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転生は普通のことだった!~3度目の人生、転生チートしてもそんなに巧くいくわけじゃないのよ~  作者: 牛一/冬星明
第三部.児童チートで優雅な(?)陰謀編、なにもしないうちから恨み買っています。
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4.たんたんと作業を熟します。

早朝、旅団は何の問題もなく出発します。

頼んでいた葡萄の苗の到着がぎりぎりだった以外は問題ありませんでした。

ウチの城壁市の団長から冒険者を貸して欲しいと言われたので、手空きの冒険パーティ3組を貸して上げることにしました。

髭の領兵さんは葡萄の苗100本をコンテナの上に積んで、ホロ馬車のホロを半分解放する手伝いをして貰っていたからです。

3組の中にはAクラスの冒険パーティが含まれているのですから問題ないでしょう。


現地の冒険者と合同で組まれた先遣部隊が魔物狩りに出発します。

馬鹿はお目付神官に任せておきます。

あの怪しいご令嬢は馬車を用意したと言っても、俺の馬車に残るというので諦めました。

仕方ないので隊長の一人から馬を借りて王女も馬で移動して貰いましょう。

紅蓮さんには要注意と言っておきました。

紅蓮さんもどこかの間者だろうと言っていました。


機密院でしょうか?

ないですね。

ガルさんか、メイド服(薬)の教授を送り込んで来た方が警戒されないでしょう。

自分から自白する人ですから監視には向きません。

そう言う意味では、

もしかすると王都で出会った彼女がそうかもしれません。

聞いても答えないでしょうから聞きませんよ。


監視という意味では旅団に随行員に中に自然に混ぜているでしょう。

疑われない人が一番怪しいのです。

そういう意味で団長さんが一番怪しいかもしれません。

この旅で自然と一番に接点の多くなる人です。

疑っていては切りがないので無視です。

実質の被害がなけりゃ、好きなだけ調べればいいですよ。


 ◇◇◇


えっ、馬鹿のパーティが林の奥まで魔物討伐に行ってしまった。

領軍の隊長さんと現地冒険者のリーダー役の人が俺に謝りに来た。

馬鹿ですからね。

まぁ、そのうちに戻るでしょう。


「気にしないで下さい。Aクラスですから野垂れ死にすることもありません」

「そう言って貰えると助かる」

「次の問題だが、先遣部隊の戦力がガタ落ちになった。Cクラスが1組しか残っていない。残り全部がDクラスだ。先遣部隊として送るのは了解できん」


おい、おい、冒険ギルドの仕事が手抜き過ぎるぞ。

Cクラス1組とDクラス9組は酷過ぎるだろう。

ギルド依頼でBクラスを1組くらいは組み入れろよ。


「あとで抗議しましょう」


お茶会のお姉さんを怒らせましたね。

ケチった冒険ギルドみなさん、高くつきますよ。


「空き荷馬車は?」

「ありませんが、冒険者を長荷馬車に分乗させ、さらに少し詰めさせれば、2台は確保できます」

「今日は1台でいいよ」

「判りました」


午前に先遣隊に出た冒険者を長荷馬車に分乗させることにします。

食事を軽く済ませると、先行して髭の領兵1隊を連れて俺が出陣します。

王女が一緒に付いて来ると言うと、どの隊がついて行くが大揉めです。


「何を騒いでいる」


領軍の隊長さん、理由を聞くと小公女さんの前で膝を付きます。


「ご無礼の段、平にご容赦下さいませ」

「気にしないで下さい。ただの学生です。頭を上げて下さい」

「ご配慮、ありがとうございます」


領軍の隊長さんも貴族らしく、王族に弱いらしい。

部隊を副官に任せて、領軍の隊長さんも同行します。

なにかあったら自ら盾になる気のようです。

もちろん、髭の領兵さんらにそういう気概はありません。

ないというより必要がない。

誰が王女と同行するかのみ争っているんですよ。


