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転生は普通のことだった!~3度目の人生、転生チートしてもそんなに巧くいくわけじゃないのよ~  作者: 牛一/冬星明
第二部.児童チートで優雅な(?)ドキドキ編、確かに女の子をはべらしますが、少女ですよ。
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25.ラビのゴーレム。

ずどん、ずどん、ずどん、鈍重なゴリラゴーレムも身長20mの巨人になると、その1歩の距離も馬鹿にできません。あの太く長い手に押し潰されるのは願い下げです。

俺が一人で倒すというのは避けたかったのです。

賢者の日記に強過ぎる力は為政者にとって都合がよく、便利使いされるだけでいい事がなかったと残されています。

その轍を踏みたくないと思っていたのですが、どうしてこうなるのでしょう。

神のイタズラですか?

悪魔の囁きですか?

土系の土木作業が得意でいいんです。

雑魚狩り専門と罵られる程度がいいんです。

どうしましょう。

レールガン擬きで吹き飛ばすか、多数のアイスランスで串刺しするか、はじめて使う中級魔法で爆裂粉砕するか、それともでっかい落とし穴で時間を稼ぎますか?

悩み所です。

お茶会のお姉さんがタオルを取り出して、赤毛のお姉さんに渡しています。

少し考える時間が欲しかったので近場のゴーレムを瞬殺しておきました。

赤毛のお姉さんは一息付く為に戻って来た所です。

お姉さんら以外は巨人を見て茫然と見上げています。

後ろにいる生徒のほとんどは絶望している感じでしょうか。

騎士達でも覚悟でも決めているのかな。

護衛達は対象の王子と貴族だけを逃がす算段でもしていそうですね。

雇われ冒険者は逃げるでしょう。

大きいゴーレム8体を瞬殺したのが悪かったのか、ガルさんはもう俺に手綱を預けているようです。 

「随分と落ち着いていますが、怖くないのですか?」

タオルで汗を拭き、お茶を受け取って一息付いている赤毛のお姉さんとお茶のポットも持っているお茶会のお姉さんに第3王子が聞きます。

「「大丈夫です」」

「信頼されているのですね」

「「はい」」

その屈託の無い笑顔で答えるのは止めてくれせんか。

第3王子が俺を興味深そうに見つめています。

あぁ~やっぱり、派手な魔法は使いたくない。


 ◇◇◇


ずどん、ずどん、ずどん、地面が揺れているような気がします。

はっきりと見える距離まで近づいてきました。

小さな岩がごつごつと見える不格好なゴーレムです。

否、ゴーレムの本体にこびり付いている岩が歩く度にぼろぼろと落ちているんですね。

頭の上のヘブライ文字もはっきりと見えます。

思い出せ!

ゴーレムの儀式だ。

ラビ(律法学者)は断食や祈祷などの神聖な儀式を行った後、土をこねて人形を作ります。そして、呪文を唱え、「אמת」(EMETH)を人形の額に貼り付けることでゴーレムは完成すると伝えられています。

壊す時はどうすると書かれていた!

にやり、試してみる価値はありますね。

あのゴーレムの頭の上にヘブライ文字がある事がおかしいのです。

俺は手をゴーレムに向けて、そして叫ぶのです。

『アイススピアー』

音速を超える氷の針3本が「א」(E)に命中し、その文字ごと大きく抉ってゆきます。

どうだ!

