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転生は普通のことだった!~3度目の人生、転生チートしてもそんなに巧くいくわけじゃないのよ~  作者: 牛一/冬星明
第三部.児童チートで優雅な(?)陰謀編、なにもしないうちから恨み買っています。
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14.一番危険なのは彼女でした。

あぁ、布団の中で至福の時です。

休日もあと5日です。

もう働きたくありません。


「クエスト行こう。クエスト、クエス~ト」

「姉さん、俺の今の状況を判っています」

「なんか、あったっけ?」

「命を狙われているんですよ。姉さんも襲われたでしょう」

「あんな雑魚、知らないわよ」


人が来ない場所や作業場なら敵味方がはっきりしますが、冒険者が入り混じっている魔物狩りは対応が難しいんです。


「最低でも30人がいたそうですから、あと22人も残っています」

「関係ないわ」

「違う。あと17人」


部屋の壁に立っている王都で出会った彼女がそういうのです。


「姉さんが2人で、宿泊地の罠に掛かった奴が6人ですよね」

「うん、うん、私が5人を始末したから、あと17人」

「どうやって?」


言い返したのではなく、呟いた感じです。


ぺろり。


きゃぁぁぁぁぁ~ぁ!

彼女に鼻の上を嘗められました。


「ずるい」


ぺろり、姉さんも対抗してほっぺたを嘗めます。

「トモ、舐めなよ」

「う、うん」


ぺろり。


にゃぁ~、姉さんと反対側の頬を嘗められて顔が緩みます。


否、否、否、そんな馬鹿な事をしている場合じゃなんです。

王都の出会った彼女の手刀が首元に添えられたままなんです。

壁にいたハズの彼女が一瞬で移動して首元に手を添えました。

視線を切っていません。

まるでワープ、瞬間移動です。


「今のは、何ですか?」

「愛情表現」

「そっちの話じゃなくて、今、壁にいましたよね」

「うん、縮地(しゅくち)


仙術ですか!

500km先を目の前にあるかの如く移動できる技ですか。


「さすがにそれは無理。移動できるのは5m。別名を絶招歩法『箭疾歩(せんしっぷ)』とも言う」


なんか凄い名前が出てきました。


「凄い、凄い、教えて、教えて」

「うん」

「やっ~た!」


なし崩しにクエストに行くことになり、姐さんに連絡を頼んでいつも空き地に移動します。


 ◇◇◇


ひゃぁ!

ばさ、ばさ、ばさ、姉さんが見よう見まねで大転倒を繰り返します。


「違う。もっと螺旋を意識する」

「うん、次こそ」


縮地は瞬動(しゅんどう)の発展版のようです。

瞬動は足の裏に気か、魔力を溜めて打ち出す感じで得るスキルらしく。

俺は何度やっても成功しません。

肉体強化と加速門2重くらいの速度で移動できるのが瞬動です。


ていうか!

姉さん、瞬動できるんですか。

はじめて知りました。


「もっと体中の捻りを足の裏に伝える」

「う~ん、難しい。これでいいと思うけど」

「動きはそれでいい。でも、連動していない」


無理に体を捻っているので着地のバランスが取れずにさっきから転倒を繰り返します。

怪我をすると姉友ちゃんが治療をしています。


「おらぁ! クエストに行くなら先に言っておきなさい」

「俺が言った訳じゃないです」

「シスターが今日はお休みにしておきなさいと言ってくれてなったら、他の仕事を入れる所だったわよ」

「しばらく、ごろ寝するって言ってなかった?」

「していました。無理矢理起こされたんです」

「あんた、相変わらず、姉さんに弱いのね」


空き地は教会に近いので一番に見習い神官ちゃんがやって来ました。

そして、派手にコケている姉さんを見て溜息を付きます。


「何、やっているの? クエスト行く前からぼろぼろじゃない」

「さぁ、何やっているんでしょうね」


しばらくするとみんなが揃ってきます。

みんな、暇なんですね。


「そんな訳あるか! 誰かさんのせいで大忙しだ」

「どうせ、今日から3日間はクエストになるだろうから空けていました」

「3日間?」

「ベン、教えてやれ」

「旅団を送り出す歓送パーティーだ。おまえの所為で俺も出席する事になっている」


あぁ~、ありましたね。

領主伯爵様のパーティーを行い、翌日に行政府主催のパーティーが2晩続けて行われます。


「「遅くなりました」」


お茶会のお姉さんと赤毛のお姉さんがやってきます。


「こいつ、昨日から呆けているぞ」

「責めないで下さい。余りにも忙しかったからですよ」

「そう、そう、やるときはちゃんとやるから」


二人の信頼が重いですね。

ウチのメンバー、それにベンさん、ドクさんの所も集まったようです。


「みんな、揃ったみたいですから、そろそろ行きますか」

「何、言っているんですか」

「置いていったら、きっと怒るよ」

「昨日までがんばっていました。全部、主の為です」

「もう、お茶会にはしばらく行きたくない」


あぁ、小公女さんですね。

置いていったら怖そうです。

えっ、何か不思議そうな顔をされました?


しばらくすると伯爵の馬車が止まり、小公女さんが降りてきます。

そして、7女ちゃんも降りてきます。


冒険者の魔法士スタイルです。


「ご存じと思いますが、はじめまして、この度、シスターズのメンバーになりました。よろしくお願いします」


7女ちゃんがぺこりとおじぎをします。

どうして、メンバーに?

