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血濡れた恋 番外編  作者: つよちー
4/4

Bloody story

【注意】

本編をまだ読んでいない方はそちらからお読みください。


本編に登場した不気味な殺人鬼の過去を描いていきます。

暗い部屋の隅で蹲る。身体中の痣や傷が痛む。動く度にその傷は痛みを増す。その痛みは消えることはない。毎日のように暴力を振るわれるせいだ。絶対に消えない。扉が無造作に開かれ外の眩しい光が差し込む。中に入ってきた父親に髪を掴まれ無理矢理外に放り出された。地面に倒れ込み、立ち上がろうとした瞬間に腹に重い蹴りが入る。臓器を圧迫され噎せる。それでも父親は容赦無く俺の体の至る所を痛めつけていく。あまりの痛さに嘔吐したって父親は気が済むまで暴力を止めない。やがて意識が朦朧とし、痛みも感じなくなった。ただ玩具のように弄ばれ、俺の意識は途絶えた。


目を覚ますといつもの暗い部屋で倒れていた。体を起こした瞬間、激しい痛みと共に嘔吐する。地面に吐き出した胃酸が飛び散る。もう一度横になり、痛みが治まるまでじっとしていた。

「おーい?」

聞いたことがない声が部屋に響いてきた。女の子の声だ。俺は声がする方向へ向かった。扉の方からだった。

「大丈夫?私ずっと見てたよ」

声を出そうとしても声が出ない。

「私が助けてあげる。ちょっと待ってて」

そう言って扉の向こうから何か物音が響いてきた。一体何をしているんだろう。

「おい何をやってるんだ!」

父親の怒鳴り声が聞こえた。それと共に重い足音が響いてくる。

「ごめんなさい。大事な物がこの中に入っちゃったの」

「そんなこと知ったこっちゃねえ!今すぐ失せろ!」

小さな足音が離れていく。それと共に大きな足音も離れて行った。しばらくすると、また少女が戻ってきた。

「邪魔が入っちゃった。今度こそ助けるね」

再び物音が響いてきた。何故彼女が俺を助けるのか疑問に思ったがしばらくすると扉の鍵が開いた。そして重い扉が開かれる。眩しい光が差し込み、俺と同じくらいの背の少女が立っていた。キーピックを持って悪戯した無邪気な子供のように笑う。

「私昔からこういうの好きでさ、よく家の鍵とかわざわざこれで開けてたんだよね」

少女が自慢気に話すことに興味を示さず俺はただ呆然と立ち尽くしていた。そんな俺を見兼ねてか少女は少し不思議な表情を浮かべた。

「何してるの?早く行こうよ」

少女はそっと手を差し伸べた。その手は小さくてとても綺麗だった。薄汚れ傷だらけの手を彼女の手に乗せる。すると少女は俺の手を握り無邪気に笑い俺を引っ張って行った。


「どうしてあんな酷いことされてるの?」

唐突にそう質問され、俺は首を傾げた。そんなこと俺にだってわからない。その思いを読み取ったのか彼女は

「やっぱりいいや」

と素っ気なく話を終わらせた。その時の彼女は失望したような表情をしていた。

「ねえ、君はあいつが憎い?」

俺は小さく頷いた。すると彼女は俺の手を取りナイフを握らせた。

「これで殺しなよ」

そう優しく甘い声で問いかける彼女の言葉に陶酔したような感覚に陥った。俺はそれが最初から決まっていたかのように躊躇わずにそのナイフを受け取った。その時の彼女の顔はまるで薄気味悪い悪魔のような表情をしていたが、今の俺にはそんなことどうでもよかった。彼女は立ち上がり俺の手を握った。そしてあの家へ連れて行ってくれた。


地平線に太陽が沈み、仄かな紅い光が空に映る夜。ナイフを握り締め俺はあの家へ向かった。玄関前に立つと響いてくる、楽しそうな談話。俺の中の憎しみが更に強くなった。俺のことなんかまるで存在していなかったかのように楽しく暮らして、気に食わないことがあれば俺に八つ当たりをする。俺は扉を音が鳴るように堂々と開けた。その瞬間談話の声も止んだ。灯りが点いている部屋に向かうと父親と母親、そして見知らぬ少女がいた。

「お前、どうやってあの中から出た」

ゴミでも見るかのような冷酷な視線に俺は屈しずに強く睨みつけた。

「なんだその目は、今すぐ出て行け」

そう言って父親は俺の髪を掴もうと飛び掛かる。そこに俺は隠し持っていたナイフを腹に刺した。父親はそのまま倒れ込み、腹を刺されたという状況を把握できないかのように動揺していた。母親の悲鳴が耳を劈く。その耳障りな悲鳴を消すように俺は母親の首にナイフを刺して横に掻っ切った。血でガラガラと音を鳴らしながら母親はその場に倒れこみ痙攣をしながら床に血を広げる。すると突然後ろから何かに抱き締められた。少女が俺を抱き締めていた。

