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転生は普通のことだった!~3度目の人生、転生チートしてもそんなに巧くいくわけじゃないのよ~  作者: 牛一/冬星明
第二部.児童チートで優雅な(?)ドキドキ編、確かに女の子をはべらしますが、少女ですよ。
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18.マッドサイエンティスト、人体実験。

教授のガルさんは基本的に放任主義ですが、1回生の間は責任を持って技量を高めることに協力してくれます。朝早くから晩の遅くまで1回生は訓練所を使って剣や魔法の技術を磨くのです。

早朝に10km走を走り、アスレッティックな訓練所を巡ります。それから朝食を取って柔軟体操をして、ガルさんを相手の剣の稽古が始まります。昼食なしの昼休憩を取ると、山道を30kgの完全装備で100km走です。山道という言うより獣道ですからアップダウンが多く、道もガタガタです。しかも魔法の使用は禁止ですからかなりキツい運動です。それが終わるとガルさん相手に剣の稽古で終了です。

今日は初日、これを1回生は1週間(10日)も続けるというのです。

「疲れたわ。こんな毎日も激しく動いたのははじめてかも」

「私は運動が苦手なのですが」

「今晩は筋肉痛になりそうです。先にヒールとキュアを掛けておきますか」

「それは駄目ですよ」

そう、話しに加わってきたのはお茶を出してくれているメイド服を着たお姉さんです。なんと、隣のゼミの教授でした。

「ヒールとキュアを掛けると、このお茶の効用が切れて大変なことになりますよ」

「この朝から飲まされているお茶ですか?」

「えぇ、滋養強壮に加え、疲れ物質の除去と組織破壊の防止をしてくれる魔法茶です」

「これ、魔法茶ですか?」

「えぇ、気が付きませんでしたか」

「はじめてです。これが魔法茶ですか」

「魔法茶と言っても色々ありますからね。これは私のオリジナルブレンドです。名付けて『肉体改造君121号』です」

あからさまに怪しい名前が出てきました。

「このお茶にはリフレクションの魔法が組み込まれています」

「リフレクションって、反射って意味でしたよね。何を反射しているんですか?」

「いい質問が返ってきましたね」

メイド服の教授さんは嬉しそうにニヤリと笑います。

「細胞って、知らないか。まぁいいわ。とにかく、体の小さい部分をリフレクションで隔離して、どんな虐めても壊れないようにしている訳よ。運動限界を突破する魔法茶なのよ。貴方達の細胞は疲労という名の力が細胞に掛かっている。それを無理矢理に圧力窯の中に閉じ込めているから穴でも開ければ、風船が割れるようにパンクするのよ。間違ってもヒールやキュアを掛けないようにね」

疲れていないのではなく、疲れを感じないようにする薬、ドーピング剤じゃないですか。

「体は大丈夫なんですか?」

「大丈夫、大丈夫、朝に食べて貰っているプロテインが疲労因子を食べて筋肉に変えてくれるのよ。しかも、筋肉モリモリの見苦しい体にならないという優れものなのよ」

「他には?」

「聞きたい?」

「是非に」

「今年は成長ホルモンを刺激する魔法薬を加えたから成長率がどれだけ上昇するかが楽しみなのよ」

マッドサイエンティスト、人体実験じゃないか!


 ◇◇◇


酷い目に遭いました。

1週間後、若い親方さんに頼まれた木材の切り出しクエストの日です。

「どうしているんですか」

「おもしろそうだから付いてきたのよ」

メイド服(薬)の教授さん、馬車のドアを開けるとちゃかり座っていました。メイド服の教授さんに協力的なガルさんですがガルゼミの生徒は肉体派が多く、魔法派の生徒がいなかったそうです。

ゼミの訓練が入る前に体力測定と魔力測定をされました。

そんな便利な道具があるんですね。

普及していないので目安にしかならないそうですが、魔法都市の学生は魔法も優れた方が多いので参考になります。

魔法のランクは、8ランクあります。

魔法士―魔術士―魔導士―魔法師―魔術師―魔導師―賢者―大賢者

魔法士は、文字通りで魔法が使える者です。

魔術士は、中級魔法を酷使できる魔法使いです。

魔導士は、上級魔法を酷使できる魔法使いです。

一般的な魔法ランクはこの3つで現します。

魔法師、魔術師、魔導師は権威のランクで魔力量より魔法論文や社会への貢献度で評価が変わります。ですから、魔法量が余りなくとも魔法師の称号が送られることもあれば、魔法師として品格がなければ、魔法師の称号を得ることはありません。魔法師の称号を持った方は、弟子などに魔法士から魔道士の称号を与えることができるのです。

