なぜ?
窓から光が射し込むとても心地の良い朝だった。
いつも通りにポロシャツに着替えて食事に向かう。
エントランスを抜けた部屋が食堂になっていて、同時に30人は食べられる席と広さがあった。
その真ん中の方で広さを持て余している男の背中が見えた。
ガタイの良さから誰だか一目で分かる。
「おはようクマ。」
右隣の席に腰を下ろす。
美味しい食事を何とも言えない顔で食べているクマはチラリとこちらを見てまた食べ始める。
気だるそうにしている様子を見ていると、二日酔いらしい。
昨日の朝に信者が自殺してから姿を見なかったが、長い間飲んでいたのだろう。
「あれからいつまで飲んでいたんだ?」
クマは炒飯を食べていた手を止めた。
「いつまでだって飲んでいたさ・・・いつまでも・・・。」
何か深刻な悩みがあるような素ぶりだった。
半分残った炒飯をもう触れずにいる。
「どうしたんだよ?信者が勝手に死んだりするのは良くある事だろ。それより新入りがさ、・・・・。」
止めてくれ、とクマはサジを放る。
「どうしたんだよクマ。」
クマはいつもと違って見えた。
「俺達が信者共を殺して何になる?余計に人口を減らせば天使の思う壷だぞ。」
「でも、こっちがヤらなきゃヤられるよ。」
遠くを見つめている。
彼の中で常に疑問に思っている事を吐き出したようにみえた。
信者共が人の形をしていなければ容易いのに。何だってそうなんだろうな。
「新入りには聞いたのか?」
「何をさ?」
分かっているだろ?、とクマは見据える。
「このクソッタレな何もない世界で生きるか、幸福に満たされ家族や仲間もいる天国へ死ぬかを。」
大事な選択は全てディーラーに任せている。
だからディーラーに聞いてくれ。
そんな事は言えなかった。
発見した生存者を保護し信者なら殺し、違うなら生かす。
ディーラーはその選択肢しか用意せず自ら死んで天国へ行く事を選ばせない。
それを黙認していた。
我々の平穏を乱した天使の復讐の為に、嫌がらせの為に、生き続ける。