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転生は普通のことだった!~3度目の人生、転生チートしてもそんなに巧くいくわけじゃないのよ~  作者: 牛一/冬星明
第三部.児童チートで優雅な(?)陰謀編、なにもしないうちから恨み買っています。
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9. 俺、休暇で帰ってきたんですけど。

おめでとうございます。

令和投稿です。

どうやら町で俺の事を悪くいう者が増えているらしい。

それも王都の方から流れてきた冒険者や商人が噂の原因のようです。


「何でも王都で乱暴狼藉を繰り返し、女と見れば、見境なしに我が物にしているらしい」

「誰の話ですか」

「おそらく、伯爵の息子が流した噂ではないでしょうか」


あぁ~、いましたね。

乱暴狼藉を繰り返し、女と見れば我が物にしていたのが伯爵の息子の事だったよね。


「はい、そういう噂が流れておりました」

「女の敵っぽい感じだったね」

「それは噂ではなく事実です。乱暴狼藉を受けた者は数知れず、女性を拉致したのは20人、無理矢理に妾にされた女性が5人です」

「もっと、袋叩きにしてやればよかった」

「がははは、逆恨みか」

「そのようです」


他にも入学直後に喧嘩を売って相手の生徒をぼこぼこにしたという話です。

喧嘩を売ってきたのは相手側で、戦いはコロシアムで行われた正式な決闘ですから一方的にこちらに非があるような噂には悪意を感じます。


「挙句に王女を手籠めにして連れ回しているという噂もありましたね」

「はい、はい、手籠めにされたいです」

「しませんよ」

「ケチぃ、私はいつでもウエルカムなのに」

「おぃ、まさか」

「この方が王女さまです」


ガルさん達がショックを受けています。

小公女さん、自分で学校の先輩と言っていましたからね。

それに正式の場じゃないとそう見えません。


「どういう関係だ」

「王国の遠征で生死を共にした仲ですね」

「そう、凶悪なS級の魔物から私を救ってくれた王子様で~す」


あぁぁぁ~、それで納得されました。


「で、町の人や冒険者の反応はどうですか?」

「どうって、なぁ!」

「そうですね」


ドクさんらもベンさんも歯切れが悪いです。


「そうっすよ。手当り次第はこの町の常識すぅ」

「俺、そんなことしたことないですよ」

「伯爵令嬢を始め、これだけ綺麗どころを独占して、その言い訳は通用しないすね」


姐さんも姐さんの妹もみんな俺の女ってことになっているんですか?

姐さんは妹に気遣って乗り換えた。

なんですかそれ!


「噂だからな! 何ともしようがない」


俺って、この町でどういうポジションなんでしょうか。

聞くのが怖くなります。


「悪い噂と言えば、貴族の間でも広めようとしている人がいるようです」

「私も両親から聞いた」


お茶会のお姉さんと赤毛のお姉さんの両親に悪い噂を流す貴族の話が集まっているようです。旅行か何か知りませんが、ふらっとやってきた貴族が悪い噂を流しているようです。


「市長派の貴族は私の両親に敵対する気がないことを告げているようです」

「私の両親も同じです」


赤毛のお姉さんに告げにくるのは伯爵派の人です。

下級貴族が直接に伯爵様や上司に報告するのは憚れるようで、お姉さんらの両親を通じて敵対する気がないことを表明しているようです。


「町の方も心配する必要はないぞ。小僧がどんなに性癖の持ち主であっても町に貢献していることは誰もが知っている」

「この町では有名すよ。手籠めにされて逆玉狙いの女の子は多いらしいす」

「なんですか、それ?」

「知らないのぉ」


見習い神官ちゃんが嬉しそうに言いました。

俺が見習い神官ちゃんに気があるから教会に多額の寄付をしているらしいです。

今日も続けている炊き出しの奉仕も見習い神官ちゃんを我が物する為だって?


