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転生は普通のことだった!~3度目の人生、転生チートしてもそんなに巧くいくわけじゃないのよ~  作者: 牛一/冬星明
第二部.児童チートで優雅な(?)ドキドキ編、確かに女の子をはべらしますが、少女ですよ。
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45.人の噂も60日。

王都では英雄誕生の話で持ちきりです。

ヤベツ砦の事は軍事機密なので一切他言無用の箝口令が引かれています。

1万体を討伐したのは喜ばしいですが、1万体が砦を襲ってきたのは広まって欲しくないことなのです。

俺の事を秘匿するのが目的です。

強すぎる力が知れわたるのは喜ばしい事ではないのです。


まぁ、俺が王子の直臣にでもなっていれば、別だったのでしょう。


という訳で、俺の話をするのはタブーです。

しかし、兵が5000、サポーターの作業員が1万人も従事したので隠し通せるものではありません。

人の口に戸は立てられません。


俺は屋敷で缶詰していたので問題なかったのですが、買い物に出掛けたお姉さんらやゼミの先輩らは、寮の先輩らから問い詰められたようです。

ここだけの話が王都中に広まっていった訳です。


『身長20mの巨大な魔物を光の剣で英雄は一刀両断にした。』

『その英雄は剣を振りまわすと、周りにいた1万の魔物が真っ二つに引き裂かれた』

『英雄が放った炎は大森林を焼失させ、3日3晩も燃え続けた』


誰の話ですか?

俺の話じゃないですよね。


生徒会長とかに押し付けられないなか?

上級魔法を覚えれば、あながちウソという訳でもない。

極大魔法。

それはなし。


「ゴーレムの話とか、生徒会長の魔法とか、軍の戦略とかがごっちゃになって市中に流れているようです」

「大人気だった。何を買ってもオマケが貰えるのは嬉しいね」

「そうですね」

お姉さんらはそれなりに楽しんでいるようです。

「外に出るのはしばらく止めておいた方がいいと思われます」

「暴動が起きるかも?」

迷惑な話です。

でも、缶詰の私には関係ないことです。


 ◇◇◇


人の噂も75日といいますが、由来は様々あり、

江戸時代、為永春水(ためながしゅんすい)作で、天保4~6年(1833~35)刊の『春色辰巳園しゅんしょくたつみのその』に「人の噂も七十五日、過ぎたむかしは兎も角も…」と乗ったとか、米八と仇吉の恋争いと和解とを描く話と言う説が有力です。

不思議な事に、『源平盛衰記(げんぺいせいすいき)』に「人上は百日こそ申なれ」と書かれているので、鎌倉時代は100日だったようです。

他にも、

季節(春夏秋冬)の一つずつが、およそ 75日位とか。

農作物の種まきから収穫までが、およそ 75日位とか。

土用(どよう)の季節の変わり目が年に4回あります。70.5日とか。

そうそう、

お葬式の法要は「四十九日(しじゅうくにち)」でしたね。

外国には、A wonder lasts but nine days.(不思議なことも 9日間だけ)というのもあります。


この世界には「人の噂も60日」という話があるそうです。

旅団で帰省している間に噂も消えるという逸話です。

75日より短いですね。

あれ?

1日が1.5倍長いので地球時間に換算すると90日ですか。

長いわ。


 ◇◇◇


2日の早朝、屋敷の前に止まる長馬車の試作第1号が横たわります。

1日は西周り旅団が出発し、東周りは2日が出発です。

開発第一号の長荷車の5台も遠征の荷運び仕事を無事に終わり、残り5台も昨日納品されました。残りの10台は旅団が帰って来てからの納品になります。北でも10台が用意されますから旅団が帰ってくると、荷馬車30台運用のレンタル運搬業が始まります。

5人の御者は専属ですが、残る5人は臨時の雇用です。いずれは30人の御者と契約を結ぶことになります。

責任者はお茶会のお姉さん、大忙しです。


 ◇◇◇


さぁ、若い親方さんが力作の貴族用の長馬車に乗りますか。

今回は豪華な飾りを極力減らし、中身を広げたマイクロバスのように12人乗りの馬車です。客室に3人掛けの椅子が1つに、2人掛け椅子が2つ、折り畳みの補助椅子が2つと計9人が乗れます。さらに荷物室に3人分の仮椅子が設置されて、合計12人乗りです。

護衛は雇っていませんから荷物室は荷物を置くだけですよ。

お土産を一杯買って貰っておきました。


俺は町に出られませんからね。


詰めれば4人が座れる長椅子です。

補助椅子と出せば、3人がベッド代わりに寝ることも可能で、サスペンション付きの馬車です。

今回の旅が楽になるハズです。


俺が考案したシートベルトは未装備です。

体を縛るのは抵抗があるようです。代わりに壁に取っ手を付けて、それを握り絞めて体を自分で固定できるようにしました。


ドアを開くと…………えっ?


何故、小公女さん、紅蓮の助手さん、王都で出会った彼女が乗っているんですか?