休憩毎に交代ということで手を打って貰いましょう。

荷馬車を引き連れて出発です。

もちろん、冒険ギルドの冒険者3組を引き連れます。

1kmほど離れた場所で最初の1回目です。

広範囲系の風魔法『リーンフォース改』、魔力が上がって来ているのでより範囲を広げる魔法を組み込んで効率的に魔物を呼び出します。


お茶会のお姉さんがちらっとこちらを見ましたね。


「お聞きしてもよろしいですか?」


なんでしょう。


「今、改とおっしゃいましたが、どう変わったのでしょうか」

「以前、ちまちま削除するのが面倒と思いましたから効果範囲を10倍ほど広げてみました」

「以前は500mくらいでしたよね」

「はい」


はぁ、お姉さんは呆れられます。


ぬのののののぉぉぉぉぉぉ!

話していると森が地響きを立てて迫ってくるようです。

領軍の隊長さんと冒険ギルドの冒険者3組の顔が引き攣ります。

森の木々から漏れる魔物の姿が露わになった時、狂気のような悲鳴を上げていますが無視です。


出て来ているのは100体程度、雰囲気的に後続を合わせても500体に届くことはないでしょう。


「隊長さん、先頭の3体を残します。片付けて下さい」

「了解しました」


びしっ。

隊長さんは了解のポーズを取ると『戦闘準備』と叫び、領兵10名が抜刀します。

別に余裕がある訳ではなく、ギリギリまで討伐を待っているのは道に近い方が回収も楽だろうと言う配慮です。


「王女様、ここは危険です」

「大丈夫、大丈夫、見てらっしゃい」

「隊長殿、慌てなくとも問題ありません。王女の騎士様がいらっしゃる。王女に危険などあるハズもありません」


いい加減、王女の騎士の称号は外してほしいんです。

もちろん、お茶会のお姉さんは余裕です。

あれ?

赤毛のお姉さんは馬を降りて、抜刀しちゃっています。


「すみません。守ってあげて下さい」

「「「お任せあれ」」」


赤毛のお姉さん、領兵の人と暇な時に剣の練習をしているそうですから問題ないそうです。

隠れた所で努力していますね。

まぁ、甲殻系は合宿で散々戦っていますから大丈夫でしょう。

一応、注意しておきましょう。

やっと街道に近づいてきます。


アイススピアー×10、10連発。

5秒間の一斉射撃、超近接でアイススピアーが発現して、そのまま発射し、避ける間もなく倒してゆきます。手元から撃ち出すハデさがなくなりますが、急所への一撃を外す危険性が削減します。

砦戦で避ける魔物がいたので改良しました。

代わりの計算の負担が大幅に上がります。

脳内では平行演算がフル活動中です。

さすがに長距離ではカバーするのは無理ですが、200m以内に引き付ければ何とかなります。

領軍の隊長さんと冒険ギルドの冒険者3組らには魔物が倒れてゆくしか映りません。


「なんだ? 何が起こった」

「魔物が急に倒れてゆくぞ」

「俺達、助かるのか」

「お母ちゃん」


「お見事です」

「わぁ、以前より凄くなっているよ」

「さすが王女様の騎士、我々も続くぞ」

「「「「「「「「「「お~う」」」」」」」」」」


お茶会のお姉さん、小公女、髭の領兵のみなさんと反応は違います。

赤毛のお姉さんは正面の敵に集中しています。


さて、第2段も続々と森から姿を現してきます。

引き付けてから処分です。


 ◇◇◇


実質の戦闘が5分ほどでした。

15分ほど、もう出て来ないのを確認して冒険者さんらには魔物の処分をお願います。

1つは、高値になる魔物素材を荷馬車に詰める。

1つは、魔物の死骸を1カ所に集めるです。

その間に反対側を処理しておきます。


領軍の隊長さんが説明を求めてきました。

面倒臭いのは髭の領兵の隊長さんに預けました。

同じ団長同士、話しも早いでしょう。

砦の英雄だの、皇太子の子息から直臣を断っただの、1万の魔物大軍の中に単身で乗り込んでいったとか、話に尾びれがついていませんか?


