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転生は普通のことだった!~3度目の人生、転生チートしてもそんなに巧くいくわけじゃないのよ~  作者: 牛一/冬星明
第二部.児童チートで優雅な(?)ドキドキ編、確かに女の子をはべらしますが、少女ですよ。
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19.伐採場、再び。

日が昇る前から出発しても馬車で3時間も掛かる場所です。

お尻が少し痛くなった頃にやっと到着です。

ガランとしていた正面にも立派な門が出来上がり、敷地では若い親方さんをはじめ、木工に関わる職人が勢ぞろいして俺達を迎えてくれます。

「おぉ、待ちわびたぞ」

「お久しぶりです。立派な門が完成しましたね」

「当然だ。あそこまで準備されて半端なもんが造れるか! 今ある最高の技術をぶち込んでやった」

「これは豪勢に造りましたね」

「あたぼうよ」

金枠と金枠の間に彫り絵を張り付けて、ロダン『地獄の門』を思わせる豪華な造りになっています。どこかの貴族が見れば、ウチの城壁門も豪華な造りで飾ってくれと言い出すかもしれません。

「すばらしい芸術よ。これも君が指示したの?」

「違います。親方がやったんです」

「綺麗なご夫人だ。このご夫人も坊主のこれかい」

若い親方さんが小指を立てて、赤毛のお姉さんとお茶会のお姉さんと教授を見比べてにやにやと頬を緩めます。

「違います。学校の教授ですよ」

「先生か。こんな美人に教えて貰えるとは羨ましい奴だ」

「親方、こんな所でしゃべってないで、まずは切り出しを始めましょう」

「おぉ、そうだった」

まずは木材の切り出しです。

大型の木工車を何台も並べて先頭を俺達が進んでゆきます。

案内するのは(きこり)のおじさんです。

家を建てる為の木材、樹齢30~40年くらいまでは高さも18~23mくらいで直径25~30cmくらいまでですから樵さん達が切り倒していますが、樹齢70年くらいになってくると高さも30~40mとなり、直径も1mを越えて1本を切るのに大変な労力が必要となってくるのです。

まず簡単に風の刃で下の方の枝木を切ってすっきりとさせます。上の方はクッションになって貰う為に少し残して置きます。倒れて欲しくない方向に浮遊盾を発生させて、大型の風の刃2枚でVの字に根元を切断すると大木がゆっくりと倒れてくれます。倒れた大木に残る枝木を切って、浮遊魔法で浮かせると台車に積み込み、作業員が大木にロープを掛けて固定すると1本目を運び出してゆきます。

半日仕事を所要時間約10分で片付けます。

浮遊フロォゥトゥの魔法は俺の専売特許ではありませんから、伐採場での荷卸しは作業専属の魔法士に任せておきましょう。

「ねぇ、ねぇ、彼はいつもこんな事に魔法を使っているの?」

「そうですね。こんな感じです」

「本人曰く、得意な魔法は生活魔法だと豪語しています」

「これが生活魔法? 攻撃魔法じゃない」

「先生、逆です。生活魔法を極めると攻撃魔法にも使えるそうですよ。私は魔法が使えないのでよく判りませんが」

「これくらいで驚いていると身が持ちませんよ」

赤毛のお姉さんもお茶会のお姉さんも俺のことを褒めているんだよね。

たぶん?

気にしても仕方ないので作業を続けます。20本近い大木を切り出して午前中を終えたのです。

伐採場に戻ってくると、荷卸し専属の魔法士3人がバテています。

「おい、がんばれ! 最後の1本だ」


 ◇◇◇


俺が最初に作った小屋は事務所兼食堂として使っているようです。

帰ってくると食事を用意してくれています。

イノシシのソテーをメインに山菜を色々と用意してくれています。

おいしいので食も進むというものです。

「坊主、ちょっといいか」

「はい、いいですよ」

「高級食材は手に入らないので口に合うかどうか知らんが済まんな」

「いえ、おいしく頂いています」

「それで窯の話しなのだが」

若い親方さんから金具を作る炉窯も造って欲しいと頼まれて、山の斜面を利用して幾つか造ったのだが、よく考えてみると鉄を溶かす炉窯ではなく、焼き物を焼く陶芸窯であったと帰ってから気が付いたのだ。

