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『鬼灯堂奇譚』呪月の巻  作者: あべせつ
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〈みそかの月 戌の刻・洋子宅〉

〈みそかの月 戌の刻・洋子宅〉


「お義母さん、入ります。そろそろお休みの準備をしますね」

あれから二週間、洋子は毎夜幸代の部屋を訪れてはろうそくを灯し、マッサージを続けていた。


「洋子さん、今日はパジャマを着替えたいわ。身体も拭いてちょうだい」

「えっお義母さん? わかりました。すぐに支度をしますね」

何度勧めても風呂に入らず、パジャマを着替えなかった幸代の方から、珍しく着替えたいという言葉がでて洋子は驚いた。


 しかし、そうしてくれればこのきつい異臭に悩まされることもなくなる。洋子は幸代の気が変わらぬ内にと急いで支度をして、部屋に戻った。垢付いて黄ばんだパジャマを脱がし、熱目の湯を浸したタオルで痩せた身体を拭いていくと、幸代は気持ちよさそうに目を閉じた。


「お義母さん、お風邪を召さないように新しいパジャマをどうぞ」

そうして着替えさせたあと、今まで着ていたよれよれのパジャマをゴミ袋に詰め込んだ。

「洋子さん、そのパジャマ捨てないでよ」

「え? でもお義母さん、これはもう」

「それは武史が買ってくれたパジャマなのよ。わたしが入院したときに、あの子がこれは着心地がいいからって」

これを洗うのかと内心うんざりしたが、今機嫌を損ねるわけにもいかない。


「お義母さん、わかりました。これは明日洗濯しておきますね」

そう言いながら、今度はマッサージを始めると、幸代はいともたやすく眠りについたようであった。洋子はそれを見届けると部屋を片付け、そっと屋敷を抜け出した。



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