[第2話:用務員・奥田]
文章が下手ですいません!
キーンコーンカーンコーン……キーンコーンカーンコーン…………
「おっし!部活、部活!」 堂島が体育館に着く頃にはすでに坂下の姿があった。
「そういえばあいつ、朝練も放課後の練習も一番に来てるな…授業受けてんのか?」 そんな堂島の心配をよそに、坂下は一人もくもくとシューティングをしていた。
「ちゃーっす」
「こんちわーっす」
ぞろぞろと帰宅する生徒達に交じって赤岡、大久保が体育館に現われた。
「あいつらはいつも一緒の登場だな。仲いいな。さてはあいつら…」
堂島はイケナイ想像を膨らましつつ、坂下とは反対側のリングでシューティングをし始めた。
練習開始時間ギリギリになってようやくやる気のない2、3年が登場。
いつもの事ながら4人は呆れていた。
「これじゃあインターハイ以前の問題だな。まー、そんな高校に自分から入っちまったんだから文句はいえねーか。
な、坂下。」
「…俺は俺のやり方で上に行く。そー思ったからここへ来たんだ。気に入らなければ先輩だろーと容赦しねぇ。」 「うわー、明男は恐いねぇ。おれも自分のやり方で行くけど先輩方には何も言えないよ。なぁ、鷹弘!」
「ぼ、僕は…乎詩の考えもわかるけど明男くんの言ってる事も間違ってないとおもうな。」
「まー、まー、まー、ここで何言っても始まんねぇし、とりあえず練習にしようぜ!」 こうして、いつものように身のない練習の日々が始まった。
「……よぉ、堂島。1ON1しねぇか?」 一見クールでおとなしい坂下は、ことバスケの事に関しては人が変わった風になるな、と3人は思っていた。
練習が終わるといつも、体育館を閉める用務員が来るまでは堂島VS坂下、赤塚VS大久保の1ON1が繰り広げられていた。 「坂下から挑んでくるなんて珍しいな!
おっし!手加減しねぇぞ!」
「……おう。いつでも来い。」
その2人に触発されるかのように、反対側のコートでも火花が散る。
「鷹弘!ちょっと付き合えよ。1ON1。」
「バスケだけは乎詩に負けてらんないからね。受けて立つよ!」
それぞれの中学でエースを張ってきた4人の自尊心を賭けた戦いは、鬼気迫るものを見るものに印象づけた。
といっても、4人の他にその戦いを知っているのは、用務員の奥田くらいだった。
奥田はすでに定年を迎え、今年で11年を数える年だった。
そんな奥田はこの4人のバスケをしている姿に、何か熱いものを感じている自分に気付いていた。
「あぁ、また管理人に叱られるよ…」
そお呟く奥田の顔には暖かい笑みがこぼれていた。
どれほどまでに夢中になっていたのだろう、4人が奥田に気付く頃には時計の針が10時を回っていた。
「すんませんっ!!すぐに帰ります!」
声を揃えて言うと、奥田はにっこり笑って 「はいよーう。」
とだけ返した。
奥田には孫がいた。ちょうど堂島等と同い年の。
そしてその孫もまた加度高校でバスケをしていた。
奥田の目には、真剣になってバスケをしている4人の姿に自分の孫が重なって見えていたのだろう。
その時、孫・英治朗の言葉が奥田の頭をよぎった。
「一度でいいから自由にバスケを楽しんでみたい…」