気で王国と敵対したいなんて思ってないのは知っているもの」

「教え子が敵として出てきますよ」

「最後の授業を再開するだけね」

「先生、ありがとうございます」

「貴方達の船に乗せてくれるかしら」

「ええ、どうぞ」

「私も乗ります」

「私も」

それはもういいって!


みんな、決死の覚悟を俺を守ろうとしてくれています。

重たいよ。


 ◇◇◇


城門が近づく前に下兄、赤毛のお姉さん、姐さん、姐さんの妹と妹分、紅蓮さん、そして、ドクさんらは馬車を降りて森に入ってゆきます。


少しだけ回って森から帰ってきたように城内へ戻り、大聖堂周辺と大聖堂に立て籠もる敵を排除して貰うつもりです。但し、赤毛のお姉さんだけは城内に入ると7女ちゃんの手紙を持って領軍の宿舎に走って貰い、参与のお父さんに領軍を動かして貰うようにお願いして貰います。


情報遮断は神速こそ命ですが、敵が強敵なら無理をせずに領軍が到着するまで様子を見るように、くれぐれもドクさんい頼んであります。


死んでも元も子ありません。


蘇生魔法はありますが、痛いのは嫌です。

怖いのは嫌いです。



少し割を食うのが御者さんです。

護衛の冒険者が誰も居なくなることに不安でしょうが、この御者さんはDクラス冒険者並の武技を持っていますからね。御者の必須として、投げナイフか、投擲がありますが、長鞭というめずらしい武器を使います。


馬に立てずに馬の前の石を弾くことでできるのは凄い技術です。

猛獣使いって感じです。


どうでもいいですか、はい。


 ◇◇◇


さて、ドクさんが馬車を降りて森に入った頃、先に馬車を降りた王都で出会った彼女は伯爵家に門番に7女ちゃんからの手紙を持ってきたとメダルと一緒に見せていました。


そのメダルは俺が彼女に貸した皇太子の家紋入りのメダルです。


門番は大慌てで家令を呼び、家令はすぐに伯爵との面談をセットしました。


黄門の印籠ですね。


手紙と一緒に状況を説明した彼女は伯爵邸を後にして行政府の役所を目指します。

こちらもメダルを見た職員が大慌て、すぐに次長が出てきて、港に視察に行っていた市長と面談をセットしてくれました。


「娘っ子がすぐに帰ってくる。そこで待っておれ!」


難しい顔をした市長ですが、すぐに役所に戻ってゆきます。

すぐに船が港に着きます。

市長の代わりに王都で出会った彼女が待っているのに首を傾げて降りてきたのです。そして、お茶会のお姉さんは最後の1通を受け取ったのです。


「主がこれほど苦境に立たされているのに、私は優雅にお茶を楽しんでいたというのですか」

「それは仕方ない」

「自分が情けないです。悪漢がこの町にいることを知っていながら排除を優先しなかった私の失策です」

「普通は無理」

「この失態、必ず取り戻してみせます」

「それは頼む」


お茶を楽しんでいると言っても対岸の新設する港の打ち合わせの過程です。

今後の開発を見据えて港を設置しないと、後々で面倒なことになってしまいます。

大通りと水路を冬季に設置する事を説明しながら港の提案をしていたのです。


それができるのも王都で出会った彼女の精密な地図のお蔭です。

地図上の川や低地を水路網で結ぶことで物資がスムーズに運べるルートを確立し、屋敷の建設費、農地の開拓費と作物収穫の輸送費を大きく軽減できる町作りを考えているのです。


ほとんどがお茶会のお姉さんの案です。

俺の土地と16貴族の土地を道と水路で結ぶ計画を立てました。

湖と森と水路の町がお姉さんの頭の中に描かれているのです。

その出入り口となる港の建設は計画の肝となります。


次に帰ってきたら、全然違う安物港が造られてのでは堪りません。

港の建設担当者達に説明し、懐柔し、理解して貰う。


おいしいお茶とお菓子を出して、和やかな雰囲気を作るのも懐柔策の1つです。


「対策は練った。でも、完璧と言えない。助けて欲しいと」

「当然です。お任せ下さい」

「任せた」


お茶会のお姉さんは急いで行政府の役所に戻ったのです。

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