1話
「それにしても、この三年間長いようで短い感じだったな?」
そう答えたのは軍服を着ている二十才前の若い少年だった。
「そうだな。だか、俺達が本当の意味で大変になるのはこれからじゃないか? 七瀬?」
隣から声が聞こえて来て振り向けば、俺と同じ士官学校の出身で同じルームメイトだった天川一樹がいた。
「そうだな。これからだよな?そう言えば南部戦域に行くのは俺とお前だけか?」
「他の奴らは北部、東部、西部に派遣されて行ってるな。それに南部戦域に行く奴らは他にもいるが、みんな最初は最前線には出ないで補給部隊や後方支援部隊だな。」
「一樹もか?」
「そうだ。最前線の部隊に派遣されるのはお前だけだな。」
そういいなから一樹はため息をついた。
「なあ?今からでも部隊変更してもらえないのか?いきなり最前線の部隊じゃなく違う後方の部隊で経験を積んでからじゃ駄目なのか?」
一樹はそう言ったが俺は首を振った。
「いや、俺が望んだ事だからこのままでいいよ」
「お前は相変わらず一度決めたことは変えない奴だな?」
俺は苦笑いを浮かべていると、ホームに汽車がやって来た。
「汽車が来たから俺は行くよ。今までありがとうな。体に気を付けてな」
「それはこっちのセリフだ。お前の方も気を付けよ?」
そういいなから俺達はお互いに握手をして、俺は汽車に乗り込んだ。
汽車は程なくして、主発した。これから向かう場所は南部戦域バリストン基地。汽車で約五時間程の距離にある南部戦域最大の基地だ。
俺は基地に着くまでの間汽車の窓の外を眺めなからボンヤリすることにした。
「君が七瀬湊君だね?私はこの基地の司令官のクリス・リチャードと言うものだ。階級は中将だよろしく頼むよ」
目の前豪華な椅子に座っている男がそう言った。男の左胸には幾つもの勲章が付いていた。また、男の纏う気迫は今まで数多くの修羅場を潜り抜けてきた、歴戦の猛者の感覚がした。
「七瀬湊です。よろしくお願いします」
「君のことは聞いている。士官学校では主席で卒業しており、とても優秀だと」
「そんなことありませんよ。所詮は学校の中でのことなので」
「くくく、そういうことにしておくか?さて、前置きは置いといて、七瀬湊少尉、君には第二十七魔獣討小隊の隊長に着任してもらう。何か質問はあるか?」
「よろしければ、部隊員の詳細を教えて頂けますか?」
「後で詳細なプロフィールを渡そう。そうだ、七瀬少尉、一つ私からアドバイスをしよう」
「ありがとうございます」
「いいか?奴らは人間じゃない兵器だ。兵器に感情移入はするな。やつらは使い捨ての道具でしかない。それを肝に命じておきなさい」
「中将それは一体どういうことですか?」
「なに、時期に分かる。話は以上だ。今日は疲れたと思うからこのままで休みたまえ、明日から軍役に着いてもらう以上だ」
「……分かりました。失礼します」
そうして湊は司令室から退出した。
「さて、彼は一体どれぐらい持つかな?」
そう言いなから、クリス・リチャードは笑っていた。