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風邪が吹く

作者: 外海 茂寿
掲載日:2016/01/13

 風邪が吹いた。

「ゴホン。ゴホン。」

「お前。明日から期末試験なんだからうつすなよ。」

 山口は同じサッカー部で同じ駅で降り家も近く、ゲームや漫画の趣向も同じなので話も合うから、一緒に帰る日が多い。タフな奴で、サッカーの試合でずっと走り回っても、他の奴がへとへとの中で一人だけ「運動?、なにそれ」みたいな顔をして試合終了後に集合する。運動とは対照的に試験の点数は低い。補習の全てを知る男とは山口のことだ。典型的な脳筋タイプ。RPGなら狂戦士に違いない。

 それでも、風邪は平等にやってくる。今日の山口は授業中、練習中、帰宅中、三つの中全てて風邪を吹かす機械となっている。ずっと咳をしている。

 風邪の中で登下校し、授業に参加し、運動しているあたりは流石タフ山口とはいえ、本人曰く、

 「だいじょ・・・ホゴッ。大丈夫。熱がでデホッないタゴホッイプだから。」

 らしい。確かに咳以外に症状が無い風邪もあるけど、体力面に信頼のある山口だから症状が軽く済んでいる可能性もある。

 冬も風邪を引いたらしい。ゴウゴウと途切れぬ冬の冷たい咳が、帰り道を歩く自分達に当たり、無風のありがたみを思い知る。

 一つ今日分かったのは、山口は咳をしててもマスクをしない。自分じゃなくとも、ガードのされない咳で今日だけでクラスの何人かに咳風邪を拡散しただろう。タフでズボラ。ザ・脳筋。

 次の日の朝。

 「ゴホッ。ホゴッ。」

 うつった。咳が途切れなく出る。熱も出てた。ジャストサーティエイト。通常なら休むが期末試験だから学校に行くかどうか母と相談し、結局は4日に渡る試験はあるものの、一日2科目の日程なのですぐ行ってすぐ帰ってこれるから、マスクをして学校に向かうことになったが、さてまて、山口にはどんな怨念を吐いてやろうか。熱のややぼんやりした頭で、電車の中は試験の内容よりそちらばかりに傾倒していた。最終的には、ズボらな奴に言葉を通しても伝わりそうもないので、特徴的な態度で示し気付いてもらうことにした。白目を剥いてみよう。

 して、学校に向かったら。わーい。咳仲間が5、6人。遅れた時間にマスクをし咳をしながら教室に入る自分を、同じく咳をしマスクをしている彼らはテスト直前の復習用に持参したノートから目を離して見つめる。視線が合った時特有の反射神経の応答する間が空き、その一瞬にして自分たちは「おまえも山口に移されたな」と共鳴し合うのであった。

 当の本人、山口は、

 「あ、ごめんうつしたー。」

 と昨日の風邪は完治して平気な顔をしている。風邪はうつせばなおるは本当なのかもしれない。

 「あれ、なんで白目を剥いてるの。」

 結局、山口被害者の会は期末試験を咳と共に乗り切らねばならなかった。

 しつこい風邪だった。熱は試験終了日には収まったが、自分の咳が完全に収まる頃には答案返却日で、気象予報士が注意していた冬に珍しい激しい風模様もその頃にやっと収まった。

 ちなみに補習は山口一人。ざまぁ。

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