我らの館よ!
飲みに行く、とクマが呟き館とは反対の方向に歩み出す。
俺も付き合うよと言ったが独りで飲みたいと行ってしまった。
中々進まない気の中で足を進ませる。
尾行に気を付けわざと遠回りしながら町から一時間ほどかけて歩き人気のない森に出て、そこからさらに数十分間ほど歩き続ける。
光も届かない森の奥深くで館は建っていた。
不自然に広く開けた土地に構えた四階建てのこの館に皆と住んでいる。
館の構造自体は古いようでも決して寂れているという訳ではない。
木は腐っていないし、全体の黒の塗装もまだ新しい。
それに館の周りには様々な花が咲いてる。
メイドのミッちゃんが普段水やりしているこの花は希少種で外国から種を取り寄せたらしい。
話に聞いた一粒数万円・・・と言う話は冗談かも知れないが、その中でも発芽する物は本当に少なく日夜奮闘しているようだ。
少しずつ増やしていった花がこの大きな館の周囲に咲き誇っている様は感動を覚える。流石はミッちゃん。ミッちゃんフォーエバー。
その花が咲いている花壇に挟まれた道を通り館の入口の前に立つ。
扉は人が入るには一回りも二回り大きい。
館のエントランスに置いてあるオルガンや会議室にある五人は寝そべられるような机はここから運び込まれた。
その大きな扉の小さな取っ手を握る。
結果と言う結果もないまま陰鬱な気分で扉を開ける。
内開きの扉は俺を迎え入れてくれるような錯覚を起こす。