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住民希望者とそれぞれの思惑

「どうしてそんな勘違いをしているのかわからないけど、むしろ色んな種族の者が国にいた方が、世界樹の成長は早まるし、国の発展速度も上がるよ。誰からそんなでたらめな情報を聞いたの?」

「でたらめなどではありません! 古文書にもそう記されています」


 古文書ねえ。なんとも胡散臭い。だが、心惹かれる言葉だ。手に入れてぜひ読んでみたい。


「じゃあ、その古文書に書いてあるのをあなたは実際に見たの?」

「いえ、それは……。古文書は厳重にビザンテア帝国で保管されていてその国の貴族しか見られませんので……」

「見ていないのなら、証拠にはならないね」

「そんな…………。国主様は、古文書を信じていないのですか?」

「古文書を直接見ていないしね。まあ他にも理由はあるけど」


(ゲーム知識で知っているとは流石に言えないよね)


 それにしても、ビザンテア帝国なんていう名前のNPCの国は、ゲームの中にはなかったよね? やはり、色々なことが違っている。

 となると――――――もしかして、彼の言っていたような亜人がいたらという言葉も真実の可能性があるのだろうか。今のままでは判断できないな


「ともかく、もしこの国の住民になるのなら、私のやり方にしたがってもらうから。亜人達への態度も改めないのなら、他の国を探して」


 セアラはきっぱりと宣言する。


「この国以外で、私達を受け入れてくれる可能性のある国など他にありません」


 男は真っ青な顔で叫んだ。


「ええと、あなた達は人族なんだから、他の国に行けば住民として受け入れてくれるんじゃないの?」

「私達のようなスキルなしは、どの国でも受け入れてもらえません。住民の受け入れ人数に限りがあるので、国主様は皆、有能なスキル持ちを選びますから。アクアポリスの住民募集では、なにも制限がなかったので、もしかすると受け入れてもらえるかもと思って来たのです。お願いです、国主様のやり方に従います。だから、次の住民募集の際にはどうか受け入れてくれませんか」


 セアラは目の前にいる人族の男たちに鑑定を行う。確かにスキルは何もなく、おまけにステータスも低い。ぶっちゃけ、森で魔物を倒して鍛えたセアラの方が強い。


 うーん、困ったなあ。住民との諍いの原因となりそうだから、この人族達は受け入れない考えだったが、彼らの事情を聞いた後では追い返す訳にはいかないし。

 少し脅して、亜人達に傲慢な態度をとらないように私が見張るしかないか。


 世界樹のレベルが2になると、さらに住民の移住限界人数は50人増え、最初の15人と合わせると65人まで可能になる。犬耳族達の人数は全員で45人なので引くと、新しく住民の登録出来る人数は20人までとなる。


 レベル3になると、最大許容人数が一気に増え500人プラスされる。そこまで国を発展させれば、今ここに集まっている人すべて住人とすることが出来る。


 誰が先に住人になるかで揉めそうだなあ。ここは、強引にでも私が決めるのがきっと一番いいよね。不満があっても国主が決めるならと納得してくれるだろう。

 いや、してくれなきゃ困る!

 

 ちょっとかわいそうだけど、効率を考えて、序盤の国の発展に大活躍の種族から住民登録することにしよう。

 この様子だと希望者もまだまだやって来そうだし。世界樹のレベルを早く上げないと。

 セアラは頭の中で決めたことを皆に説明しようと口を開いた。


「さっきの答えだけど、あなた達を迎え入れることは出来るけど、残念ながら次の住民募集では無理よ。次の住民登録では、残りの犬耳族達とドワーフから10名、エルフから10名を新たな住民として登録します」

 

 セアラの言葉にドワーフ、エルフの者達は喜びの声を上げ、他の種族の者達はがっくりと項垂れた。


「国主様の決定に意を唱えることはしません。ただ、なぜその者達が選ばれたのか、理由を教えてくれませんか」


 セアラにそう問うのは先ほどの人族の男である。納得できる理由を話して欲しいと全身で訴えていた。

 セアラも理由を話そうと思っていたので、その言葉はちょうどよかった。


「犬耳族達は昨日からこの国に着いていて、次の住民募集で残りの者達もこの国の民として迎え入れると約束しているからよ。ドワーフとエルフを優先する理由は、国を早く発展させる為には、彼らが得意とする能力が必要だからよ。エルフは植物の成長を促進させる力を使って農作物などの育成を、ドワーフはその器用さで家などの建築物や生活に必要な道具を作ってもらおうと思っているの」


 セアラの言葉に納得の目の色をした者もいれば、不満顔を隠そうとしない者もいる。だが、それを口に出す者は誰もいなかった。


 あからさまに不満そうな顔をしている者達は、一応覚えておくか。うーん、結構いるなあ。


 犬耳族達を先に住民登録する理由は、それだけではない。彼らは、セアラの言葉に忠実で性格も信頼できる。そういう者達を近くに置いて、他の者達への抑止に使いたいという狙いもあった。

 

「ドワーフとエルフの者達は、誰が先に住民登録するか決めてね。なるべくさっき言った能力が高いものを選んでね」


 ちょっとずるい言い方だが、相手に決めてもらうことにする。こう言えば、相手がどのような者を選ぶかで相手の出方を知ることが出来るからだ。

 


 セアラの言葉を聞いて、それぞれの種族が輪になって話を始める。ドワーフはすぐに話がまとまったようだ。問題はエルフである。なかなか決まらない。

 どうやら意見が割れているようで、エルフの女が決めたことに、エルフの男が反対していることが覗えた。

 

 うーん、荒れているなあ。こそこそ小さい声で話しているかわからないけど、エルフは要注意かも。


「さて、話し合いは終わったようだね。選ばれた者は前に出てみて」


 いそいそとエルフ、ドワーフからそれぞれ10人がセアラの目の前に進み出る。

 セアラは鑑定を使い、彼らのステータスを盗み視る。

 ドワーフは器用さの高い者を選んでいる。その中には、『鍛冶』や『装飾』などスキル持ちが混ざっていた。少し離れたところにいる他のドワーフを鑑定すると、器用値が目の前にいる者達より軒並み低い。もちろんスキルもない。


 ドワーフはセアラの言葉通り、能力が高い者を優先したようだ。


 続いてエルフのステータスを視る。エルフは、他の種族に比べて『魔力』が極めて高い。なぜなら、彼らは魔法を得意とする種族だからだ。そして魔力が高いほど植物育成の力も大きくなる。

 だが、前に出たエルフの者達の魔力の高さはバラバラである。

 高い者もいれば低い者もいる。目の前にいる者以外のエルフ達のステータスを視ると、優先的に選ばれた者より遥かに魔力値が高い者もいる。

『大地の祝福』などというレアスキルを持った者もいる。他にも『植物育成』のスキルを持った者も選ばれていない。


 エルフはセアラの言葉に従わず、能力を基準に選んでいない。セアラのように鑑定のスキルがなければわからなかっただろう。


 さて、どうしようか。

 このまま、知らぬふりをするか、それともセアラが鑑定スキル持ちだとばらして彼らに問いただすか。


 セアラは少し思案した後、方針を決めて口を開いた。

 


 


 



 

 



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