8話 証拠探し
まず調べるのは、被害者の遺体とその周辺。
被害者は56歳で社長になったばかりだったらしい。
死因は、大動脈破裂による出血死。
1年前に心筋梗塞を起こして、手術をしたのか手術痕がまだ残っていた。
そのため、健康には非常に気を使っていたらしい。
「遺体には何も無いか」
「そうだね。部屋も調べてみよっか」
少しすると、遺体周辺を調べていたセナがいつものような大声を出した。
「ねぇ。サクーー!」
「そんな大声出さなくても聞こえるから。ていうかここ響くからそんなに大声出したら耳痛くなるから止めてくれ」
「あっそっか。ごめん」
もともと頭痛と耳鳴りを持っている俺にとってはこの空間はあまり居たくない場所だ。
頭痛は良くなってはきたが、耳鳴りは大きな音や高い音を聞く度酷くなる。
だからこの響くような空間にはあまり居たくないのだ。
「で、何か見つけたのか」
「えっと、ちょっと気になるところがあってさ」
そう言うとセナは、あるところを指差した。
それは遺体の足から少し離れた場所だった。
「ここさ、少しなんだけど歪んでいない?」
そう言われると確かに歪んで見える。
「ここって歪んでるってこと?」
「いや。多分だけど、投影機では表現出来ない時に起こる現象だと思う」
「表現出来ない?」
「例えばだけど、小さかったり、見えにくい物があったりすると、投影機では表現出来ない時があるんだ」
「でも、投影機で表現出来なかったら、どうやって見るの?」
「その時は、直接現場に行くしかないな」
「えー。せっかく何かの証拠があるかもしれないのにここじゃ分からないなんて…」
「でも現場で調べるところは、最低限にしたいから、一つ見つけただけでも良いことだよ」
「なら良かった」
いつも喜怒哀楽がはっきりしているセナを軽く慰めながら、他にないか探し始める。
いつも現場での証拠探しは高い捜索スキルを持っているセナに頼ってばっかだ。
多分だけど気になるところを見つけると、声を出すような感じなのだろう。
そんなことを考えているとまたセナが声を上げた。
「ねぇ。あれ何だろ?」
見てみると遺体の心臓のちょうど真上に約1㎝ぐらいの穴が空いていた。
「確かにこんな真上に穴なんて、自然に空くかしら?」
「こんな偶然…というかセナ、よくこんなに見つけるよな」
「えへへぇー。すごいでしょ」
セナの大活躍により、怪しい箇所は3つ見つかった。
さっき見つけた2つの他に、窓枠に付いていた謎の器具が見つかった。
この3つを重点に、実際の現場に向かって、探してみることになった。
「セナちゃんさぁ、なんでそんなにたくさんも証拠見つけられるの?」
マミさんも気になっていたらしい。
「えっと…なんとなく…なんですよね」
「なんとなく?」
「なんとなく気になるところを見つけて、周りの同じ 物かそれと似ている物と比べて、おかしかったら聞いてみる。そんな感じなんです」
セナらしい答えだった。
しっかりしているところもあるが、少し天然なところもある。
そんなセナに当てはまっている答えだと感じた。
「あとマミさん。私はセナって呼んでください」
「えっ!?良いの!?」
「はい!その方が話しやすいですもん」
「なら私もマミでいいから」
セナとマミさん。両方とも性格は明るいから、すぐ仲良くなれると思っていたが、本当にすぐに仲良くなってしまうところが恐ろしい。
俺なんてマミさんて呼ぶまでどのくらいの期間を要したことか…
そんな会話をしながらリビングまで戻ると、もう夜になっていた。
あの空間にいると時間まで狂いだす。
今度時計でも置いておこう。
「ねぇサク~。お腹すいた~」
「現場検証どうするんだよ」
「明日で良いじゃん。さぁさぁ、ご飯ご飯~」
「はぁ~。あと何回ため息をつけば良いんだか…」
すぐに検証したかったところだが、もう7時半を回っていた。もう現場に見張りの警官もいない時間
「時間も時間だし…明日にした方が良いね」
セナに次いでマミさんまで…
「分かった分かった。もうご飯作ろ」
「やった~」
「そのかわり、いつも通り一から手伝ってもらうからな」
「うげぇ~」
今日もこんな会話をしながら、みんなで笑って1日が終わる。
この日々が一生続いてほしいと願い続けながら
(明日必ず証拠を見つけて、犯人を突き止める。)
そう思いながら、俺はいつも通り夕食を作り始めた。
5話の内容を少し編集させていただきました。もしまだ見ていない方がいらっしゃったら確認していただけると幸いです。