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NIA  作者: なのん
3/3

少女の謎

社畜

────この少女は宇宙人なのだろう。

あれから俺は酷使し、こんがらがってしまった頭を時間をかけ整理し、何とか自分を落ち着かせていた。

だが、いくら熟考しようが今の俺にはこんな素っ頓狂な仮説しか立てることしか出来なかった。


卵と思われる球体が破裂し彼女が俺の前に現れた……という事はつまり、この少女は魚類、両生類、爬虫類または昆虫のいずれかという事なのだろうという何とも馬鹿げた仮説。

しかし、『彼女』と言うように目の前で、作ってやった炒飯を口いっぱいに頬張っている生物はどこからどう見てもヒトなのである。


そもそも、卵生哺乳類は今のところカモノハシとハリモグラの数種のみのはずだ。

ヒトが卵を産んだという例は俺は聞いたことがない。(まぁ、ただの高校生がそんな例があっても聞くはずが無いのだが)


では、謎の球体とこの少女(仮)は全く無関係というのはどうであろう。

この少女(仮)は何らかの理由で俺の寝室に忍び込み、謎の球体はタチの悪い悪戯か何かで花火の様なものが炸裂したといったところだろうか。


一見有り得なくもない様に思える。

しかし、これも不自然な点がいくつかある。

まず、俺の家は一戸建てで寝室は二階にある。

寝室の窓の近くによじ登れそうな木々等はなく、家の鍵もちゃんと2つの鍵が閉まっていた。

つまり、この少女(仮)が侵入する事は不可能に近いのだ。

そしてあの球体も、上手くは説明出来ないが此の世のモノとは到底思えなかった。


それと、最も肝心なのがこの少女の容姿である。

少女は頭の先からつま先まで、今ではもう何かアニメのキャラクターという記憶しかない。しかし、名前だけは覚えている「NIA」と同じなのである。

そしてこの少女が俺の前に現れると同時に消えた人形の「NIA」についても説明がつかない。

もし、これらを無理矢理にでも説明をしろと言うのであれば……


それはこの少女(仮)は、憑依する系の宇宙人なのだろうという何とも非現実的な仮説が一番違和感がなく、有力なのではないか……と心の中で学者気取りのディベートごっこを先程から続けている。

しかし、こんな事をするだけでも落ち着く事は出来た。


ふむ、でもまぁ確かにこの少女が宇宙人なのであれば喃語しか喋れないのも納得だ。

うむ、なっと……く…………


「……ん?」


いや、待てよ?おかしい、明らかにおかしいぞ?

俺はこの子に炒飯を作ってやる前、確かにコミュニケーションをとった。

ご飯を食べようという俺の提案にこの子はしっかりと頷いて返事をした。

つまり、この子には俺の言葉が伝わっているという事になる。


しまった……謎が深まってしまった。


明日の弁当分にも、と作った、ご飯二合分の炒飯をぺろりと平らげた謎の少女は、出会ってから終始考え事をしている俺を不思議そうに首を傾げて見つめていた。


奇美、容姿端麗、羞花閉月……

可愛いや美しい等、一言では言い表せないとても綺麗な顔立ちの少女に見つめられては流石に無視できるわけもない。

ふふっと優しく微笑みかけると、少女は安心したかのように微笑み返してくれた。

あぁ、尊いとはまさにこの事を言うのか……


一方通行でコミュニケーションが取れる美少女兼宇宙人(仮)に家は何処かと訪ねても首を傾げるばかりなので、今日は家に泊まるかと聞く。

すると少女は激しく首を縦に振り、めでたく俺は美少女とひとつ屋根の下で一日生活する事が決定した。


なんだ、ギャルゲー主人公になるのも意外と簡単じゃないかと内心ほくそ笑む俺の顔が、まるで鳩が豆鉄砲を食らったかのような顔になるのはその翌日だった────


「なっ、なんじゃこりゃ……」


昨夜、と言うかあの後、使い回した脳を休めるため俺は少女に「今夜はもう寝よう」と言うと、何故か少女は首を横に振り頑なに否定するので「じゃあ、お休み」と自分だけすぐ眠りについてしまった。

薄情とかそういうのではなく、ただ単純に疲れたのだ。少女には風呂の場所と親のベッドの場所を教えておいたのだが……


何故か俺の部屋の壁に、超特大サイズの繭の様なものが形成されていた。

デカい、とにかくデカい。

糸のような何か繊維と思われるもので形成されている特大繭は、時折ギチギチと音をたてている。


これだけでも充分恐ろしい光景なのだが、もっと恐ろしいのは、コレが誰の仕業なのかが容易に想像がつく事だった。


えっ?何、ドユコト?あの美少女が上の口か、下の口かは分からんが……コレを吐いて作ったって事?何それ怖い。


まさか、あの華奢な掌からこんな繊維物質が出てくるわけでもあるまい。

何というか、人外だという事を隠す気はさらさらないのだな。


これはあまりに怖いので、あまり刺激しないよう静かに支度を済ませ、家を出た。

学校へ向かう途中、何度も後ろを振り返る俺を不審に思ったのであろう通行人をざっと十数人確認することが出来た。


うーん……。何というか、嬉しいような悲しいような、そんな気分の激しい浮き沈みに翻弄される俺であった。

今月中にもう一話

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