「結局、称号は誰か決めるのですか?」

「私もそれを知りたかったです」

「俺もです」

「魔法協会?」

「何故、疑問詞?」

「魔法協会は正式名称では存在しないのよ。魔法互助会のようなもので不定期に魔法師達が集まり、あの者と、かの者にあの称号を与えようと決めるのよ。それを魔法省が受け取って正式な称号として通達されるのよ」

「それ何ですか? 意味判りませんが」

「私はずっと魔法省が発行していると思っていました」

二人のお姉さんは意味が判らないようです。

俺には少し判りました。

こちらの世界の魔法師の話ではありませんが、賢者の愚痴が書き綴られたページがあります。研究型の魔法使いは自分の研究に熱中する余りに賢者の都合を簡単に破るのです。人類が危機に瀕しているのに我儘の言い放題で、賢者も呆れて罵倒したと綴られていました。この世界では実務派より研究型の方が多いでしょう。

「もしかしてサロンのようになっていませんか」

「サロン! 言い得て妙。そんな感じなのよ。魔法協会の会合は魔法師の称号を持てば誰でも参加できるのだけれども、魔導師が三名以上か、魔導師2名と魔術師が3名以上いないと会合と認められないのよ。その会合の参加率の悪さが酷いのよ。10回も開催して、一度も成立しなかったということもあるのよ」

メイド服の教授さんの愚痴が始まった。

開催は魔術師以上なら誰でも開催することができるらしい。

場所と日程を魔法省に届けると、魔法省が各地の魔法の導師に開催を伝えるそうです。でも、都合が悪いと断るのが多く。行くと言っておきながら直近になって辞める者も多いとか、忘れていたというケースも多いのです。

開催日程は3ヶ月以上前に決めると定められていますが、守らない導師が多く。最悪の場合、10日後に行うとか無茶を言うそうです。

そんなものなのでしょう。

「私もね。魔法師になったばかり頃は会合に出るのが義務と思っていたのよ。城壁市アサまで10日間も掛けて行ったら呼びかけた魔導師も欠席していたのよ。どう思う。会合が成立しないのは仕方ないとしても呼び掛け人まで欠席する会合って信じられないでしょう。そういう身勝手な連中が集まっているのが魔法協会なのよ」

メイド服の教授さん、中々のお冠です。

そんな無責任な魔導師達ですが、それを放置する訳にもいかないのです。

なぜなら、高等科に進学する魔法使いは王国の3割くらいしかいないからです。

残りの7割は教会か、独学か、魔法師以上の魔法使いの弟子になります。

特に貴族では優秀な者ほど高名な魔導師の弟子にしようとします。

魔法血統の貴族なら系列の魔導師も多いので、高等科に進学するのは長男くらいです。

優秀な魔法師の5割以上が魔導師達の元で育ってくるのです。

宮廷魔法師の8割が魔法師から魔導師の弟子で構成されているのが現実なのです。

つまり、どれだけ我儘を通しても王国として処罰できないのです。

「宮廷魔法士の子らは割と良い子が多いのよ。あんなにいい子達がいずれ歪んでゆくのよね」

メイド服の教授さんが遠い目でそう言います。

魔導師の事をボロかすのように言うメイド服の教授さんも、俺やお姉さんらを使って人体実験を繰り返しているのですから大概です。

「ねぇ、ねぇ、魔法師って、みんなこんな風になるのかな」

「それが現実というものなのでしょう」

「これ以上は歪んで欲しくないな」

「私達の努力でなんとかしましょう」

「そうだね」

「がんばりましょう」

歪んでいるのって、メイド服の教授さんの事だよね。

どうして俺を見ているんですか!

因みに、

賢者や大賢者は国王が授ける魔法使いの最高の称号となります。

王が魔導師を召集して、その同意の元で賢者や大賢者の称号を授けるそうです。

未だに一人も誕生していないという伝説の位なのです。

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