「どうしても付いてくると言って断れませんでした」

「お世話になっている先生と嫁候補の二人だからね」

「帰ったら怖られます。頭が痛いです」

「たぶん、最初から諦めているって」

失礼なことをいいますね。


ガルゼミの他のメンバーはガルさんと2ヶ月間の合宿です。

今年は特に厳しいそうです。

「あぁ~言う主人を持った奴は、相当鍛えないと絶対に死ぬ」

あぁ~いうって何ですか。


さぁ、朝日が差す中、王都の集合地点に向かいましょう。


 ◇◇◇












<機密院>

それは薄暗い部屋の中に数十人の男が黒いベールを被って集まっています。

「特別会議をはじめる」

議長らしき男が宣言します。

「英雄の出現に付いてです」

「歓迎すべき」

「問題なし」

「吉兆なり」

概ね友好的なムードで終わろうとしています。


報告書にあるエルフの秘術は、神々に近し者として好感を持たれているのです。

「異議あり」

冷たく低い声で一石を投げ入れます。


「かの者は貴族の中に軋轢を作る不穏な石と鑑みる」

「それは如何に」

「1つ、王族への家臣を断った」

「1つ、遠征において貴族に多大な損失を発生させ、貴族の意志を分断した」

「1つ、王族を誑かし、堕落と破滅の道に導かんとする」

その男の周りの者が一人一人と声に出します。


「偏見という物だ」

「如何にも、分断とは如何なることか」

「堕落とは誰を差す。そなたこそ異端である」

「我が甥は王族に忠義の熱き家臣なれど、この度は不名誉な罵倒を受けている。我が希望の光は冷静さを失い生死を彷徨った。彼がいる所に禍が起こっている」


「語るに落ちたな」


「英雄は光、光ある所、影が増す、影が濃くなるのは当然の事。大海嘯(だいかいしょう)は近い。神が我々に与えられた恩恵に他ならない。愚問である」

会場が騒然となってゆきます。


カン、カン、カン、議長が静粛を促します。

(おさ) がはじめて口を開いて発します。


「神々の恩恵ならば良し、王室に災いを齎すならば滅する。鷹を放て」


「「「「「「「「「是」」」」」」」」」


鷹、機密院が飼っている情報ネットワークの事で監視対象になったことを意味します。

かの者が善なる者か、悪しき者かを見定めるのです。

しかし、鷹が動けば、園遊院のネズミに知れ、ネズミに引っ掛かると園芸院が飼っているキツネとイヌが放たれます。


自称天才君の親戚の口元がにやりと緩んだのであります。


 ◇◇◇


<大教会>

王都に近くには教皇の住む教会の集合地帯、通称『教会都市』に枢機卿が教皇に呼ばれて来ました。

教皇は寡黙に枢機卿を見下ろします。


「如何なる用で御座いましょうか」

「なにか報告することはないか」


教皇の横にいる総大司教が枢機卿に尋ねます。

はぁ、枢機卿は溜息を吐きます。

糾弾ごっこは大教会内だけでやって貰いたい。


枢機卿は教皇に次ぐ権力者ですが教会の事に口出しできません。

代わりに、王族、及び、諸侯の宗教的な行事は枢機府が派遣した職員によって執り行われるのです。枢機卿の手は諸侯に余す事なく広がっており、教会のごたごたに巻き込まれるのは迷惑なのです。枢機卿が予算を止めれば、大教会(教会都市)以外の教会はすべて困窮することになります。


いっその事、予算を一度止めてやろうか!

予算が止まれば、教会は回らず、信徒からの寄付金を全額大教会に送るなどという悠長な事ができなくなります。


ふ、ふ、ふ、考えるだけで枢機卿に笑みが浮びます。


「笑いごとではない。教会の威信をかけた重要な案件である」

「何の事か、一向に思い当たりません」

「しらをきるか」

「お教え頂けますでしょうか。総大司教殿」


総大司教の顔が歪みます。

教皇の代理としてしゃべっているのに、それを認めようとしないからです。


「よい、教えてやれ」

「はぁ」


やっと教皇が口を開きました。


「下民が王族より高い順列を得たと聞いた」

「軍務府の不手際で御座います。他意はないかと」

「下民の子を王族に嫁がせると言ったとか」

「戯言で御座います」

「順列を冒す者を正すのが神の教えである」

「戯言に付き合うほど、神は暇では御座いません」

「神の名を語るな。それは教皇の専権である」


話しになりません。

教会がすべてを取り仕切っていると勘違いも甚だしい。

大教会を除けば、教会は軍事的な何者も保有していません。

王国と一戦する気ですか。

かの者は皇太子のお気に入りです。

皇太子を怒らせれば、教会と言へタダではすみません。

この馬鹿者め。


「不要な詮議は混乱を招きます。ご自重下さい」

「自重、何を悠長なことを言っている」

「臣民を妄りに裁けば、王国の法に触れることになりますぞ」

「悪魔の呪法を用いる者を庇うのか」

「悪魔の呪法?」

「下民は無詠唱で魔法を使ったという。幼き姿をして無詠唱を使ったと言うならば、魔人族であるのは間違いない。悪魔を弾劾するのに法が必要か」

「どこから出た話しですか。それは確かなのですか」

「敬虔なる高貴な信者より得た確実な情報です」

「その者の名は」

「教えられませんな」


こう言った類いの噂は貴族につきものです。

それをいちいち疑っていては行政が進みません。

かの者は貴重な戦力です。

妬みでその戦力を失うことになるになれば、国家の損失です。

皇太子が怒り狂う様が目に浮かびます。


「話になりませんな。確たる証拠をお持ちになって、もう一度お呼び下さい。その折りにはわたしく自ら赴いて弾劾を致すことを誓いましょう」


そう言って枢機卿は退出する。


「如何したものか」

「代理官を送っては如何でしょうか」

「そちに任せる」

「御意」


総大司教が謁見室から出ると声を掛けます。

「三葉衆、控えておるか」

「「「はぁ」」」

「教皇からお許しが出た。先行して情報を得ておくように」

「「「畏まりました」」」

声だけを残して、男達は去ってゆくのです。


ふ、ふ、ふ、総大司教の顔が醜く歪みます。



転生は普通です。第二部.児童チートで優雅な(?)ドキドキ編〔完〕

ここまで読んで頂いてありがとうございます。

つたない文章で読み難いでしょうが、本当にありがとうございます。

少しでも読み易くなるように努力していますが、中々難しいですね。



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