「持てる女は辛いわ。私が神官を目指していなかったらお嫁さんになっても良かったのに」


呆れてモノが言えません。

姐さんらには家を与え、伯爵の気を引く為に砦を造った。


貴族の噂は面白いです。

何でも小公女さんの王家再興に金を出すと言って手籠めにして、小公女さんを使って皇太子に接近し、いずれは皇太子に娘を送って国王の義父となり、いずれは宰相となって国の乗っ取りを企む大謀反人らしいですよ。


「中々に面白い話ですね」

「はい、あり得る話なので笑えません」

「ありません」

「あると思うよ。皇太子は取り込む為なら手段を選ばない人だからさ」

「そういう人なんですか」

「うん、娘の私なら王女の娘だから格式的に問題もない。位の高い者に嫁がせれば、間接的に取り込めると考えていると思うよ」

「S級の魔物を単独で討伐できる魔法使いを放置してくれないと思います。当然、それを快く思っていない貴族もいる訳です」

「もしかして、俺が皇太子を誑かして取り入ろうとか考えていると思われている」


お茶会のお姉さんと小公女さんの話にみんながうんうんと頷いています。

マジですか!

こちらのグループは流石に刺客を送るのは皇太子にバレて不興を買いたくないだろうから直接的に手を出してくることはないでしょうが、俺が失脚するように小細工を仕掛けてくるんですね。

マジで面倒臭いです。


 ◇◇◇


3日後、ちょっとした関所門が完成です。

峠の両側に簡単な壁を作り、8人くらいが住める小屋が3つ、食堂と台所が付いた大ホールが一つあり、両岸を削って平地を増やしました。


「これのどこがちょっとだ」

「100人くらいが住める領地ですね」

「100人も無理ですよ。精々、一家族が暮らせる程度ですよ」

「あぁ、山をくり抜いて300人は入れる洞窟を作ってなかったらな」


壁の厚みを確保する為に山を削ってゆくとダムのように両サイドが広がってしまいました。軍隊が駐留するかもしれないので山をくり抜いたドーム型の洞窟を作って、その余った土で食堂やお風呂場や馬小屋とか、色々な施設を完備した訳です。


「あれはなんだ、あれは」


斜面の勾配はキツいですが、段々畑にすれば問題ありません。

西側は日当たりがいいので果実になる実を高原から取って来て貰って植林しました。

2~3年もすれば、実を付けてくれるかもしれません。


「買ってきた葡萄の苗を植えるのもいいかもしれません」

「誰が世話をするのですか?」


そうでした。

葡萄は野生の果実と違って世話が要ります。

そんなことを言っていると植林を終えた赤毛のお姉さんらが階段を降りてきます。


「上は凄く見晴らしがいいわよ」

「見張り台として最適だな」

「でも、植林するのに1週間くらい掛かりそう」

「今回はこれで終わりだ」


ドクさんはそう言って撤退を開始します。

高原側の扉は閉めておきます。


「撤収だ、撤収」


 ◇◇◇


町に帰ってくるとスラムがあったジャック地区や港区の橋の下などを根城にしていた不法民が領軍の演習地に作られた仮説テントに移動を終え、ジャック地区を取り巻くように垂れ幕が引かれています。


そこにベッドも何もない小屋を量産して行くのです。


「暖炉付きの小屋か」

「はい、布を吊るして作ったバラック小屋よりマシだと思います」


煙突から冷たい風が入らないように煙突の上に穴の開いた蓋をします。

掃除の時は蓋を外せば、子供一人が通れるスペースを確保しておけばいいでしょう。

10家に1つ割りで台所とトイレは共用スペースに別途に建てます。

風呂は露店ですが大浴場を確保して、みんなで使って貰いましょう。


市長伯爵閣下は視察に来て注文を付けて帰ります。

今日もやって来て、お茶会のお姉さんと話しています。


「本当に便利な奴じゃな」

「魔力量が増えたので作業がはかどるみたいです」

「明日にはできそうじゃな」

「ご依頼の200軒は明日で完成します」

「担当職員が泣きそうだな」

「なにか問題でもありましたか」

「問題はない」

「そうですか」

「やっと仮設のテントに移動したスラム民の名簿が完成する。四日も徹夜してがんばった職員に、儂は1週間以内でジャック地区に戻す手配をしろと命じなければならない。実に心苦しい」

