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転生は普通のことだった!~3度目の人生、転生チートしてもそんなに巧くいくわけじゃないのよ~  作者: 牛一/冬星明
第二部.児童チートで優雅な(?)ドキドキ編、確かに女の子をはべらしますが、少女ですよ。
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11.(休話)北の果ての教会シスターの憂鬱

私の名前はエリカ・エクレシア、名もない北の果ての教会の神官をやっております。

私は王都周辺にある城壁町の小さな教会の前に捨てられた捨て子でした。親に捨てられたと言っても神官様に温かく育てらえた私は拗ねることもなく、神の教えを信じていました。魔法の素養があったらしく、修道院に進むことができたのです。

王都の衛星都市として大教会があります。

大教会は教会都市と呼ばれる城壁町で大神殿を中心に様々な施設が並び建ち、その1つに修道院があり、修道院を3年間過ごすことで神官になることができるのです。

修道院、そこは魔が蔓延る魔界でした。

修道院に進むまで神の教えに疑問など持ったことのない私でしたが、同僚が一人、また一人と消えてゆくのを目の当たりにすると、流石の私でも気づくことがあります。

私と一緒の城壁町出身のあの子も懲罰室に呼ばれてから帰ってくることがありません。

私より神の教えを信じる純情な子でした。

懲罰室に呼ばれるのは、必ず庶民出の子ばかりです。

ホンの些細なミスも許されることなく、引き立てられます。

そして、二度も戻ることがないのです。

爵位を持つ方に同じ事は起こりません。

なぜなら、爵位を持つ方は懲罰室ではなく、懺悔室に呼ばれるからです。

懺悔を終えると、再び、爵位を持つ方は戻ってくるのです。

懲罰官のあのいやらしい目が何を語っているのでしょうか。

審議する神官、あの豚の目が嫌いでした。

我慢に耐え切れず、怒りを露わにする事も許されません。

疑問を口にする事は神を疑う行為も同じです。

スプーンを床に落とす事も許されないのです。

その1のミスを指摘されて、多くの同僚が懲罰室に送られます。

地獄の日々です。

私はミス1つをする事を許されることもなく、3年を過ごし修道を終えて神官になることができたのです。

修道院での成績は1番でした。

天女、英才のエリカなどと呼ばれ、王都の教会か、教会都市の教会に派遣されると言われていましたが派遣される先は何故か北の果てです。

しかも大神殿に勤める神官ではなく、名もない教会です。

最後までやってくれます。

神は何故、そんな試練を与えるのでしょうか。


 ◇◇◇


北の果てと呼ばれるので相当な寒さを覚悟していたのですが、思っていたよりのんびりとした市でした。

そんなある日、

小さな泣き声を聞いて教会の門を開けると籠に入れられた赤子を見つけたのです。その子を聖母の名を貰いアンニと名付け、私の苗字を彼女に与えたのです。

不思議な話です。

男の神官は妻を貰ってもいいのですが、女の神官は処女でなくなると神官を止めなくてはならないのです。

純潔を守れ?

なら、男も童貞を守って貰いたい。

何が悲しくて、苦労してなった神官を辞めて従者に落ちるものですか。

母になれない私。

その小さな子は私の宝となり、少々我儘に育ててしまったのかもしれません。

魔法の素養があったので見習い神官にしたのです。

神官にするつもりなどありません。

でも、見習い神官に申請すると様々な教育やそれに必要な道具が貸与されるのです。

適当な所で従者にすれば、一生食べてゆくのに苦労もしないでしょう。

私の宝はスクスクと育っていったのです。

アンニが6歳になったとき、トモという同年代の子供が癒しの魔法を使ったのが始まりです。トモは冒険クエストに参加して魔法を鍛えていると聞き、アンニが率先して冒険パーティに参加するようになったのです。

神官を護衛する魔法従者はもっとも需要の高い職業です。

私はアンニの背中を押すように冒険クエストに参加することを認めたのです。

そのときはそれが正解だと思ったのです。


 ◇◇◇


その日は農業区に働く人達を慰労する為にアンニと一緒に出掛けたのです。

慰労という名の無料診断と治療です。

かなりの人数の方が腰痛や肩こりなど患っているので大変なのです。農業区にある教会の神官はヒールが少しできる程度で神官として物足りません。

農業区の神官を責める訳ではないのです。

この城壁市の神官達は初歩的なヒールとキュアしか使えないのです。中級魔法や上級魔法を使えるのが私と大神官様しかいないというのが異常なことで、従者や冒険者の方が余程優秀です。