そもそも鉄を溶かす炉窯がどんなものか知らないのです。

「すみませんでした。炉窯がどういうものか判らないので」

「それはいい。こちらで手配するようにした」

「すみません」

「その窯だが、ふらっとやって来て陶芸家が登り窯を気にいったらしい。何箇所か手直しして欲しいそうだ。こっちが終わったら行って貰っていいか」

「判りました」

食事を終えると続きを始めます。

切った木は自然乾燥だと半年から1年くらい乾燥させないと歪が起こります。大木になると乾燥期間も長くなり2年から4年くらいも掛かってしまします。

とても来月の試験運用に間に合いません。

木工師の中には木の精霊に働き掛けて乾燥を早める魔法もありますが、優秀な魔法士が木工師になることはめずらしいのです。

その魔法を解読するまでもなく、火の魔法で乾燥させればいいだけの事です。今日切った大木21本と、すでに切ったあった普通の丸太100本余りを乾燥させてゆきます。

要領は電子レンジで木全体を温める感じ、ファイラーを拡散して打ち出します。

この魔法の利点は、木材のひび割れと変形が少ないことです。

おそらく自然乾燥では含水率の差が外側と内側で異なって変形していたのでしょう。

つまり、30mクラスの電子レンジを作れば、変形やひび割れのない木材が作れるということになります。

じわぁ~と木材の上から湯気が沸けば完了です。

普通の丸太でファイラー1発分、大木でも3発から5発くらいで湯気が立ちます。

「さっきから何をやっているの?」

「火の魔法を打っています」

「燃えていないじゃない」

「燃やしちゃ駄目でしょう」

メイド服の教授さんは首を傾げます。

燃えない火の魔法、そういう発想がどこから出てくるのかが判らないのです。

「これって、お弁当を温めてくれた魔法と一緒だよね」

「ええ、そうです」

「お弁当?」

「そうだよ、先生。ハイキングや視察に行ったときにお弁当を温め直してくれの。でも、熱を入れすぎると、パンがパサパサになったり、おかずが固くなるから中々に調整が難しんだって。でも。便利よね」

「お弁当を温める為の魔法?」

それを聞いて、教授はファイラーボールを池に落としてお風呂を作った子の事を思い出します。魔法式から作り直すという発想はありませんでした。

「便利ですよ。木に熱を入れるのはお弁当を温め直すより簡単だと思います」

「そうね」

教授も同意します。

火の精霊が火を付ける直前で詠唱を中断すれば、できるハズと魔法式と詠唱を組み直してみます。そして、確信するのです。

うん、確かにできる。

乾燥が終わると、木々に硬化魔法を掛けてゆくのですが、メイド服の教授さんはまた驚くのです。土の魔法で土塀を作り、それを硬化させる魔法はよくあるポピュラーな魔法です。しかし、それを木で応用するにはかなり高度な魔法式の書き換えが必要となります。