「あははは、ご愁傷様です」


お茶会のお姉さんが力なく笑い、職員の人に申し訳ないと思ったようです。

何でも俺が帰ってきた翌日に市長は職員さんらにスラム民の移動と名簿作りを命じたのです。移動はスムーズに進みましたが、名簿作りは難航しています。番号を振るだけなら簡単なのですが、すでに冒険者に登録している市民が混じっているので確認作業に大忙しなのです。しかも船が付くと無料で住めると勘違いした冒険者などがスラムに合流して数が増えるのです。


さすがにCクラスの冒険者をスラム民と一緒にできません。

どこから聞き付けたのか、家が貰えると聞いて、すでに市民の次男や3男もスラム民に合流するという珍事も起こっているのです。


「それは大変ですね」

「貰えるのは家ではなく、小屋だがな」

「狭い家でぎゅうぎゅう詰めの暮らしより、小屋で住む方が快適と考えるのでないでしょうか」

「追加で頼むかもしれん。よろしく頼む」

「はい、承知しました」

「ところで、この調子で家も建てる訳にもいかんのか?」

「家を造るとなると複雑になるそうで、1日に1軒を建てられるかどうかという感じだそうです」

「まぁ、無理をいう訳にもいかんな。おまらから借りた金貨20万枚で区画整理を急がすとするか」

「その方がお金も回っていいと思います」

「よく判っておるではないか」

「はい、教師がよろしいものです」

「は、は、は、言ってくれるな」


市長は上機嫌で笑います。

市長の相手はお茶会のお姉さんに限ります。

ガルさんやベンさん、姉さんらは城壁市の西側の魔物討伐を行っています。それが終わると新設の北門を作って西側と自由に出入りできるようにする訳です。


俺には西側に広大な農作地が与えられ、胡麻、菜の花、ひまわり、ぶどうなどを栽培する予定なのです。そこは領地ではなく、開拓者として俺と7女ちゃんの共同名義になるだけで管理者でもありません。開拓された土地を行政府が借りるという形式を取る訳です。


面倒臭いですね。


表向き領主伯爵様は開発反対派なのです。


そう言っても開発されてしまったものは仕方ありません。

西側の三分の1が俺と7女ちゃんの取り分であり、残り三分の2を16分割して水路を作って欲しいと言われています。


つまり、16人の小領主がちかぢか誕生する訳です。

領主にずっと奉公してきた忠義の子孫であり、やっと報いられると7女ちゃんが教えてくれます。7女ちゃん、今日も午後になると新お茶会のメンバーを連れて遊びにきているのです。


「すみません」


今度はシスターが訪ねてきます。


「お久しぶりです」

「この度は多額の寄付をありがとうございます」

「わざわざお礼を言いに来てくれたのですか」

「いえ、お恥ずかし話ですが………」


炊き出しが大好評、それ自体は問題じゃありません。

スラム民や冒険者が加わって参加することを想定して、1000人分を用意したハズです。

昨日は6000人に膨れ上がった?


アホか!


市民の2割が炊き出しに参加しているってことじゃないですか。


「そう言えば、小貴族もお祭り気分で参加しているようです」

「貴族って、名前ばかりの貧乏貴族も多いからね」


赤毛のお姉さんがしみじみと言います。

魚を買う金はないが、魚を食べたい。

食欲が勝ったようです。

庶民と触れ合おうとか言って、みんなで参加すれば怖くないですか。


「備蓄が昨日で底を付きまして、追加注文を出して食材は問題ないのですが……」


シスターが申し訳ないか、声のトーンが落ちて何を言っているのか聞こえません。

でも、何を言いたいのか判ります。


「もう日にちもありませんし、上限を設けず、適当に寄付して下さい」

「了解しました」


お祭りも今日と明日で終わりです。

冷凍に問題もないようですし、王都に魚を運ぶ計画は進められそうです。


因みに、最初の備蓄が尽きたのは3日前だったそうです。

すでに3度ほど追加注文していたらしく、総額の寄付金が帰路で儲けた金額とほぼ同額と聞かされたときはびっくりです。

シスターのお姉さん、策士です。

意外と腹黒ですね。


というか、全然、休めてない。


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