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転生は普通のことだった!~3度目の人生、転生チートしてもそんなに巧くいくわけじゃないのよ~  作者: 牛一/冬星明
第二部.児童チートで優雅な(?)ドキドキ編、確かに女の子をはべらしますが、少女ですよ。
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39. タメオの大森林の大氾濫。

終わってみれば、この日が最初の攻勢だったのかもしれません。

このタメオの大森林を遠征した王国軍が半数を失って撤退したという記録もあります。

半数を失って原因は奥地に入り過ぎた事と記録に残っています。

本当にそうだったのでしょうか。

ここを狩り場にする冒険者は言います。

欲を掻くと命を失う。

適当に狩って引き上げないと、森が牙を剥くそうです。


外敵が入ってくると、

一斉に襲い掛かる蜂のように、

白血球のように、

森に1つの意志のようなものがあるなんて、

全然に気づいていませんでした。


 ◇◇◇


(3月12日)お昼前、昨日と同じような時間に魔物の大軍が襲ってきます。

「敵襲、敵襲」

見張りの兵士が大声を上げます。

「数は」

「判らん。とにかく、多い」

冒険者が階段を昇って壁の上に上がってゆきます。そして、目を丸くするのです。

そうです。

壁の外側の斜面を魔物達が這い上がってきているのです。しかも森からうじゃうじゃと後続が湧いて来ているのです。

「こりゃ、1000を超えそうだな!」

「魔法を解禁しよう。それでいいな」

「反対する他のパーティはいません」

「開口で集まった所から順番に潰してゆくわよ」

「迎撃用意」

弓士と魔法士が構えます。まずは飛行系からはじまります。


いつもの鳥が先頭を切って攻撃を仕掛けてきます。

見た目は雀にしか見えませんが、大きさが人サイズでクチバシの特攻が弾丸のように襲ってきます。一羽、二羽なら「鶏肉だ」と騒ぐ所ですが、100羽以上の雀が10羽編隊で襲ってくると正直に言うと嫌です。

これに対して、矢で対応すると間違いなく間に合いません。


否、そうでない人もいます。


一度に3本、それも速射で撃てるアチャ―ってスゴい。

あの人は例外として、普通は魔法士の対象限定の広範囲系、つまり、お馴染みのファイラーボールなどを打ち込んで対応しないと間に合いません。


突撃に失敗すると上空に舞い上がって旋回し、急降下して足の爪で捕まえようとします。

捕まると場外に連れて行かれてお陀仏です。

放置すると、入り込んで来た敵と上空からの挟撃に合うので早目に倒す必要があります。


雀以外の鳥系もいますし、別の奴が入ってきました。

滑空タイプの魔物です。

モモンガみたいに浮力で飛距離を稼ぐタイプと小さいながら翼がある奴の2種類です。

坂の上にある砦ですから、モモンガタイプは余りいません。

代わりに跳躍が凄いトラか、猫のような奴がやってきます。


こちらははっきり言って対応できません。

砦が広すぎるので、この人数で守りきるのが無理なのです。

襲ってくるまで放置です。

おっ、初登場。

トラのタテガミに羽の付いたフォルムはどこかの神話でも出てきそうな魔物ですよ。

「あれはウイングレオよ。話で聞いたことがある」

名前も安直です。

「あれは森の奥に生息している魔物のハズなのに」

「先生は戦ったことがありますか」

「ないわね。遠征でもあいつに出会ったことはなかったわ」

紅蓮さんは王国軍の魔術士として参戦しています。

その紅蓮さんがあったことないって?

王国の遠征って、どこまで進入しているんだ。

「遠征に期待しているようだけど、あれはお祭りよ。たったの3日で大した成果が上がる訳ないでしょう。訓練と称している地道な狩りの方が討伐数は圧倒的に多いのよ」

「なるほど、この遠征はセレモニーですか」

「そう、民を安心させる為にやっているのよ」

紅蓮さんがそう言ったとき、俺は別のモノに目を奪われます。


ニワトリです。


俺は思わず、指を差して声を上げます。

「丸々と太って旨そう。あれ、飼えませんか」

「時々、馬鹿なこと言うな」

「確かに美味しそうだけど、さすがに飼えないわよ。飼育者が食べられちゃうわよ」

「でも、あの大きさですよ。あれなら何人分の卵を産むか判りませんよ。卵焼きが食べ放題です」

「卵焼き! うん、確かに卵が安くなるのは嬉しいかも」

「おい、このチビに感化されて馬鹿になっていないか」

「そんなことないもん」

確かに小公女さん、最初に会った時の神々しさが無くなって、行動が幼くなっている気がしますね。


現実、人の2倍はあるニワトリを飼うのは難しいですよね。

冒険者の一刀で軽く首が飛んでゆきます。

じゅるるるぅ、今日は鶏肉です。


まぁ、魔物は梯子を使って壁を越えて来ようとしないのが幸いです。

でも、要注意もいます。

魔物の癖に魔法攻撃をする奴とか、

背中の針や唾を飛ばして物理攻撃がやってきますから油断大敵です。

そろそろ、開口部に魔物が詰まってきます。


ウチの先輩方に負けない魔法攻撃が始まるようです。

『ギガ・ウェイブ』

『爆砕火炎』

『連環地獄』

魔導士クラスの高出力で広範囲攻撃が炸裂し、魔物100体程度が一瞬で討伐、あるいは、消滅します。

これを順番に7人の魔導士が一斉に撃ち出せば、魔物が1000体でもあっと言う間にお陀仏です。

今回は1000体以上、2000体近くいますか?

