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業務報告?
エントランスに入ると館の主が階段を上がる姿が見えた。
「ディーラー!」
決して【ディーラー】は本名なんかではなく、ここに住んでいる者は皆が本名で呼ばれることを嫌う。
その代わりに、と提案するかディーラーが決めた名前がここでは呼ばれる。
俺のジョンは入館の時に英字のTシャツを着ていたせいで名付けられた。
その他は基本的に自分で提案しているだろう。
「帰ったかジョン」
ディーラーが螺旋階段の途中で振り返る。
スーツのボタンを開け黒いカッターシャツが見えるいつもの服装だ。
クマと同じ中年に見えるがどちらとも頭が上がらないようだ。
「報告をしたい」
結果なんてない。そんな空っぽの報告でもしなければならない。
それが館に住まう者達の決め事だ。
「そんなことは後だ」
再び階段を上がろうとするディーラー。
何をそんなに急いでいるんだ?
そういえばと、周りに人がいないことに気付く。
「何かあったのか!?」
手すりに手をかけ、二階に上がり姿が見えなくなったディーラーに叫ぶ。
「見つかった!」
ディーラーが二階から叫ぶ
「生存者が!」