なんと言っても、属性が土から木に代わるのです。

土の精霊と木の精霊では、趣向と性格がまったく違うからです。

土の精霊は落ち着いた感じで警戒心が強く、真面目にコツコツと働く感じがあります。

一方、木の精霊は水と風の精霊を好み、光の精霊を友とし、気品が高く、優雅さを求める感じです。

真面目な土の詠唱と優雅さを求める木の詠唱は根本的に性質が異なるのです。

まったく、異なる魔法式と詠唱になってしまうのです。

頭の中で簡単に書き換えることなどできそうもありません。

「あの子はどこまで精霊を理解しているの?」

「その質問には答え兼ねます。私も魔法に詳しくありませんから」

「あっ、でもさ。エルフの里で秘境の温泉に入ってきたって言っていたね。胸がおっきくなる奴」

「あれは胸が大きくなると限らないそうです」

「えっ、そうなの?」

「はい、女神アルテミス様、女神アマゾネス様の加護を巧く貰えれば、胸が大きくなるそうですが、女神ネクベト様の加護を受けるとぺったんこになるそうです」

「ぺったんこ、それは嫌だな」

「その話をもう少し詳しく」

「先生は十分大きいから入ると大変なことになるよ」

「胸の話はいいのよ。あの子も加護を受けたの?」

「加護を受けたのは女性だけです」

「そう、加護はないのね。でも、エルフか」

お茶会のお姉さんはメイド服の教授にそう言い切った。

俺が加護を受けていのかが気になっているので、例外の話はしなかったのだ。

エルフと言えば、魔法のエキスパートです。


 ◇◇◇


簡単な作業でも数が多いので時間が掛かります。

日が傾き始めると、次の予定でお茶会のお姉さんが事務所に呼ばれます。

俺は山側の陶芸家の所に行って登り窯の改善を行うと、粘土が少ないとボヤいたのです。

いや、粘土は作れますから面倒だという程度の事です。

「次いでに作ってから帰りましょうか」

「簡単に造れるのか」

「ええ、簡単ですよ」

「じゃぁ、1つ頼もうか」

こんな感じで安請け合いです。

裏戸から外に出て、川近くの裏山で地盤改良を行うのです。

まず、土の魔法で一体を液状化させ、木の根や昆虫などを除外して吐き出します。

石などは分子レベルで粉砕して、混ざりっけのない均質なモノにして水分を少し飛ばします。これで粘土のようなモノの完成です。

これにもう一工夫です。

軽く硬化魔法を掛けると分子同士の距離が縮み、焼き上がった後の収縮が小さくなるのです。むかし、山ほど野焼きで壺を造った事があるので粘土造りは得意なのです。

「こりゃ、いい粘土だ。ありがとうよ」

「どういたしまして」

陶芸家さんも喜んでくれた。

「随分と硬化魔法が得意なのね」

「えぇ、浮遊盾と同じで無属性ですから使い勝手でいいんですよ」

「無属性なのぁ?」

「無属性です」

「それがエルフの秘術か」

「何の事ですか」

メイド服の教授さんは俺が恍けたと思ったのか、肩を少しゆすって言い直した。

「魔法に関して詮索はしないわ。その代わりにと言うか、お札代わりに私を師匠とするのはどうかしら?」

「特に師匠が欲しい訳では」

「うん、判っている。私の名前を貸すだけよ。でも、野良の魔法士では無くなるのが大きいよ」

「野良ですか」

「ええ、野良の魔法士から無理矢理にあなたの魔法の秘密を聞き出しても誰も咎めないけれど、私の弟子ということになれば、そうはいかない」

「具体的にはどういうことですか」

「魔法省の登録されている魔導師、魔術師、魔法師とその弟子達があなたを襲うことがなくなるわ。魔法的な意味でね」

「あぁ、教授が所属する魔法知識だがら手を出すなという事になるんですね」

「そういう事。私の師匠は学園一のウガラス教授の兄妹弟子でね。かなり勢力を持っているわ。抑止力としては十分だと思うわ」

「それは俺以外の子にも適用できますか」

「君の弟子?」

「友達です」

「えぇ、私の弟子として登録しておけば、効果を発揮するわよ」

「それではよろしくお願いします。師匠」

こうして俺は魔法の師匠を手に入れることになった。

「俺の魔法を教えるつもりはありませんが、1つだけヒントを上げます。魔法発動の条件は詠唱のみではない」

「それは当然でしょう。神が詠唱を唱えたとは聞いたことがないわ」

「でも、この世界の魔法使いはみんな詠唱することで魔法を使っている」

「それも当然でしょう。人族は…………あるの?」

「さぁ、どうでしょう」

「意地悪ね」

「魔法使いは自ら真理に辿り着かなければなりません」

「師匠みたいなことを」

「基本ですよ」

ふん、メイド服の教授さんは顔を横にツンと向けたのです。

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