「まだ、残っているぞ。油断するな」

冒険者のリーダー格の人が大声を出します。


前回と同じく東の広場に魔物が溢れてきます。

丘の上に布陣しているので、東に出た魔物が斜面を上がってきます。

最初は足の速いチーターのような奴です。

こいつら、開口部で群れる前に通過するので厄介ですよ。


数がまだ少ない魔物が坂を上ってきます。

魔物を単体狙撃しかありません。

「おらぁ、避けるな!」

小公女さんは速射魔法が得意でないようでよく外します。

アイススピアー×3

「トラ型は俺がやります。魔力を温存して下さい」

「うん、うん、頼りにするよ」

随分とあちらこちらから入られていますが、大した問題はありません。

こいつらが嫌らしいのは城壁を軽々と超える跳躍力を持っていることです。

予想外の方向から襲ってくる事もあります。

まぁ、後ろから襲われても魔法に死角はないですよ。

アイススピアー×3


時間が経つと今朝のように東の広場に魔物が溢れて、俺達を目指して上がってきます。

流動の土(フロー・ソイル)

滑り落ちた魔物と上がろうとする魔物で交通渋滞を起こし、生徒会長の一撃が炸裂します。

業火爆風(インフェルノ)

はい、第1陣の処分終了です。

後続が続いて入って来ていますから、しばらく、また単体狙撃ですね。


開口部で3つくらいの爆音が響きます。

魔導士が多いと魔物の大軍も関係ありません。

兵士は冒険者と一塊で行動していますから危険はありません。

こういう言い方は変ですね。

剣技のみに限定すれば、先輩達より格上の人が多くいます。

主に治療ですが魔法使いもいます。


俺達のパーティは斥候1人に魔法士5人と奇妙なパーティを組んでいます。

俺や紅蓮さんのように前衛の魔法使いは少ないそうで、魔法使いの基本は後衛です。

尤もAクラスの魔法使いになると、棒術や剣技も一流になってきます。


落とし穴の次いでで作った城壁の上の広い場所に集まっています。

ルームとでも呼びましょう。

幅の狭い場所では戦い難いみたいで、そうなったようです。

通路を広くして上げたいですが時間がね。

…………

まだ、この人数なので問題ないようですが、いくつかルームを増やしておいた方がいいかもしれません。


随分と数も減ってきました。

東も増えてきます。

2度ほど流動の土で追い返して、こちらは生徒会長が2度目の炎の魔法で終わりです。

砦の後ろと正面の補強。

どっちを先に優先した方がいいのでしょうか?

とりあえず、魔導士が火力で、まだまだセーフティーゾーンです。


 ◇◇◇


戦闘が終わっても、砦に入り込んだ残存の片付けに魔物の処理と大忙しです。

兵士が100人くらいでは手が足りません。

何やら冒険者と指揮官が揉めています。

「はっきり言おう。この仕事は金貨1万枚というはした金でできる仕事じゃない。金貨10万枚だ。それが嫌なら俺達は帰る」

「待ってくれ! 俺の独断で判断できる額じゃない。上は伝える。それでは駄目か!」

「駄目だ。割に合わん」

「確かに急に魔物が増えたことは認めよう。しかし、十分に対応できているじゃないか」

「指揮官さんよ。さっきの魔物を見てないのか」

冒険者のリーダー格の人が頭を掻きます。


話が通じないので困っているようです。

「要するね。さっき、現れた魔物は森の奥深い所の魔物なのよ。ここに居てはいけない魔物なのよ。もしも、あれより厄介な魔物が出現するようなら、兵士を守りながら戦うなんて事ができないって言っているのよ」

指揮官が顔を引き攣らせます。


実際、馬出から侵入する魔物は冒険者と兵士で対応できていますが、壁を無視する飛行系やトラ系の奴はすばやいので兵士では対応できていないのです。


冒険者のリーダーはここらで引き上げた方が安全だという忠告です。

冒険者が勝手に持ち場を離れたからという言い訳を作って上げているんですね。

顔は厳ついですが、心根は優しいようです。


あ~ぁ、それだけじゃないようです。

ちらちらと俺達の方を見ています。

その視線の先は俺じゃないです。

やはり小公女さんです。

次に紅蓮さん、次いでに王都で出会った彼女でしょう。


確かに、可憐な少女が獰猛な魔物に引き裂かれて死んでゆくのを見たくないのでしょう。

「あれより強い奴が出てくるんですか?」

「強いかどうかは判らないわ。でも、魔法が利かない厄介な奴がいるのよ。黒い触手がにゅるにゅると出て、それに触れると魔法がキャンセルされるのよ。私達は『鵺』と呼んでいるわ」

「鵺、そんなにヤバいんですか」

「強さは……そうね。私の棒術でも倒せるくらいかしら」

魔導士のお姉さんの腕は相当だったと記憶します。

しかも高速詠唱を3つも同時に唄える平行詠唱を使う人です。

平行詠唱をする人をはじめて見ました。

それはともかく、魔法の利かない的は物理攻撃で定番です。

「槍と弓で何とかしないといけませんね」

「意外とすばしっこいから大変なのよ。彼女を専属に廻してくれるなら何とかなるかもしれないけど、そうなると空が手薄になるのよね」

彼女、弓の名手さんです。

ここに来て人手の少なさが露呈します。

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