契約の履行
ジョンさんの頭から血が流れ出る。
間違いなく弾丸は頭を貫き息をしていないように見えた。
意外と頭を撃たれても意外と平気なのかもしれない。
昔に見たテレビでは頭を撃って拳銃自殺をしようとした人が助かったという話だった。
あのジョンさんならきっと――――
しかし、数秒も経てばもう助からないという事実に確信が持てた。
血はジョンさんの体を飲み込むように止めどなく流れる。
ジョンさんの傍に立っている男の顔を睨む。
首に刺さったナイフを鬱陶しそうに引き抜いて捨てた。
ナイフは血で汚れず、首も刺さった形跡がなかった。
「僕はこれまでの人生で十分すぎる傷を負った。もうこれ以上に傷の付く場所がないんだよ。」
「くたばり損ない・・・」
「それはお互い様だろう?」
不死身。そういった類いのものなんだろうか?
でも、能力の詳細な情報なんてどうでも良かった。
今までのように殺し殺されで十分だ。
男はただ静かに銃を私に構え引き金に手をかける。
どうしてこんなにも容易く終わってしまうんだろうか?
世界も天国の存在を知っただけでみんな死んでしまった。
人はみんな何時かは死ぬのに。今死ぬ必要はなかったはずなのに。
誰も、何もかも、一つの統一をもって死んでいった。
残された私達にあるものは死体と孤独。
そして、天国教への恐怖と怒り。
私の人生はこんなに意味のないものだったのだろうか?
本当になんて容易く、なんて儚い・・・
「待てよ、お楽しみはこれからだろう?真城ちゃん。」
幻聴のようにいつも聞いている声が届く。
男の銃からは弾丸は放たれない。