「やめて....」

泣きながら静かに訴える少女を突き飛ばす。少女はその場で仰向けに倒れこみ、その上にのしかかる。ナイフを両手で持ち、高く掲げる。少女は小さく怯えて俺の服を掴んで必死に訴え続ける。

「やめて....やめて....」

ただひたすらその言葉を繰り返していた。俺はその言葉を聞き流し、泣きながら訴える少女の胸にナイフを突き下ろした。ひ弱な少女の体にナイフは簡単に中に入り込み皮膚を突き破った。少女は少し悶えたが突き刺さるナイフを咄嗟に掴んだ。

「やめ....て....」

血を吐き出しながらもそう訴えてくる。俺は何の感情も抱かずにそっとナイフを深く射し込んだ。少女は更に悶えてやがて泣き出した。そのままナイフを突き刺していると硬い感触がナイフに伝わった。少女の体を貫通してナイフの先が床に当たったのだ。その瞬間、少女はぴくりとも動かなくなり表情は固まった。ナイフを抜くと血が更に溢れ出てくる。腹を抑えて痛がる父親の髪を掴んで俺を監禁していた場所に引きずっていく。無造作に父親を放り込み、手に持つ血塗れのナイフを父親の脚に突き刺した。大きく悶え苦しむ奴の姿を見ていると不思議と気分が良くなった。脚に刺さったナイフを抜き何度も突き刺す。脚が駄目になれば腕を。腕が駄目になれば胴体を。大量の刺し傷と血で塗れた父親は既に瀕死の状態になっていた。そのままとどめを刺さずにナイフを捨て俺はその場を去った。

「気持ち良かったでしょ?」

そう問いかける彼女に俺は不気味に微笑んだ。その瞬間、彼女から微量の恐怖の感情を感じ取った。人を殺すのはこんなにも気持ちがいいことなんだとその時初めて実感した。恐怖を与えることも同様に。


殺人はまるで麻薬のように俺に快楽を与えてくれる。そしてしばらくすれば俺に殺しの欲求を産み付ける。血を見ないと脳裏に焼き付いた憎き父親の顔が頭をちらつかす。そんな症状に悩まされながらも俺は殺しを楽しんでいた。いつしかここ周辺に人は住まなくなった。残ったのは俺と彼女だけ。次第に人を殺すために遠くまで行くのも面倒に感じてきた。それでも奴の顔は頭から消えない。欲求を抑え切れず、遂に俺は彼女に手をかけてしまった。寝ている彼女の首を絞める。その瞬間に彼女は起き上がりすぐさま首を絞める俺の腕に針を刺した。

「やっぱりこうなると思ったよ」

「やっぱりってどういうこと?」

じっくり痛みつけようかと思っていたがそうもいかないようだ。俺はナイフを取り出して彼女に向けた。

「俺に殺されるってわかってたんだ」

「殺しに酔ってる君はその内私を殺そうとするだろうってずっと思ってたんだよ」

彼女が喋る言葉の意味を理解しようとせずに聞き流す。彼女に襲い掛かろうとした瞬間にナイフを持つ手の力が受けてナイフを落としてしまった。

「さっき君に刺した針には毒が仕込んであってね、数秒で体が麻痺して力が入らなくなるの」

そう言った途端脚の力が抜けその場に跪いた。神経が麻痺して感覚がない。

「用意が間に合って良かったよ。完成してない状態で襲われたら絶対殺されてたからね」

「....お前」

地面に落ちたナイフを拾おうとするが全身の力が抜けその場に倒れ込んだ。次第に意識が朦朧としてくる。脳裏に焼け付く奴の顔が俺を嘲笑うかのように意識に入り込んでくる。その気持ちの悪い光景に俺は発狂した。

最後まで読んで頂きありがとうございます。

これがあの殺人鬼の壮絶な過去でした。彼が殺しを求めるのは快楽のためでもあり、脳裏浮かぶ憎い父親の顔を掻き消すためでもあったのです。

これにて「血濡れた恋 番外編」は完結です。

本編は皆さんが望みような結末ではなかったですが、最後まで書き遂げたので作者の僕は満足です。

最後まで読んで頂き本当にありがとうございました。

また新しい小説を書いているので今度はそちらでお会いしましょう。

感想や指摘など頂くと嬉しいです。

続きを楽しみにしてくれると更に嬉しいです。


これらに登場する人物、地域、団体は全てフィクションです。

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