「ちょっと待て、昨日の魔物を退治したのはおまえか!」

「はい、そうですけど」

「何故、言わなかった」

「聞かれませんでしたから」


領軍の隊長さん、膝をがっくりと落として落ち込んでしまいます。

昨日、あれから随分と悩んでいたそうです。

そんなの知りませんよ。


「冒険者のみなさん、高そうな素材だけ馬車に積んで行って下さい。それ以外は一箇所に集めて下さい。キビキビと動いて下さい。素材の2割は冒険者に還元します。儲け時と思って頑張って下さい」


落ち込んでいる領軍の隊長さんを無視して、お茶会のお姉さんが冒険者に次の指示を出します。冒険者もボーナスが貰えると聞いてがんばり始めます。

その間に俺は逆側の森にも『リーンフォース改』を打ち込んで魔物を呼び寄せます。両側合わせて30分程度、回収と整理でさらに15分も掛かります。


もう旅団が休憩を終えて出発した頃です。


最後に小公女さんが光の魔法『聖浄の炎』で魔物の死体を燃やします。

あとで腐って悪臭を放たれて困りますからね。

それに王女様にも活躍して貰わないと納得しないような気がしたのです。


 ◇◇◇


移動を開始し始めると、髭の領兵の隊長が聞いてきたのです。


「先ほどの魔法はどのような魔法なのでしょうか」

「魔物を呼んだ奴ですか?」

「はい、興味があります」


俺は極小の『リーンフォース』を隊長さんに放ちます。

ふわぁ、隊長さんの顔に一陣の風が矢となってぶつかるのです。


「風の魔法ですか」


理解力の早いのは嬉しいことです。

リーンフォースは極端に言えば、風の糸を無数に撃ち出す魔法です。糸が何かに当たった瞬間、釣り人が魚を感知するように俺も手ごたえから魔物の位置と大きさを察知できるのです。

そう言えば、先ほどの森の中で魔物でないモノがありましたが忘れましょう。

猟師さんにしては数が多すぎます。

関わらないのが一番です。


「これは索敵魔法なのです。この森にどれくらいの魔物がいるかを一瞬で把握できます」

「あの森の魔物の位置も把握できる訳ですな」

「できますが、やりません」

「それはどうして?」

「今、この森で何が起こったのかを見たでしょう。この魔法を使用すると魔物の数を把握できますが、魔法を感知した魔物が逆上して襲ってくるという欠陥魔法なのです。あの森でこの魔法は自殺行為ですよ」

「は、は、は、王女の騎士がお戯れを」


隊長さんだけでなく領兵も信じていません。

どれだけ盲信しているんですか?


「マジで2万体が襲ってきたら助かりませんよ」

「冗談を、何とかされるのではないですか」

「過信はしない方です」

「納得しました」


絶対に納得していませんよね。


 ◇◇◇


馬の休憩地毎に髭の領兵が交代しました。

お昼休憩と違い休憩時間が短いので、急いで仕事を終わらせないと本隊に追い着かれてしまします。


「荷馬車はあとでいい。全員、駆け足」


3度目になるともう作業です。


 ◇◇◇


馬の休憩で岩に腰かけていたお嬢様の後で従者の執事が横に立ちます。


「どうかしました」

「悪い知らせです」

「今度は何かしら」

「草が全滅した」


平穏、平静を装うお嬢様の顔が一瞬だけ崩れます。


「どういうこと。200人は連れて来たと記憶するのだけれど」

「森でモンスターパレードに遭遇したらしい。重症だが何とか知らせてくれた」

「私を笑わせたいの」

「冗談ではない」

「無断で攻撃を掛けて全滅したと言ってくれた方が納得できるわ」

「監視しか命じていなかった」

「どういうこと。我々以外にも動いているの?」

「鷹は動いている」

「鷹の妨害? あり得ないわ。奴らは実行部隊を持っていないハズよね」

「そうだ。それに我々以外に魔物使いがいるとは聞いたことがない」


何もしない内から部隊が全滅、笑えない冗談でした。

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