これで止まったらブラックジョークだ。

ぴたぁ~。

俺は思わず口を緩めてしまします。

がら、がら、がら、巨大なゴーレムが岩となって崩れてゆくのです。

きゃあ、抱き合って喜んでいます。

「やった」

「やりました」

第3王子も目を丸くして訳が判らないという顔をしています。

他に見ている者も茫然が唖然に変わります。

ガルさんもメイド服(薬)の教授も口をあんぐりと開けています。

そりゃ、そうでしょう。

止めた俺は一番に驚いていますよ。


 ◇◇◇


巨大ゴーレムが崩れると、他のゴーレムも崩れていったので戦闘は終了しました。どうやらあれが指揮ゴーレムだったようです。

全員生き残ったことが奇跡のように思えたのか。

抱き合って泣いている者もいます。

「30分だけ休憩にする。すぐに撤収するから気を抜くな」

ガルさんの指示にみんなが腰を落として疲れを取り、怪我人はその間に治療とかをその間に済ませておきます。

俺が休憩していると第3王子が前に腰を下ろし、しばらく俺を見続けているのです。

「聞きたいことがあるなら答えてやるぞ」

「何が起こった。そして、何を隠している」

「聞いている意味が判らんな」

「ふざけるな。あの怪物が簡単に倒せるものか! あの巨人だ。城壁すら意味をなさない怪物がたった一撃で倒せるものか。あり得ない。そう思われて不思議と思わないか」

「うん、不思議だ。俺も倒せると思っていなかった」

第3王子の手が剣の柄に伸びます。

まだ、抜いていません。我慢しているのでしょう。

「あの頭の文字を覚えていますか」

俺はお茶会のお姉さんの方を向いて、そう声を上げます。

「ヘブライ文字で「אמת」(EMETH)が『真理』と書かれていました」

「それがどうした」

「ヘブライ語は異世界の文字だ。その文字から「א」( E )の一文字を消してほしい。どうなると思います」

「僕が知るか!」

「あっ、『死んだ』になります」

「正解。 「אמת」(EMETH)が『真理』で、そこから「א」( E )の一文字を消し、「מת」(METH)にすると『死んだ』となる。俺の世界の伝承では、ラビという魔法士がゴーレムを生成する時に頭に「אמת」(EMETH)と書き、壊す時には、「א」( E )の一文字を消して壊したと残っています。」

「まさか!」

「そう、その『まさか』です。試して成功した俺が一番びっくりしています。まぐれですよ」

「まぐれじゃないよ。相手の弱点を一撃、カッコいいじゃない」

「そうです。神様に愛されている証拠です」

お姉さんらはブレません。

一方、第3王子は何か深く考え込んでいます。

王子は深く考えるタイプのようです。

誰がこんな悪戯をしたのか?

俺は考えたくないですね。

少なくとも人智の及ぶスケールから離れ過ぎています。


 ◇◇◇


俺とガルさんのポジションが交代して、撤退再開です。

俺とガルさん、どっちが強いかという質問に答えられませんが、どっちがゴーレムに相性がいいかと言えば、俺に軍配が上がります。

ガルさんは剣で、俺は魔法です。

ある程度後退すると攻略エリアを抜けたのか、再び、ゴーレムが襲い掛かってきます。

現れたゴーレムを遠距離で狙撃します。

近づいてくる頃には正面のゴーレムは全滅です。

横から回り込んでくるゴーレムは高々数体ですから騎士と護衛方々で処理しても時間は掛かりません。

もちろん、敵が減った訳ではなりませんし、俺が殲滅している訳でもありません。

ゴーレムの足より俺達の行軍速度の方がわずかに速い為に、俺達の後ろにゴーレムの大軍で付いて来ているのです。

「ねぇ、ねぇ、このまま砦まで戻ったら問題にならない」

「なるでしょうね」

「それって、かなり拙くない」

「先生が戻って退治してくれていいですよ」

「無理、無理、無理、君みたいに遠距離攻撃できる魔法を持っていないから」

どうしてない?

メイド服(薬)の教授ならすぐに覚えられるでしょう。

「とりあえず、森に入るまでは放置していいと思いますよ」

「あっ、なるほど。山の境界を越えられるかを確認するのね」

「そういうことです」

結果から言えば、ゴーレムは森に下る坂道の手前で止まった。

魔物を倒して経験値が手に入るなら、この遠距離攻撃し放題のシチュエーションは美味しいのだが、この世界に経験値制という概念はない。しかもゴーレムは素材としての価値がほとんどない。

そのまま放置して砦に戻り、おいしい食事を取るとお風呂で疲れを癒し、翌日は予定通りの帰路についた。途中で野営の訓練をして、翌日のお昼に学園に到着すると解散した。

中々に疲れた遠征でした。

折角、荷馬車で行ったのに、まったく魔物素材を回収できず、部費の足しになりませんでした。


 ◇◇◇


部費と言えば、

巨人のゴーレムから手で握れるほどの魔石を護衛の冒険者が回収してくれました。護衛の冒険者は他にも大きかったゴーレムからは小指ほどの魔石が回収し、足元の岩の影に小指の爪ほどの魔石も回収していた。

この大きな魔石は俺が倒したという事で俺の物となり、その他は回収した護衛の冒険者に譲ってあげます。

この魔石を冒険ギルドで売却すると金貨100枚の値が付いたのはびっくりです。

びっくりしたのは俺だけではありません。

近場でこんな大きな魔石が回収できることにびっくりしたギルドはキルドマスター立会いで回収方法を金貨30枚で買い取ってくれたのです。

1000体ぐらいのゴーレムと10体の大型ゴーレムを倒すと、巨大ゴーレムが登場し、この巨大ゴーレムの中に魔石が眠っている。

発現条件を聞いたギルドマスターと職員はがっかりと肩を落としたのは言うまでもありません。ガルゼミ、ウガラスゼミ、さらに護衛が20人でできた回収と思ったでしょう。

ヘブライ文字の秘密は教えていません。

ギルドマスターが聞いてきたのは、発現条件であって討伐方法じゃないですからです。

この討伐方法は金貨30枚では安すぎます。

さて、さて、金貨100枚を目当てに依頼を受けるパーティがいるでしょうか?

効率的にどうかは疑問ですね。

因みに、この金貨30枚はガルゼミとウガラスゼミで分割するつもりです。

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