ジャッジ
エントランスに降りると真城ちゃんがソファーに座っている姿が見えた。
「真城ちゃん!」
「あ!ジョンさん!」
俺に気付くとソファーから降りてとことこと歩み寄ってくる。
「尋問は終わりました?」
はにかんで聞いてくる彼女は、目の前まで来られたら見下げないと喋られないぐらい年相応に身長が低かった。
黒く流した長い髪に黒いジャージがいつもの服装だ。
「いつもながら尋問って程でもないけどね・・・聞くことがないなんて真城ちゃんが一番分かってたくせに。」
面倒事を押し付けるあたりチャッカリした性格である。
えへへへ・・・と彼女は苦笑いする。
「でも、私じゃ荷が重い相手だってわかって欲しいです。」
「それは分かっているよ。」
尋問をしても何も分からない得体も知れない男をこれからどうするのかはディーラーにかかっている。
ゲームを進める上で進行役となるディーラー。彼の名前にぴったりだ。
「ディーラーが決断を出すまでトランプでもしようか。」
ソファーに腰がけポケットからトランプを取り出しシャッフルする。
「喜んで付き合いますよー!」
机の向かいのソファーに飛び座る。
「ババ抜きしましょう!」
「良いよ。」
二人でするババ抜きは一番最後しか駆け引きが発生しない。
ジョーカーが二枚あって双方が持っていたのに気付いたのもその最後だった。