あっ、リーダーは下兄ですね。

下兄の方を見ますが、目を逸します。

どうやら押し切られたようです。


知りませんよ。


 ◇◇◇


伯爵様が用意してくれた馬車で東の砦に移動します。

その内の一台は預けてあった俺の馬車ですよ。

補助席を入れて9人乗りですが、さすがに入り切らないので姐さんらは別の馬車に乗って貰います。


東の砦まで馬車で行くのは何か変な気分ですよ。


「なんか、合宿みたいで楽しい」


訂正、赤毛のお姉さんが嬉しそうです。

荷馬車と馬車の違いはありますが、同じようなものですか。

お茶会のお姉さんだけが不参加です。

やる仕事が沢山に残っているので付いていけないと残念がっていました。

申し訳ございません。

俺の代わりのお仕事、甘えさせて頂きます。


なんと、東の砦に領軍の出来たばかりの宿営所が建っているじゃないですか!

まだ、本格運用がされていませんが、来年の本格運用に合わせて急ピッチで施設を建設中らしいです。

2泊三日のクエストはこの領軍の宿営所を使っていいそうです。

午後から伯爵邸の料理人が食材と共にやって来て、食事に用意もやってくれるそうです。


至れり尽くせりですね。


7女ちゃんの護衛は騎士から選ばれた6人がおり、クエストと関係なく7女ちゃんをサポートしてくれます。


「すみません。お父様が過保護で」

「気にするな。今回のクエストは小僧の気晴らしだ」

「訓練の一環と思って気楽にやってくれ」

「ありがとうございます」


何が嬉しいのか、終始笑顔を絶やしません。


 ◇◇◇


本来のメンバーなら森の最奥を目指す所でしょうが、護衛の方が戸惑うでしょうから南側を狩り場とします。東の砦の南側は旅団が通る街道の東に当たり、街道安全の為に魔物討伐の常駐クエストが出されています。


獲物は豹系、虎系、狐系、羊系、猫系、鼠系の魔物が多くなります。


中でも一番厄介なのが羊系の魔物です。

羊がおとなしく従順なのは地球の感覚で、こちらの羊はどんな攻撃も効かない分厚い毛皮と太い角が厄介なのです。

毛皮はファイラーの攻撃にもビクともしません。

アイススピアーでも貫通できるか怪しく、3点バーストで何とか?

厄介ですね。

という訳で、弱点である額の1点のみを狙い撃たないといけない敵なのです。


豹系、虎系の魔物が逃げ出すのが羊系の魔物なのです。


「やったす、タイガーウッアを一人で倒したす」


なるほど、今日はベンさんもドクさんもお休みでメンバー全体の底上げ実践訓練ですか。

確かに、これなら気晴らしです。


ウチのパーティ、随分と強くなっています。


「トモ、そっち行った」

「はい」

「ハーニャ、そこをいなせ」

「止めお願いします」

「ちゃんと付いてきてね」

「任せて」


姉さん、動くのが速すぎ、トラの方が降り回されています。

その横から姉友ちゃんが槍を仕込んだ杖でぐさりと刺しました。

以前まで使っていたハンドボーガンを背中に置き、杖が主体に変わって来たようです。

一番の進歩は氷の盾を自在に作れるようになったことで、正面に盾を出現させれば、勇気を持って前に進めます。


下兄は相変わらず剣を振りまわしています。

初撃だけ気を運用した肉体強化の一撃が使えるようで、姐さんの妹さんが囮になって前に出て、魔物の攻撃を躱した所で下兄が一撃で葬ります。

女の子を囮に使うのはどうでしょうか?

でも、堂々とした槍捌き、槍士っぽくなってきました。


見習い神官ちゃんも杖を中心とした攻撃です。

みんな、ドクさん所の槍士(魔法士)さんの型ですね。

但し、普通の杖ですから、それで魔物を倒せません。

見習い神官ちゃんは防御に徹した使い方で、姐さんの妹分が止めを担当しています。

らしいと言えば、らしいです。

おそらく、神官というスタイルにこだわっているのでしょう。


姐さんが後ろから指示を出し、二人一組で魔物を簡単に倒してゆきます。

魔法攻撃に頼らない実践訓練です。


一人だけ趣きが違うのが、赤毛のお姉さんです、

護衛リーダーから護衛にイロハを学んでいます。


「そうだ。常に先を見据えて指示を出す」

「はい」


リーダーに替わって5人の護衛に指示を飛ばしています。

赤毛のお姉さんが7女ちゃんの狩りの邪魔をしないように気を使っているのです。


最初は魔物を見るだけで怯えていた7女ちゃんも覚悟を決めて攻撃魔法を放ちます。

そして、最初の魔物1体を倒した7女ちゃんが無邪気に喜んだのですが、二人1組でC級の魔物を次々と倒してゆくのを眺めていると、7女ちゃんは少し鬱になってゆきます。


「みなさん、凄いですね。私より年下なのに」

「それを言っちゃだめよ。年で言えば、私が一番に情けないじゃない」


いや、いや、いや、小公女さんは広域中級魔法が使えるから全然に情けなくないですよ。

俺より魔力量が多い人が何を言っているんですか!


7女ちゃんだけが魔法の威力、総量、体術のすべてで一段低いのは間違いありません。


それがどうした!


そう割り切ってしまえば、なんてことないのです。

しかし、活発な青少年期の少女として、一人だけ取り残されているのは除け者のようで寂しいのでしょう。


とりあえず、魔力循環の訓練だけはさせましょう。


魔法の秘密を少しだけ解除してもいいのです。

問題は、後ろに付いている侍女ちゃんですね。

7女ちゃんに言えば、必ず漏れるでしょう。

どうしましょうか?


ドクさんが声を掛けます。


「午前はこれくらいにするか」


砦に帰ってお昼です。

どんなごちそうが待っていますかね。


紅蓮さんと町で出会った彼女は俺の後をやんわりと付いてきています。

俺の護衛、ご苦労様です。

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