第四段、『集約と蓄積』
ルークが王都へ行くといい家を出てからはや数日が経った。その間少年は自身の傷を癒すことに専念し、同時に第七魔王メルトから貰った眼について自分なりに調べていた。
どうやらこの眼は魔力の流れを見極めることが出来、一度見た魔法なら何であれ解析することのできる類の魔眼らしい。それだけではなく、何か得体の知れない力が眠っているようだが、その力を試すような状況は今はまだない。
だが、覚醒の儀を行っていない少年は魔力を具現化させ、魔法を放つことはおろか魔力というものを放出することすら出来ない。
それは自身の魔力回路に栓がされているような状態になっているために起きている現象で覚醒の儀という儀式を行わないと栓を外すことは出来ない。この儀式は5歳という年齢になると必ずやるもので、教会やギルドといった大きな施設に行くと無料で行うことが出来る。
無料で行うことが出来るとはいえ、半強制的なのだが。
そして魔力回路の栓を無理に抉じ開けようとすれば、その人間は魔法が使えなくなってしまうという可能性もあるため、少年はその方法を取ろうとは思わないがそれに似た方法は試そうと思っていた。
抉じ開けるのがダメなら外から魔力を手に入れればいい。手に入れた魔力を体内で同調させれば、僅かながらも自身の魔力として活用できる。そうと決まれば実践あるのみである。
戦闘力が皆無である今の自分には魔物と戦うほどの力はない。ならば小動物から多少の魔力を分けてもらいそれを繰り返すことでかなりの魔力を供給できるのではないかと少年は考える。
近くにいた小鳥を少年は慣れた手つき掌に乗せると少しだけ僕に分けてとそう尋ねる。
もちろん小鳥が言葉を発するわけもなく意思が伝わったのかどうかは不明だが、チュンと鳴くと暖かいものが掌を通して全体に伝わってくるのが分かる。
「……これが魔力。だけど凄く微量」
分かりきったことではあったが、多少の残念さを感じずにはいられない。だが、この方法なら自身の魔力を使用せずに外から供給できる供給できるために疲れるということはなさそうだ。
少年はありがとうと小鳥に礼を告げる。小鳥が理解したかどうか不明だが、嬉しそうに羽を広げる。
小鳥から貰った魔力を使い、自身の眼を起動させる。使い方は知らないが身体がそれを本能的に理解していた。
「……。全てのものには魔力が宿る、書物で読んだ通りなんだ」
形あるものだけではなく、空気中にも微量の魔力が漂っていた。本来は魔力は意思的に放出させたものか、魔法として具現化したものではない限りその目で映すことは出来ない。
「ルークさん早く帰ってこないかな。剣術と魔法を教えて欲しいのに」
そんなことを言いながらも、少年は空気中に漂っている魔力を一点に集約する練習をする。いくら才能があるとはいえ簡単に出来ることではなく、それは空しく霧散していくだけ。
少年は数日間、これを練習するのだった。