この城壁市の神官配置は変です。

やっと慰労を終えて家に帰れると歩いていると、城門方面から呼び止められたのです。

「シスター、助けて下さい」

「どうかしました」

「若手の冒険者が魔物に襲われて、偶然にベテランの冒険者に助けられて命は取り止めたのですが出血が酷く助けを求めに来ました。すぐに見つかったよかったです」

「判りました。案内して下さい。アンニ、行くわよ」

「うん、間抜けな冒険を助けにゆくのね」

「間抜けとか言ってはいけません」

「この周辺には強い魔物はほとんどいないのよ。どうすれば、命に関わる怪我ができるのよ」

最近、アンニの口の悪さが際立ってきました。

絶対に修道院に行かせられません。

正門の横に若手の冒険者6人が寝かされています。

その内の2人はかなり重症です。

他の4人も傷跡が酷いですが、緊急ではありません。

「首筋ががっぽりと脇腹をぐっそりか。これ、狼の仕業ね」

「アンニは脇腹の人の止血だけ急いで、私は意識が朦朧としている人を先に助けるわ」

「了解。でも、エリカは魔力のストックは大丈夫なの?」

「エリカと呼び捨てにするんじゃありません。ちゃんと『お姉ちゃん』か、『さん』を付けなさいと言っているでしょう。まったく、それよりアンニの方が大丈夫なの」

「余裕、余裕、気力はもうへばっているけど、魔力は全然の余裕よ」

アンニは私と同じ数の慰労を行っています。

私の魔力はギリギリです。

実際、中級魔法のギガヒールを2回使えるのかどうか。

…………

考えても仕方ありません。

アンニの事は後にして、急いで治療をしましょう。

一番の重症の首元をがっぽりと喰い千切られた冒険者はタオルを首元に当てていますが、出血が止まりません。意識も朦朧としています。まず、出血を止める為に簡単なヒールを先に掛けます。

キュアを掛けて体力を少し底上げし、ギガヒールで一気に治療を行います。

中級魔法の詠唱を行いながら、この後の事を考えます。

この人は間に合います。

問題は脇腹を抉られた方で出血多量でぐったりしていますが、意識は保っています。

ヒールで止血できても抉り取られた部分は戻りません。ギガヒール以上でないと完全治療できないのです。

体から抜けて行く魔力の感じから、もう1回のギガヒールは難しそうです。

大神官を呼んで来てくれるでしょうか?

無理ですね。

冒険者にギガヒールを使える人がいるのでしょうか?

いるかもしれませんが、判りません。

医者に任せれば、助かるかもしれません。

但し、冒険業はもう無理です。

諦めて貰うしかありませんと、視線を移しま…………えっ?

おかしい?

おかしい?

おかしい?

とにかく、治療が先です。

『ギガヒール』

白い光の粒が冒険者を包み込み、奇跡の力で首元に無くなったものが再び現れるのです。

はぁ、成功です。

これが神の奇跡です。


 ◇◇◇


全員、無事でした。

見ていた冒険者達も神の奇跡を目の当たりにして祈ってくれます。

「いやぁ、お嬢ちゃんの魔法は凄いね」

「手が光ったと思うと、傷口が見る見る内に消えてゆくんだから」

「この町の神官は優秀だ」

「そんなことあるかも」

アンニが凄く褒められて鼻を高くしています。

ライト、ヒール、キュアの3つの魔法を続けて使って助けてしまったのです。

教会に帰ってからゆっくりと聞きます。

「何故、ライト?」

「焼いて消毒しないと後で化膿してくるかもしれないでしょう。光で焼いて、雑菌やウイルスを殺してから治療した方は治りが早いんですって」

「雑菌やウイルスって、何?」

「小さな目に見えない虫らしいわ。光を集めると熱を発するから、その熱で焼いてしまうのよ」

全然、言っている意味が判りません。

「それに、あのヒールは何?」

「時間がなかったからクエスト用の魔法を使ったのよ。クエスト用の魔法は無詠唱だから即効性で抜群なの」

アンニが笑顔に自慢します。

高速詠唱はあっても無詠唱なんて聞いたことありません。

「完全治癒の奇跡が起こっていたわよね」

「あれはヒールだから神の奇跡じゃないよ。アルが言うには細胞組織の再生だって。魔法の力で細胞が元の戻ろうとする力を底上げして助けて上げているだけなんだ」

「神の奇跡と一緒よね」

「あっ、言われるとそうだね。私のヒールって、凄くない」

凄いことです。

私が治療した人は傷跡が残っていましたが、アンニの治療跡は完全に綺麗になっていました。

脇腹を削られた人の脇腹が元に戻り、しかも傷口も綺麗に消えている。

ギガヒールより効果の高いヒールって、何?

「あの効果は何なの?」

「あぁ~、やっぱり気がついた」

「なにか、あるのね」

「温泉に入ってから効果が凄くなっちゃたのよ」

温泉というのは、去年の秋に旅行に行った話です。

確か、エルフの里にある温泉のこと…………聞くのが怖くなってきた。

「で、温泉って」

「ううん、何でも女神も入ったことがある温泉で」

女神?

「女神の加護が付いたって、エルフの長老が言っていた」

が~ん、女神の加護持ち。

修道院送り決定だわ。

いや、いや、いや、待て。

まだ、知られてないかも。

「誰にも話してないわよね」

「みんな知っているよ。トモとアネィサーも加護持ちだからさ。ギルドの人ならかなり知って人はいると思うよ」

が~ん、が~ん、が~ん、女神の加護持ちが三人もいるって可笑しいでしょう。

「三人もいるなんて」

「違う、違う。三人じゃなくて5人だよ。魔法士のスーさんなんて、男なのに加護持ちになって、女の人みたいにボインボインの巨乳になったのよ。許せないと思わない。ギルトの男共は、みんな、その話題で持ちきりなのよ。信じられないでしょう」

信じられません。

もう駄目です。

女神の加護持ちを従者に落としますなんて絶対に無理だわ。

アンニが厳しい修道院の戒律を守れるの?

無理、無理、無理、絶対に無理だわ。

「エリカ、疲れてない」

「誰のせいですか」

「冒険者のせいね。魔法を使い過ぎたのね」

違います。

それより、どうしましょう。

私の宝物。

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